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オマケ・大人になった2人の話
完璧な幸せなんてあり得ないから
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結婚式が終わり、家に戻って2人きりになったカザネとブライアンは
「ゴメンね、ブライアン。私が勝手なことをしたせいで」
「結婚式に父さんを呼ぼうって発想には流石に驚いた。カザネはあの人と直接会ったことが無いからだろうけど、だいぶ無謀だったね」
カザネを責めたくはないが、ブライアンにとって家族は鬼門だった。それをなんでめでたい席に呼ぶんだと、どうしても思ってしまい、すぐには許せなかったが
「本当にゴメンなさい」
もう一度カザネに謝られたブライアンは
「……俺もゴメン。本当は普通に祝福されたかったよな」
と詫びながら彼女の頭を撫でた。
カザネの両親は心配性ではあるが、娘を愛しているし、ブライアンとの結婚も喜んでくれた。だからこそブライアンには、好きな人の家族に受け入れられ、祝福される喜びが分かる。
けれどブライアンの家族は、あの調子だ。父はカザネの招待を無視し、腹違いの兄は式をぶち壊しに来た。自分はもう家族との関係を諦めている。しかしカザネが可哀想だと気に病むブライアンに
「私はいいんだ。ただブライアンが。大事な式だから、本当はお父さんに来て欲しいかなって」
「父さんのことは、もう諦めている。オーウェンのことも。会わないほうがいい家族も居るんだよ」
言葉とは裏腹に、ブライアンは孤独を紛らわすようにカザネを抱き寄せた。カザネはブライアンの腕に抱かれながら
(『諦めている』は、やっぱり自分に言い聞かせている気がする)
と密かに感じた。けれど、抗うのが辛いからこそ人は諦めを選ぶ。諦めに至るまでブライアンがどれほど苦しんで来たか考えたら、カザネには何も言えなかった。
ブライアンは深刻な空気を変えようと
「それにしても、カザネにしては痛烈な皮肉だったね」
「皮肉って?」
本気で心当たりが無さそうなカザネに、ブライアンも首を傾げながら
「昼間オーウェンに言ったこと。「どうせ暇を与えても、ろくなことしないくせに」って意味だろ?」
ブライアンの指摘に、カザネは「えっ?」と目を丸くして
「違うよ。本当にお兄さんのやりたいことが知りたかったんだよ」
「なんでアイツのやりたいことなんて知りたいの?」
「お兄さんが荒れているのって、怪我で選手生命を断たれたせいなんでしょう? もう一度打ち込めるものに出会えたら、元気になるかなって」
「夢や理想があるなら言ってください」は「どうせお前にはそんなものないだろ」ではなく「相談してくれれば力になれるかも」の意だったようだ。
予想外過ぎるカザネの発想に、ブライアンは呆気に取られて
「お前は大事な式をぶち壊されたって言うのに、アイツの更生なんて考えていたの?」
「ケンカを売られたのは普通に嫌だったけど、オーウェンさんはブライアンのお兄さんだから。ずっと、あんな風に辛そうなのは嫌だなって」
カザネが昔オーウェンに会った時は、ただ無闇に人を傷つける嫌なヤツだと思った。けれど大人になったカザネには、オーウェンが過去の挫折から立ち直れず、道を見失ったせいで荒れていることが分かった。だから立ち直れる方法があるなら、親族として協力したかった。
自分のあり様にオーウェン自身も苦しんでいることは、ブライアンも理解していたが
「……お前は本当にお人よしだね。でも俺の家族のために、お前が頭を悩ませることは無いよ。もうこっちは縁を切ったんだから」
人を立ち直らせるのは容易じゃない。いくら機会を与えても、本人にやる気が無ければどうしようもなく、オーウェンは現在進行形で、父の援助をふいにし続けている。
ブライアンは自分の家の問題で、カザネに気を揉ませないように
「もう二度と俺の家の問題で、お前を煩わせたりしないから。父さんのこともアイツのことも、もう忘れて。これからは2人の幸せだけを考えよう」
内心また家族を切り捨てるのかと自責しながら、この幸せを護るにはそうするしかないと自分に言い聞かせた。
「ゴメンね、ブライアン。私が勝手なことをしたせいで」
「結婚式に父さんを呼ぼうって発想には流石に驚いた。カザネはあの人と直接会ったことが無いからだろうけど、だいぶ無謀だったね」
カザネを責めたくはないが、ブライアンにとって家族は鬼門だった。それをなんでめでたい席に呼ぶんだと、どうしても思ってしまい、すぐには許せなかったが
「本当にゴメンなさい」
もう一度カザネに謝られたブライアンは
「……俺もゴメン。本当は普通に祝福されたかったよな」
と詫びながら彼女の頭を撫でた。
カザネの両親は心配性ではあるが、娘を愛しているし、ブライアンとの結婚も喜んでくれた。だからこそブライアンには、好きな人の家族に受け入れられ、祝福される喜びが分かる。
けれどブライアンの家族は、あの調子だ。父はカザネの招待を無視し、腹違いの兄は式をぶち壊しに来た。自分はもう家族との関係を諦めている。しかしカザネが可哀想だと気に病むブライアンに
「私はいいんだ。ただブライアンが。大事な式だから、本当はお父さんに来て欲しいかなって」
「父さんのことは、もう諦めている。オーウェンのことも。会わないほうがいい家族も居るんだよ」
言葉とは裏腹に、ブライアンは孤独を紛らわすようにカザネを抱き寄せた。カザネはブライアンの腕に抱かれながら
(『諦めている』は、やっぱり自分に言い聞かせている気がする)
と密かに感じた。けれど、抗うのが辛いからこそ人は諦めを選ぶ。諦めに至るまでブライアンがどれほど苦しんで来たか考えたら、カザネには何も言えなかった。
ブライアンは深刻な空気を変えようと
「それにしても、カザネにしては痛烈な皮肉だったね」
「皮肉って?」
本気で心当たりが無さそうなカザネに、ブライアンも首を傾げながら
「昼間オーウェンに言ったこと。「どうせ暇を与えても、ろくなことしないくせに」って意味だろ?」
ブライアンの指摘に、カザネは「えっ?」と目を丸くして
「違うよ。本当にお兄さんのやりたいことが知りたかったんだよ」
「なんでアイツのやりたいことなんて知りたいの?」
「お兄さんが荒れているのって、怪我で選手生命を断たれたせいなんでしょう? もう一度打ち込めるものに出会えたら、元気になるかなって」
「夢や理想があるなら言ってください」は「どうせお前にはそんなものないだろ」ではなく「相談してくれれば力になれるかも」の意だったようだ。
予想外過ぎるカザネの発想に、ブライアンは呆気に取られて
「お前は大事な式をぶち壊されたって言うのに、アイツの更生なんて考えていたの?」
「ケンカを売られたのは普通に嫌だったけど、オーウェンさんはブライアンのお兄さんだから。ずっと、あんな風に辛そうなのは嫌だなって」
カザネが昔オーウェンに会った時は、ただ無闇に人を傷つける嫌なヤツだと思った。けれど大人になったカザネには、オーウェンが過去の挫折から立ち直れず、道を見失ったせいで荒れていることが分かった。だから立ち直れる方法があるなら、親族として協力したかった。
自分のあり様にオーウェン自身も苦しんでいることは、ブライアンも理解していたが
「……お前は本当にお人よしだね。でも俺の家族のために、お前が頭を悩ませることは無いよ。もうこっちは縁を切ったんだから」
人を立ち直らせるのは容易じゃない。いくら機会を与えても、本人にやる気が無ければどうしようもなく、オーウェンは現在進行形で、父の援助をふいにし続けている。
ブライアンは自分の家の問題で、カザネに気を揉ませないように
「もう二度と俺の家の問題で、お前を煩わせたりしないから。父さんのこともアイツのことも、もう忘れて。これからは2人の幸せだけを考えよう」
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