ブライアンのお気に入り

知見夜空

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十一月のこと

ブライアンの過剰スキンシップ

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 カザネとしてはもう十分、セントラルパークをエンジョイしたが、ちょうど今の時期はアイススケートもできるらしい。そう言うと、アイススケートをやりたそうに聞こえるかもしれないが、実際は逆で、

「アイススケートはいい! 絶対に転ぶから!」
「アメリカで未知の体験をするのが、留学生の使命だろ。ほら、立てよ。転びそうになったら、俺が支えてやるから」

 カザネはすでに抵抗虚しくブライアンによってスケート靴を履かされて、リンクに引きずり込まれていた。

「ほ、本当だね? 信じていいんだね?」

 しかし彼の支えを頼りに、覚悟を決めて氷の大地に立とうとすると

「さて、それはどうかな?」
「なんで混ぜっ返すの!?」
「ジョークだよ、ジョーク。ちゃんと支えてやるから信じろ」

 それから30分後。スケートを終えてスケート靴を返却したカザネたちは、

「けっきょくずっと俺に縋りっぱなしだったな?」
「だって本当に怖かったんだよ。立てただけでも褒めて欲しい……」

 まだ足が震えているカザネが、ブライアンの腕に縋ったまま言うと、

「でも俺に掴まりながらでも、ちょっとは滑れて楽しかっただろ?」
「うん。それはそう」

 アメリカに来る前もそうだったが、未知の体験はいつも怖い。しかし勇気を出して挑戦した後は、以前よりも視野が広がったような感覚を覚える。こういうのをきっと世界が広がったというのだろう。

 そう思い直したカザネは、

「ちょっと強引だけど、ブライアンは私に色んな経験をさせてくれるね。自分だけじゃ絶対に行かないところや、できないことも、ブライアンとだと行けるしできるから楽しい」

 日頃無理やり見せられるホラーやサスペンス映画も、本気で怖いのだが、自分には無いストーリーや演出の引き出しが増えて行くともカザネは感じているので、

「今さらだけどなんて言うか……いつも仲良くしてくれて、ありがとう」

 ちょっと照れつつも、ペコッとお辞儀をした。突然の感謝に、ブライアンは少し戸惑って

「なんだよ、急にお礼なんて。いつも俺に構われても、迷惑そうにしていたくせに」
「だってブライアンのやることって、いつも突拍子が無くて心臓に悪いから。でも一緒に居てホッとする友だちと同じくらい、刺激をくれる友だちも大事だなって。サンクスギビングウィークだし、ここに連れて来てくれたお礼も兼ねて、ちゃんと言っておこうかと」

 今までカザネはブライアンを、いじめっ子カテゴリーに入れていた。しかしこうして一緒に遠出したことだし、今日からはちゃんと友人として接しようと態度を改めた。そんなカザネにブライアンは

「お前って本当に人がいいって言うか……素直で可愛いな」
「むぎゅ!? な、なんでいつもすぐに抱きしめるんだよ~?」

 ブライアンにいきなり抱きしめられてカザネはビックリした。ブライアンにハグされると、彼の鳩尾辺りに顔が来るので、逞しい腹筋に鼻を潰されそうになる。

 カザネの抗議にブライアンは少し体を離したものの、両腕で彼女を囲い込んだまま、

「だって友だちなんだろ? 嬉しい時にハグするくらいは普通じゃない?」
「ブライアン、いま嬉しいの?」
「まぁね。ずっとツレなかった黒髪の子猫ちゃんが、やっとデレてくれて嬉しい」

 自分を見下ろす彼の顔があまりに眩しくて、カザネはなんだか恥ずかしくなりながら

「うー、否定はしないけどさぁ。君のその態度は誤解を招くと思うよ……」
「誤解って何が? 友人同士の普通のスキンシップだろ。これとキスくらいはさ」

 言いながらブライアンは、カザネを軽く抱き上げると額にキスをした。口づけは一度では収まらず、額や頬や鼻先に何度も落とされた。

 カザネは過剰なスキンシップにアワアワしながら

(いくら身長差があるからって、友だち同士って相手を抱き上げてまで、顔中にキスするものかな?)

 と疑問を抱いた。その一方でブライアンからのハグやキスを、なぜか嫌だと思えない自分が居て

(いつの間にかすっかり手懐けられちゃったのかな?)

 カザネは少し悔しくなりながらも、そのままブライアンの好きにさせた。
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