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第1話:主要キャラと顔合わせ
あげるだの寄こすだの
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さらにエバーシュタインさんは話を続けて
「それにユエル君は封印の儀式の要であり、回復役として不可欠な存在です。ですが、彼はまだ13歳。体格的にも他の皆さんより劣っているのですから、強いチームに入れて万一のことが無いように護ってあげるべきです」
彼女の言うことは間違っていない。少なくとも私たちの世界では、子どもは護ってあげるものだった。しかしここは異世界で彼は騎士だ。全員の前で「劣っている」「護るべきだ」なんて、あまりに侮辱的だ。
しかしそこを争点にしたら、エバーシュタインさんと言い合いになるだろう。それではかえってユエルに恥をかかせるし、いちばんの問題はそこじゃない。
「あなたの言うことも分かるけど、アタッカーとして二強のアルゼリオと風丸が居るチームに入れたら、ユエルは完全にサポートに回されてしまう。それでは彼は剣士として成長できない」
強すぎるチームに入れることは、かえってユエルのためにならないと意見したが
「剣士として成長できないも何も、ユエル君はもともと回復要員でしょう。わざわざ不向きな方向に伸ばす必要はありません。和泉さんも仮にも導き手なら、適材適所を考えて育ててあげなければ」
エバーシュタインさんは、私を小馬鹿にするように笑った。きっと彼女にとってRPG要素は恋愛エンドを見るための作業で、最も効率的なメンバーで戦って来たのだろう。
だから非攻略キャラのユエルの別の可能性までは知らない。極限まで鍛えれば、ユエル単独でも魔王を倒せるほど強くなれることを。
彼女の言うとおり、ユエルはアタッカー向きではない。でも努力すれば今とは比べ物にならないほど強くなれるのに「向かないから」で諦めさせたくないと
「ユエルが剣士に向かないか、決めるのはあなたじゃない。アルゼリオが攻撃力を活かして戦うように、風丸が素早さを活かして戦うように、ユエルにもユエルだから極められる強さがある」
ユエル本人が、この状況をどう考えているかは分からないまま
「でもその種は人の陰に隠れて機会を譲っている限り、埋もれたまま育たない。ユエルには単なる回復役以上の力がある。それをちゃんと伸ばせる機会を与えてあげて欲しい」
封印の儀式の成功だけを考えるなら、エバーシュタインさんの挙げた方針がいちばんいい。ただこれが現実なら、封印の儀式以降も彼らの人生は続く。今度は魔王とモンスターではなく、国益のために人間同士で争う物語が。5人の騎士の中で、世界全体の平和を考えているのはユエルだけだ。
ここで騎士として力を付け損ねたら、その後の国同士の関係性においても、強国に護られる弱小国として位置づけられてしまう。
しかしこれはけっきょくユエル寄りの考えだし、導き手の任務は封印の儀式を成功させることだ。その後の世界の行く末にまで意見するのは行き過ぎなので、自分の考えを全て説明することはできなかった。
そのせいで私は、周りからは他に4人も騎士がいるのに、なぜか最年少に負担を強いる人に見えるようで
「要するにユエル君を剣士として戦わせろってこと? こんな華奢な男の子に、矢面に立って戦えなんて酷すぎるよ。ユエル君も嫌だよね? 他の騎士が居ない導き手について、1人で戦わせられるなんて」
しかしユエルを気遣う一方で星月さんは
「それなら、やはりユエル君は私の班に入るべきですわ」
口を挟んで来たエバーシュタインさんにムッとしながら
「そんなに言うならユエルはあげるけど、代わりにアルゼリオか風丸を寄こしなさいよ。そうじゃなきゃフェアじゃないでしょ」
あげるだの寄こすだの、まるで物みたいな言い方だ。それも今回は騎士の意向を尊重するという話だったのに、すっかり女同士の取り合いになっている。
もとはゲームのキャラとして認識していたのだから、すぐには切り替えられないかもしれない。しかし本人たちの居るところで、もの扱いはやめて欲しかった。
「それにユエル君は封印の儀式の要であり、回復役として不可欠な存在です。ですが、彼はまだ13歳。体格的にも他の皆さんより劣っているのですから、強いチームに入れて万一のことが無いように護ってあげるべきです」
彼女の言うことは間違っていない。少なくとも私たちの世界では、子どもは護ってあげるものだった。しかしここは異世界で彼は騎士だ。全員の前で「劣っている」「護るべきだ」なんて、あまりに侮辱的だ。
しかしそこを争点にしたら、エバーシュタインさんと言い合いになるだろう。それではかえってユエルに恥をかかせるし、いちばんの問題はそこじゃない。
「あなたの言うことも分かるけど、アタッカーとして二強のアルゼリオと風丸が居るチームに入れたら、ユエルは完全にサポートに回されてしまう。それでは彼は剣士として成長できない」
強すぎるチームに入れることは、かえってユエルのためにならないと意見したが
「剣士として成長できないも何も、ユエル君はもともと回復要員でしょう。わざわざ不向きな方向に伸ばす必要はありません。和泉さんも仮にも導き手なら、適材適所を考えて育ててあげなければ」
エバーシュタインさんは、私を小馬鹿にするように笑った。きっと彼女にとってRPG要素は恋愛エンドを見るための作業で、最も効率的なメンバーで戦って来たのだろう。
だから非攻略キャラのユエルの別の可能性までは知らない。極限まで鍛えれば、ユエル単独でも魔王を倒せるほど強くなれることを。
彼女の言うとおり、ユエルはアタッカー向きではない。でも努力すれば今とは比べ物にならないほど強くなれるのに「向かないから」で諦めさせたくないと
「ユエルが剣士に向かないか、決めるのはあなたじゃない。アルゼリオが攻撃力を活かして戦うように、風丸が素早さを活かして戦うように、ユエルにもユエルだから極められる強さがある」
ユエル本人が、この状況をどう考えているかは分からないまま
「でもその種は人の陰に隠れて機会を譲っている限り、埋もれたまま育たない。ユエルには単なる回復役以上の力がある。それをちゃんと伸ばせる機会を与えてあげて欲しい」
封印の儀式の成功だけを考えるなら、エバーシュタインさんの挙げた方針がいちばんいい。ただこれが現実なら、封印の儀式以降も彼らの人生は続く。今度は魔王とモンスターではなく、国益のために人間同士で争う物語が。5人の騎士の中で、世界全体の平和を考えているのはユエルだけだ。
ここで騎士として力を付け損ねたら、その後の国同士の関係性においても、強国に護られる弱小国として位置づけられてしまう。
しかしこれはけっきょくユエル寄りの考えだし、導き手の任務は封印の儀式を成功させることだ。その後の世界の行く末にまで意見するのは行き過ぎなので、自分の考えを全て説明することはできなかった。
そのせいで私は、周りからは他に4人も騎士がいるのに、なぜか最年少に負担を強いる人に見えるようで
「要するにユエル君を剣士として戦わせろってこと? こんな華奢な男の子に、矢面に立って戦えなんて酷すぎるよ。ユエル君も嫌だよね? 他の騎士が居ない導き手について、1人で戦わせられるなんて」
しかしユエルを気遣う一方で星月さんは
「それなら、やはりユエル君は私の班に入るべきですわ」
口を挟んで来たエバーシュタインさんにムッとしながら
「そんなに言うならユエルはあげるけど、代わりにアルゼリオか風丸を寄こしなさいよ。そうじゃなきゃフェアじゃないでしょ」
あげるだの寄こすだの、まるで物みたいな言い方だ。それも今回は騎士の意向を尊重するという話だったのに、すっかり女同士の取り合いになっている。
もとはゲームのキャラとして認識していたのだから、すぐには切り替えられないかもしれない。しかし本人たちの居るところで、もの扱いはやめて欲しかった。
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