ブライアンのお気に入り

知見夜空

文字の大きさ
63 / 73
約束が叶う時

オマケ・再会した後のこと

しおりを挟む
 再会の喜びを分かち合った後。抱き上げていたカザネを下ろしたブライアンは

「今日はもちろん俺のところに泊るよな?」
「えっ、ゴメン。部屋が決まるまでは、ハンナの家にお世話になろうかと」

 カザネの余所余所しい返答に、ブライアンはムッとして

「なんで恋人が居るのに友だちの家に泊まるんだよ?」
「だってブライアンには何も言わないで来ちゃったから、いきなり行ったら迷惑かなって」
「なんだ、その他人行儀。新学期から一緒に住むんだろ。いきなり来られたからって迷惑なはずがない」

 1年ぶりに会えたのだから、ブライアンとしては片時も離れたくなかった。しかし冷静に考えれば

「……でも確かに俺が今住んでいる部屋は、人を呼べるほど綺麗じゃないや。やっぱり新しい部屋が決まるまで、ハンナのところに泊めてもらうか?」

 自分の貧乏暮らしにカザネを付き合わせるのは悪いと、発言を撤回しようとしたが

「ううん。ブライアンがいいなら一緒に住みたい。1年ぶりに会えたのに、離れたくないもん」

 いきなり転がり込まれたら迷惑だろうと遠慮していただけで、本当はカザネも同じ気持ちだった。カザネに笑顔で見上げられたブライアンはキュンとして

「……今日はもう寝かさないから」

 と彼女をギュッと抱きしめた。


 それから2人はブライアンが住んでいる安アパートに移動した。どうせ大学に行くまでの仮住まいなのだから、寝られれば十分だと剥がれた壁紙や、ガムテームでおざなりに補修された窓ガラスなどをそのままにしていた。

 定期的に掃除しているので不潔では無いが、廃墟感がすごい。改めて自分の住まいの惨状を見て、本当に人を招くところじゃないなと反省したブライアンは

「悪いな、本当にボロくて」

 こんなところで暮らさせるなんて気の毒だと詫びるも、カザネはニコッとして

「ううん。秘密基地みたいでカッコいい。1人だったら怖いけど、ブライアンと一緒なら楽しそう」
「なんかもう……お前は1年経ってもお前だな」

 またブライアンに抱きしめられたカザネは

「子どもっぽい?」
「無邪気で可愛い」

 ブライアンは彼女の頭にキスして、熱っぽい目で見下ろすと

「また会えたらたくさんキスする約束。今からしてもいい?」
「う、うん。ずっと待っていたから、たくさんして欲しい」

 それから2人はベッドに移動して

「ずっとお前に、こうしたかった」

 ブライアンはカザネを抱き寄せると、絶え間なくキスしながら細く柔らかな体をあちこち撫で回した。

「私もずっとブライアンに触って欲しかった」

 カザネは甘えん坊の子猫のように、自分からも一生懸命、ブライアンにスリスリした。以前は逃げ腰だったのに、自分から甘えてくれることが嬉しかったブライアンは

「遠距離恋愛なんて辛いだけって思っていたけど、いい面もあるみたいだな?」
「いい面って?」
「シャイだった彼女が大胆になってくれる」

 ブライアンはカザネの耳に甘く囁いた。照れたカザネは「もうもう」とブライアンをポコポコ叩いた。ブライアンは久しぶりの戯れにニヤニヤしながら

「だって本当に嬉しいんだもん。お前も俺が欲しかったんだって聞いて。せっかく触れ合えても、一方通行じゃ寂しいからさ」
「一方通行なはずないよ……。本当にずっと、こうして欲しかった……」

 カザネにギュッとしがみつかれたブライアンは

「じゃあ、今日はたくさん期待に応えなきゃ」

 と笑いながら彼女のワンピースを脱がせた。

 カザネの下着姿を見たブライアンは、あることに気付いて嬉しそうな顔をすると

「下着も1年前とは違うな。俺のためにオシャレして来てくれたの? きっと俺がすぐに欲しがるだろうって想像して?」

 ブライアンの言うとおり、1年前はスポーツブラだったのに、今日はフェミニンなデザインの綺麗な下着を着けている。それもまたブライアンに少しでも綺麗だと思われたいカザネの女心だったのだが

「へ、変なことを聞かないで欲しい……」

 指摘されると恥ずかしくてカザネは赤くなった。ブライアンはカザネの反応に、愛しそうに目を細めながら

「ワンピースも下着もすごく似合っているよ。あんまり綺麗で脱がせるの、もったいないくらいだ」

 感謝の代わりにカザネの頭を優しく撫でた。ブライアンはいつもカザネのちょっとした努力に気付いて、ちゃんと労ってくれる。体だけじゃなく心も優しくくすぐられるようで、カザネはふわふわと幸せな気持ちになった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

会社のイケメン先輩がなぜか夜な夜な私のアパートにやって来る件について(※付き合っていません)

久留茶
恋愛
地味で陰キャでぽっちゃり体型の小森菜乃(24)は、会社の飲み会で女子一番人気のイケメン社員・五十嵐大和(26)を、ひょんなことから自分のアパートに泊めることに。 しかし五十嵐は表の顔とは別に、腹黒でひと癖もふた癖もある男だった。 「お前は俺の恋愛対象外。ヤル気も全く起きない安全地帯」 ――酷い言葉に、菜乃は呆然。二度と関わるまいと決める。 なのに、それを境に彼は夜な夜な菜乃のもとへ現れるようになり……? 溺愛×性格に難ありの執着男子 × 冴えない自分から変身する健気ヒロイン。 王道と刺激が詰まったオフィスラブコメディ! *全28話完結 *辛口で過激な発言あり。苦手な方はご注意ください。 *他誌にも掲載中です。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...