わたしは怨霊になりたい

知見夜空

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新婚編

そして望まぬ習慣だけが残った(ほんのり性描写)

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 しかもその後。

「……えっ? もうしちゃダメって、どうしてですか?」
「ゴメン……。うまく説明できないけど、すごく辛いことがあって。しばらくは色んな刺激を断って、安らかに過ごしたい……」

 何もせず家に居るだけの女に、どんな辛いことがあるんだと普通なら思うだろう。

 しかし優しいササグは、そこにはツッコまず

「確かにこの間、すごく泣いていましたもんね。俺には分からないけど、悲しいことがあったんですね」

 と、しばらくソッとしておいてくれることになった。

 けれど一度、解放した欲望を抑え込むのは大変らしい。

 ササグは1か月ほど、私には全く触れずに我慢してくれたが

「ウラメ様……」

 夜。ササグは私の布団にソッと入って来ると

「まだお気持ちは戻りませんか?  もう我慢、辛いです……」

 切ない声で懇願し、背後から抱きしめて来た。

 常より熱い体。腰にゴリッと当てられた硬いものが、ササグの限界を知らせていたが

「……あの、今さらなんだけど、本当はこういうこと恥ずかしい……」

 私もこれ以上ササグに抱かれることに限界を感じていた。苦痛とか嫌悪とかではなく、ただただ恥ずかしくて。

 当然ながらササグは戸惑って

「は、恥ずかしいって……もう数え切れないほどしているのに、どうして今になって?」

 君に早々に飽きられて捨てられて怨霊化したかったんだ。

 なんて告げたら私に置いて行かれるくらいなら、この場で自害すると言っていたササグが、どうなってしまうか分からないので

「うまく説明できないけど……ササグに触れられると、変になっちゃうから恥ずかしい……」

 1年以上も抱かれ続けて、すっかり性的に弱くなってしまった自分が、本当に情けなくて嫌だ。

 今までは怨霊化するという目的のために我慢していたが、そのゴールを失った今、どんなモチベーションでササグに抱かれればいいのか分からない。

 私は本来、恋愛非対応人間なのでドロドロに愛されて快楽に溺れることに違和感しか無かった。

 もうササグに「好きです」「可愛い」「ウラメ様」ってたくさん囁かれてドキドキするのも、快楽に我を忘れて自分から「ササグ」「もっと」って彼の背に腕を回して、素でねだってしまうのも嫌だ。

 今はそういう自分を「嫌だ。恥ずかしい」と否定できているが、そのうち本格的に理性が壊れて「ササグ、好き」と潤んだ目で言うようになったら怖すぎる。

 本気で怨霊を目指して来た女が快楽堕ちなんて。そんな醜態を晒すくらいなら今すぐ死んでしまいたい。

 そのくらい私は追い詰められていたが

「……ウラメ様が本当に嫌なら、無理強いはできませんが」

 やめてくれるのかと思いきや

「って、えっ? どうして押し倒すの?」

 ササグは私の上に乗っかると

「むっ……。ササグ……」

 強引に唇を奪われ、そのまま激しく貪られる。

 なんとか顔を振って、ササグの口づけから逃れると

「だ、だからこういうのは、恥ずかしいって……」

 しかし硬い胸を押し返そうとしてもササグは引いてくれず、あっという間に帯を解かれて

「あっ……や、やだって言っているのに……」

 露になった乳房を撫で回されて戸惑う。

 ササグの熱い手が触れるだけで、心とは裏腹に体が高ぶる。

 ただでさえマズい状況なのに、ササグは切なそうに眉根を寄せながら私を見下ろして

「恥ずかしいだけで嫌じゃないなら、させてください。こんなに幸せで気持ちいいこと、俺に教えたのはウラメ様なのに。今さら取り上げないで……」

 ササグの背後にキューン……と悲しい顔のワンコが見える。

 私は多分『腹黒』だの『ドS』だの言われるような傲慢野郎には強い。

 しかしササグのように素直でいじらしい感じの子に、下から来られると非常に弱い。傷つけてはならぬと思ってしまう。

 そんな私に、ササグの哀願を跳ねのけることなどできず

「良かった。本当は嫌じゃなかったみたいで。ウラメ様の中、キュウキュウ俺を締め付けて、すごく気持ち良さそうです……」
「実況やめてぇ……」

 今となっては遠い昔のようだけど、結婚初日には

『村長の手前、結婚しましたが、無理に夫婦らしくしなくていいですからね』

 ササグは無理をさせたら私が死ぬかもと、妻としてのあらゆる義務を免除しようとしてくれた。

 それなのに私はまたしても怨霊化に目が眩んで、本来なら踏まなくていいはずの地雷を踏んでしまい

「あっ、来るっ。また来ちゃう、ササグっ!」
「大丈夫ですよ。怖くないですから、いっぱいイってください」

 今や毎夜のように頭をパーンされる習慣だけが残った。

 怨霊化しようとするたびに、これでもかと裏目に出るの、なんでなの?

 こんなに私を慕ってくれるササグと出会ったことを、間違いだったとは言いたくない。

 けれど私に軽率に一線を越えるように勧めておきながら、無責任に置き去りにしたお姉さん方のことは深く恨む。
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