こんな馬鹿でダメな男、好きなはずないから

知見夜空

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第四話・海水浴に行こう

同行者がいっぱい

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 そして旅行当日。デカい車で来てくれと言われたので、早朝に千堂が住んでいるアパートにリムジンで迎えに行くと

「おい、千堂。なんだ、この大人数は?」

 アパートの前には千堂と弟妹の他に、小学生の男子が2人。さらに聖さんの友人と見られる女子高生が2人居た。もちろん見送りではないようで

「妹と弟の友だち。海に行く話をしたら、友だちも一緒にいいかって頼まれちゃってさ。妹と弟の友だちなら、いかがわしい集まりじゃないからいいかなって」
「いや、いきなりこんな大人数いいわけが」

 僕は咄嗟に拒否しかけたが、その前に聖さんが口を開いて

「す、すみません、白石さん。お兄ちゃんから話を聞いて、つい浮かれちゃって。あたしたちだけでもおかしいのに、友だちも一緒になんて非常識ですよね」
「あの、あれだったら、帰ります、私たち! 今からでも!」

 女の子たちは居た堪れなさそうだし、弟君たちも残念そうだ。千堂にはいくら怒ってもいいが、女性や子どもを傷つけるわけにはいかないと

「い、いや、君たちに怒っているわけじゃないから大丈夫だ。旅行は大勢のほうが楽しいし、皆で行こう」
「やったー! ありがとう! 白石のお兄ちゃん!」
「旅行、楽しみー!」

 弟君たちは飛び上がって喜び、女の子たちもホッとした様子だ。さっきは予定外の増員に驚いたが、素直そうな子たちだし、まぁいいだろうと納得したところで

「それにしても、デカい車で来てくれとは言ったけど、まさかリムジンで来るとはな」
「デカい車と言ったら、普通はリムジンじゃないか?」

 千堂の発言に首を捻りながら返すと、アイツはニパッと八重歯を見せて

「お前が生粋のボンボンなの忘れていた。でも本来なら一生縁の無い車に乗れて、かえってラッキーだったかも」

 珍しく無邪気な笑顔。夏の日差しも相まって、妙に眩しく感じていると

「ボーッとしてどうした? 顏も赤いし、もしかして、もう熱中症?」

 千堂は首を傾げながら、僕の顔を覗き込んで来た。僕は千堂から咄嗟に離れると

「べ、別にそう言うんじゃない。外が暑いから、ちょっと顔が熱いだけだ」
「じゃあ、さっさと車に乗ろうぜ……って思ったけど、やっぱりこの人数だと、ちょっと多いな。たすくは兄ちゃんの膝でもいいか?」
「え~、やだ~。友だちも一緒なのに、兄ちゃんの膝に乗るなんて恥ずかしい~」

 と言いつつ佑君は兄が大好きなようで、イヤイヤしながらもなぜか千堂の腹に抱きついていた。千堂はそんな弟の頭を撫でつつ、ふと僕に顔を向けて

「じゃー、仕方ないから俺がお前の膝に乗るか」
「はっ!? 男のくせに男の膝に乗るって正気か!?」

 狼狽える僕とは対照的に、千堂はなんでも無さそうに

「仕方ないじゃん。女の子を膝に乗せるわけにはいかないし、自分だけ別ルートで行くのは面倒だし」
「それはそうだが」
「下僕が文句言わなーい。大人しく俺の椅子におなり」

 千堂はニッと笑いながら、僕の肩にガシッと腕を回して来た。コイツは本当に、無駄に人との距離が近い。

 それから千堂は、本当に助手席に乗った僕の膝に座った。千堂は比較的、小柄で細身なので思ったほど邪魔ではないが

「……お前の尻尾が首に当たるんだが」
「あー、じゃあ、髪をほどくわ。これでいい?」
「あ、ああ……」

 普段は結ばれている天然の茶髪がサラリと肩に落ちる。コイツは首も肩も華奢だし、後ろから見ると未だに女の子みたいだ。僕に女性経験が無いせいだろうか? 妙にドキドキして居心地が悪い。

 しかも視覚だけでも毒なのに

「お前、香水でも付けているのか?」
「つけてないけど、なんで?」
「そんな感じの匂いがするから」

 有体に言えば、男のものとは思えないようないい香りがした。それは僕の錯覚ではないようで、千堂は自分の腕の匂いを嗅ぎながら

「多分シャンプーかボディソープじゃね? うちは風呂場がゴチャつかないようにって、家族みんな妹が選んだヤツを使っているんだ。だから男でもフローラルなの。でもいい匂いだし、構わないだろ?」
「いや、まぁ、構わないが……」

 本当は構うと言うか、別の意味で構いたくなってしまって

「……ちょっと髪に触ってみてもいいか?」

 目の前にある指どおりの良さそうな髪に触れてみたくて問うと

「別にいいぞ。減るもんじゃないし」

 アイツは気軽にOKした。しかしふと思いついたように僕を振り返ると、によによ笑って

「でもエッチなところは触っちゃやーよ?」
「さ、触るはずがない! と言うか男のエッチなところってどこだ!?」
「大声を出すなよ。子どもたちがビビってんじゃん」

 千堂の指摘どおり、振り返ると後部座席に乗っていた子たちが、目を丸くしてこちらを見ていた。僕はその視線を避けるように

「お前がいちいちからかうのが悪い……」

 ショックから立ち直るまで、千堂の肩に震えながら顔を埋めていた。
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