こんな馬鹿でダメな男、好きなはずないから

知見夜空

文字の大きさ
11 / 25
第四話・海水浴に行こう

会えても会えなくても気になる

しおりを挟む
 千堂への屈従から抜け出せないまま、あっという間に1学期が終了して今は夏休みだ。なんせ学校が無いので、もう2週間ほど千堂とは顔を合わせていない。会えないのは仕方ないが連絡も一切ない。

 ……所詮アイツは僕を利用するために絡んで来るだけなので、用が無ければ連絡しないのだ。別に寂しいとか思ってない。

 ……ただアイツのことだから、また僕が想像もしないような使い道を考えて、夏休みでも平気で呼び出して来るかと思っていたので、少々拍子抜けしているだけだ。

 僕はアイツ以外のことで、あまり感情を乱すことは無いので、よくも悪くも平坦な夏休みを送っていた。


 しかし8月に入って少し過ぎた頃。千堂から久しぶりに電話が来た。その要件は

「海に行こうって……僕とお前の2人でか?」

 1泊2日で海に行かないかと誘われた。日帰りでは十分遊べないから、安い民宿に泊まろうと。民宿なんて言葉で知るだけで、実際に泊ったことはない。興味が無くもなかったが、僕の質問に千堂は

『いや、例によってお前をエサとしたナンパツアーだから俺の他に男が3人。お前が居ると女の子のほうから寄って来て楽だから、ついて来てくれよ。一緒に水着の女の子と戯れようぜ!』

 ただの遊びではなく、今回もナンパ目的だと判明した。真っ向からエサだと言われて喜ぶはずもなく、僕はムッとして

「言っておくが、僕はお前たちと違って女性なら誰でもいいわけじゃないからな。むしろ前回ラブホテルに連れ込まれそうになったせいで、お前たちが好きそうな派手な女性には恐怖しかない」
『そんなに心配するなよ。またお前が何かされそうになったら、ちゃんと護ってやるからさ』
「ふぇっ!?」
『なんだ? 急に萌えキャラみたいな声出して』
「べ、別になんでもない……」

 日頃コイツに虐げられている反動か、大事にされているようなことを言われると、妙にソワッとしてしまう。僕は謎の情動を振り払うと

「だとしても、やっぱり最初からナンパ目的の旅行は嫌だ。普通に海水浴に行くだけじゃダメなのか?」
『普通に海に行っても楽しいだろうけど、俺の場合はナンパツアーとして参加費を取るからこそ、自分の分の宿泊代が浮くから旅行できる計算なわけで』

 問題を把握した僕は

「……資金の問題ならうちの別荘を貸してもいいぞ。食事もこちらで用意してやる」
『えっ、本当に? タダで旅行させてくれんの?』
「その代わり部外者とナンパは無しだぞ!? 僕はいかがわしい集まりは嫌なんだ!」
『ナンパはいいとして、部外者ってどこまでが部外者? タダで旅行できるなら、妹たちも連れて行ってやりたいけど、流石に図々しい?』
「……お前の弟妹なら許す。下の子が居たほうがお前もナンパしにくいだろうし」

 僕の提案に、千堂は思ったより上機嫌で

『やった。泊まりで海に行けたらアイツら喜ぶわ。ありがとな、白石』
「あ、ああ」

 アイツが嬉しそうだと、なぜか心がほわっとしてしまう。この気持ちはなんだろう。……まるでアイツにしか抱かない特別な感情のように言ってしまったが、人には多かれ少なかれ共感力があるので、人が喜ぶと自分も嬉しくなるのは当然だ。絶対にアイツが特別とかじゃないと僕は慌てて思い直した。


 ともかく千堂と旅行することになったので、忘れないようにいちおうカレンダーに丸を付けて、じいやに諸々の手配を頼んだ。新しい水着も買い、泊りということは夜も遊ぶものが必要だろうとカードゲームや皆で摘まめるように菓子類なども準備した。

 別に普通にしていたつもりだが、じいやにはウキウキしているように見えたようで

「ご学友とのご旅行、楽しみですね」

 と不本意ながら微笑ましがられた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

僕の恋人は、超イケメン!!

八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

イケメン大学生にナンパされているようですが、どうやらただのナンパ男ではないようです

市川
BL
会社帰り、突然声をかけてきたイケメン大学生。断ろうにもうまくいかず……

地味メガネだと思ってた同僚が、眼鏡を外したら国宝級でした~無愛想な美人と、チャラ営業のすれ違い恋愛

中岡 始
BL
誰にも気づかれたくない。 誰の心にも触れたくない。 無表情と無関心を盾に、オフィスの隅で静かに生きる天王寺悠(てんのうじ・ゆう)。 その存在に、誰も興味を持たなかった――彼を除いて。 明るく人懐こい営業マン・梅田隼人(うめだ・はやと)は、 偶然見た「眼鏡を外した天王寺」の姿に、衝撃を受ける。 無機質な顔の奥に隠れていたのは、 誰よりも美しく、誰よりも脆い、ひとりの青年だった。 気づいてしまったから、もう目を逸らせない。 知りたくなったから、もう引き返せない。 すれ違いと無関心、 優しさと孤独、 微かな笑顔と、隠された心。 これは、 触れれば壊れそうな彼に、 それでも手を伸ばしてしまった、 不器用な男たちの恋のはなし。

脱落モブ男が人気アイドルに愛されるわけがない

綿毛ぽぽ
BL
 アイドルを夢見るも、デビューできずオーディション番組に出演しても脱落ばかりの地味男、亀谷日翔はついに夢を諦めた。そしてひょんなことから事務所にあるカフェで働き始めると、かつて出演していた番組のデビューメンバーと再会する。テレビでも引っ張りだこで相変わらずビジュアルが強い二人は何故か俺に対して距離が近い。 ━━━━━━━━━━━ 現役人気アイドル×脱落モブ男 表紙はくま様からお借りしました https://www.pixiv.net/artworks/84182395

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

学校一のイケメンとひとつ屋根の下

おもちDX
BL
高校二年生の瑞は、母親の再婚で連れ子の同級生と家族になるらしい。顔合わせの時、そこにいたのはボソボソと喋る陰気な男の子。しかしよくよく名前を聞いてみれば、学校一のイケメンと名高い逢坂だった! 学校との激しいギャップに驚きつつも距離を縮めようとする瑞だが、逢坂からの印象は最悪なようで……? キラキライケメンなのに家ではジメジメ!?なギャップ男子 × 地味グループ所属の能天気な男の子 立場の全く違う二人が家族となり、やがて特別な感情が芽生えるラブストーリー。 全年齢

俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き

toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった! ※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。 pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/100148872

処理中です...