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第3話・第一次エバーシュタインさんの乱です
不正があるに違いない(視点無し)
ヒロインである導き手の料理を食べると、キャラのステータスがアップする。だから律子と由羽は昼と夜は、なるべく自分の騎士に手料理を振る舞うようにしていた。
この日も2人は一緒に厨房に立って
「由羽ちゃん、ずいぶん風丸と仲良くなったみたいだね」
律子の指摘に、由羽はやや苦笑いで
「仲が良いんじゃなくて、お題部屋の攻略のための訓練なんです。私が風丸に触れられるたびに、ギャアギャア喚いてしまうので。普段から触ることで慣れさせようとしているんです」
「何それ萌えるシチュエーションだね」
由羽の報告に、律子はキラッと目を光らせた。由羽ほどオープンでは無いが、彼女もやはり18禁作品の愛好者で、特に異能者×平凡のカップリングを好んでいた。そんな律子にとって異世界の忍者である風丸と、素朴でのんびり屋の由羽の組み合わせは密かにドンピシャだった。
しかし大人としての慎みから、すぐにオタク心を引っ込めると
「じゃなくて、やっぱり傍から見ると仲がいいと思うよ。いちおう風丸なりの理由があるんだろうけど、由羽ちゃんと話している時の彼は、すごく楽しそうに見える」
「うーん? そうなんですかね?」
律子の言葉に、由羽は首を傾げた。風丸の前では常に興奮状態なので、相手の感情の機微に気づく心の余裕がなく、本気で分からないのだった。それでもいちおう会話の内容は覚えているので
「でもそう言えば、前に私の百面相が面白いみたいなことを言っていました。オモチャ扱いかもしれませんが、本当だったら嬉しいです」
「由羽ちゃんが幸せなら私も嬉しい。そのまま仲よくね」
和気あいあいと話す2人を、厨房の入り口から密かに窺う者が居た。由羽に風丸を奪われたエバーシュタインだった。
プライドの高いエバーシュタインは自分から声をかけることはしないものの、ずっと風丸と由羽の動向を気にしていた。律子の言うとおり、エバーシュタインの目から見ても、由羽と絡んでいる時の風丸は、なんだか楽しそうだ。何がどう違うとは言えないが、自分や他の者に向ける笑顔とは明らかに違った。
(本気であの子を気に入ったってこと? そんなわけない。だってゲームの風丸はヒロインすら振ってしまったのに。あんな愛嬌だけが売りのヒロイン以下のデブを好きになるはずがない)
実のところ、エバーシュタインの本当の推しは、アルゼリオではなく風丸だった。しかしゲームでは手酷く振られて、どれだけやり直しても恋愛エンドにはならなかった。風丸に取り入っても、ゲームのように『裏切りの風』を食らう可能性が高い。それならいちばんではないが、確実に恋愛エンドを目指せるアルゼリオを攻略したほうがいいと、彼を優遇していた。
だから風丸が由羽に取られたことを本当はずっと気にしていたし、ゲームでは見せなかった無邪気な笑顔を彼女には向けていることに嫉妬した。
(そうだわ。トリップ特典に何か秘密があるのかも。キャラを魅了する能力か何かを神様にもらったとか)
創作ではチートな能力やアイテムによって、キャラを魅了する展開がよくある。彼女たちもこの世界の神から、それぞれの願いに応じた特別な力をもらっていた。
通常、導き手は自分と騎士のステータスしか見られない。しかし鑑定機能付きのルーペを使えば、自分以外の相手のステータスも確認できる。プライバシーの侵害ということで、ルーペを買えるのは国から許可された特殊な職業の人たちだけだ。しかし導き手は特殊なアイテムの購入も許されていた。
エバーシュタインは、この機会にルーペで全ての導き手の能力をチェックした。和泉律子は戦闘力。星月あかりはヒロイン成り代わり。そして問題の相楽由羽のトリップ特典は
(やっぱり! この力のせいで風丸は、あの子に洗脳されてしまったのよ!)
証拠を見つけたエバーシュタインは、全員の前で由羽の不正を暴くことに決めた。
この日も2人は一緒に厨房に立って
「由羽ちゃん、ずいぶん風丸と仲良くなったみたいだね」
律子の指摘に、由羽はやや苦笑いで
「仲が良いんじゃなくて、お題部屋の攻略のための訓練なんです。私が風丸に触れられるたびに、ギャアギャア喚いてしまうので。普段から触ることで慣れさせようとしているんです」
「何それ萌えるシチュエーションだね」
由羽の報告に、律子はキラッと目を光らせた。由羽ほどオープンでは無いが、彼女もやはり18禁作品の愛好者で、特に異能者×平凡のカップリングを好んでいた。そんな律子にとって異世界の忍者である風丸と、素朴でのんびり屋の由羽の組み合わせは密かにドンピシャだった。
しかし大人としての慎みから、すぐにオタク心を引っ込めると
「じゃなくて、やっぱり傍から見ると仲がいいと思うよ。いちおう風丸なりの理由があるんだろうけど、由羽ちゃんと話している時の彼は、すごく楽しそうに見える」
「うーん? そうなんですかね?」
律子の言葉に、由羽は首を傾げた。風丸の前では常に興奮状態なので、相手の感情の機微に気づく心の余裕がなく、本気で分からないのだった。それでもいちおう会話の内容は覚えているので
「でもそう言えば、前に私の百面相が面白いみたいなことを言っていました。オモチャ扱いかもしれませんが、本当だったら嬉しいです」
「由羽ちゃんが幸せなら私も嬉しい。そのまま仲よくね」
和気あいあいと話す2人を、厨房の入り口から密かに窺う者が居た。由羽に風丸を奪われたエバーシュタインだった。
プライドの高いエバーシュタインは自分から声をかけることはしないものの、ずっと風丸と由羽の動向を気にしていた。律子の言うとおり、エバーシュタインの目から見ても、由羽と絡んでいる時の風丸は、なんだか楽しそうだ。何がどう違うとは言えないが、自分や他の者に向ける笑顔とは明らかに違った。
(本気であの子を気に入ったってこと? そんなわけない。だってゲームの風丸はヒロインすら振ってしまったのに。あんな愛嬌だけが売りのヒロイン以下のデブを好きになるはずがない)
実のところ、エバーシュタインの本当の推しは、アルゼリオではなく風丸だった。しかしゲームでは手酷く振られて、どれだけやり直しても恋愛エンドにはならなかった。風丸に取り入っても、ゲームのように『裏切りの風』を食らう可能性が高い。それならいちばんではないが、確実に恋愛エンドを目指せるアルゼリオを攻略したほうがいいと、彼を優遇していた。
だから風丸が由羽に取られたことを本当はずっと気にしていたし、ゲームでは見せなかった無邪気な笑顔を彼女には向けていることに嫉妬した。
(そうだわ。トリップ特典に何か秘密があるのかも。キャラを魅了する能力か何かを神様にもらったとか)
創作ではチートな能力やアイテムによって、キャラを魅了する展開がよくある。彼女たちもこの世界の神から、それぞれの願いに応じた特別な力をもらっていた。
通常、導き手は自分と騎士のステータスしか見られない。しかし鑑定機能付きのルーペを使えば、自分以外の相手のステータスも確認できる。プライバシーの侵害ということで、ルーペを買えるのは国から許可された特殊な職業の人たちだけだ。しかし導き手は特殊なアイテムの購入も許されていた。
エバーシュタインは、この機会にルーペで全ての導き手の能力をチェックした。和泉律子は戦闘力。星月あかりはヒロイン成り代わり。そして問題の相楽由羽のトリップ特典は
(やっぱり! この力のせいで風丸は、あの子に洗脳されてしまったのよ!)
証拠を見つけたエバーシュタインは、全員の前で由羽の不正を暴くことに決めた。
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