100 / 122
傲慢の指輪
聖トラヴィス教会
しおりを挟む
悪魔の指輪探しに戻った私はフィーロの指示で、なぜかマティアスさんに会いに行くことになった。
てっきりお屋敷に出ると思ったのに、一足飛びのブーツで飛んだ先は、彼の地元でもない見知らぬ街。
そこには確かにマティアスさんがいたけど、薄汚れた旅装で酷くやつれていた。
とつぜん目の前に現れた私たちにマティアスさんは
「カンナギ殿! 良かった! あなたを捜していたんです!」
「私を捜していたって、どうしてですか?」
目を丸くする私に、マティアスさんは事情を説明した。
「えっ!? レティシアさんとお子さんたちが人質に!?」
「はい。連中はあなたと同じく悪魔の指輪を集めているようで、憤怒の指輪が当家にあったはずだと、私たちのもとに押しかけました」
マティアスさん一家を襲ったのは『聖トラヴィス教会』というところの信者だそうだ。
「聖トラヴィス教会って?」
フィーロに尋ねると
「今はトラヴィスと名乗る男の転移者が、信者たちを洗脳して作った教会とは名ばかりのカルト集団さ。前に道具狩りの話をしただろう? いま探しているのは悪魔の指輪だが、転移者を見つけては神の宝を強奪しようとする性質の悪い連中さ」
ちなみに聖トラヴィス教会に、憤怒の指輪について教えたのはロレンスさんらしい。ロレンスさんはレティシアさんに横恋慕して、彼女の夫であるマティアスさんを憎んでいた。
そこでマティアスさんを憤怒の指輪で激怒させて、夫婦を引き裂こうとした。その悪事を暴かれて逆に追い出されたことを、ロレンスさんは恨んでいたようだ。
そこに『悪魔の指輪は悪いものだから、神の代行者である自分が回収・管理する』という名目で活動している聖トラヴィス教会の存在を知った。
ロレンスさんは自分を邪魔した者たちへの復讐と情報提供料目当てに、憤怒の指輪の件を聖トラヴィス教会に密告したそうだ。
「最初は恩人であるカンナギ殿のことは隠そうとしたのですが、私が口を割らぬなら妻や子どもを殺すと脅されて……」
「それは全然、言ってくれて良かったです」
自分に何かあるより、私を庇った人たちが死んでしまうほうが嫌だ。
それにしても
「マティアスさんたちは貴族なのに、こんな無法が許されるの?」
この世界は元の世界と比べて司法や道徳が行き届いていない。だから死んでも騒ぐ人がいない私のような流れ者や身分の低い人たちは、犯罪者の餌食になりやすい。
けれど貴族であるマティアスさんたちに手を出せば、国が放っておかないはずだ。それなのに、なぜこんな大胆な犯行ができたかと言うと
「聖トラヴィス教会の噂なら、俺も聞いたことがある。殺人や強盗や誘拐などで各国に目をつけられているが、信者たちは神出鬼没で本部がどこにあるかも分からないらしい。そのせいでやりたい放題になっているそうだ」
リュシオンの説明に、私は「そんな恐ろしい集団なんだ……」と怖くなった。
さらにマティアスさんは続けて
「多勢に無勢でどうにもできず、レティシアたちを人質に取られた私は、ヤツらの命じるままカンナギ殿を捜しに行くことになりました。妻子を殺されたくなければ、悪魔の指輪を渡すように伝えるために」
「す、すみません。私のせいで大変なことに巻き込んでしまって」
謝って済むことではないけど、反射的に謝罪すると
「いえ。悪魔の指輪などと縁ができたのは、カンナギ殿のせいではなくロレンスのせいです。ああ、ですが、どうか妻と子どもたちだけは。カンナギ殿のご迷惑になるとしても、お助けいただきたい」
マティアスさんは食堂のテーブルに手をついて深く頭を下げた。
「頭を上げてください。私だって絶対にレティシアさんとお子さんたちを助けたいと思っていますから。一緒に解決策を考えましょう」
教会の言いなりになって、悪魔の指輪を渡すわけにはいかない。でも、こちらには全知の力を持つフィーロがいるのだし、必ず解決できるはずだと励ますも
「ちなみに悪いニュースは続くが、同じ手口でクリスティアと彼女の母も連中に捕まっている」
「ええっ!?」
仰天する私に、リュシオンも険しい表情で
「噂以上に厄介で性質の悪い連中だな」
その後。マティアスさんと同様、どこにいるかも分からない私を捜して旅していたクリスティアちゃんのお父さんとも合流した。
こちらもロレンスさんと同じく悪事がバレて追い出された伯母さんが、復讐とお金目当てに怠惰の指輪のことを教会に密告したらしい。
マティアスさんも同じ目に遭っていると知ったエミリオさんは驚いて
「なんと。あなたも妻子を人質に取られたのですか?」
「家族を人質にして言うことを聞かせるなんて、どこまで卑劣な連中なんだ」
聖トラヴィス教会のやり口に、憤るマティアスさんたちに
「妻子が戻るまでは、とても心穏やかにはなれないだろうが、君たちの家族は軟禁されているだけで危害は加えられていない。実はもう殺されているとか、酷い目に遭わされているとかは無いから、そこは安心していい」
フィーロの言葉に、エミリオさんは「そうですか」と少しホッとした様子で
「実は解放する気など無いのではないかと気がかりだったので、少なくとも命は無事だと分かって安心しました」
「だが、これからどうする? いくら彼らの妻子が人質になっているからと言って、そんな危険な集団に悪魔の指輪を渡すわけにはいかない」
リュシオンの問いに、フィーロを見ると
「大丈夫だ。この場にいる全員の協力が得られるなら、解決の目途は立っている」
「どうすればいいの?」
てっきりお屋敷に出ると思ったのに、一足飛びのブーツで飛んだ先は、彼の地元でもない見知らぬ街。
そこには確かにマティアスさんがいたけど、薄汚れた旅装で酷くやつれていた。
とつぜん目の前に現れた私たちにマティアスさんは
「カンナギ殿! 良かった! あなたを捜していたんです!」
「私を捜していたって、どうしてですか?」
目を丸くする私に、マティアスさんは事情を説明した。
「えっ!? レティシアさんとお子さんたちが人質に!?」
「はい。連中はあなたと同じく悪魔の指輪を集めているようで、憤怒の指輪が当家にあったはずだと、私たちのもとに押しかけました」
マティアスさん一家を襲ったのは『聖トラヴィス教会』というところの信者だそうだ。
「聖トラヴィス教会って?」
フィーロに尋ねると
「今はトラヴィスと名乗る男の転移者が、信者たちを洗脳して作った教会とは名ばかりのカルト集団さ。前に道具狩りの話をしただろう? いま探しているのは悪魔の指輪だが、転移者を見つけては神の宝を強奪しようとする性質の悪い連中さ」
ちなみに聖トラヴィス教会に、憤怒の指輪について教えたのはロレンスさんらしい。ロレンスさんはレティシアさんに横恋慕して、彼女の夫であるマティアスさんを憎んでいた。
そこでマティアスさんを憤怒の指輪で激怒させて、夫婦を引き裂こうとした。その悪事を暴かれて逆に追い出されたことを、ロレンスさんは恨んでいたようだ。
そこに『悪魔の指輪は悪いものだから、神の代行者である自分が回収・管理する』という名目で活動している聖トラヴィス教会の存在を知った。
ロレンスさんは自分を邪魔した者たちへの復讐と情報提供料目当てに、憤怒の指輪の件を聖トラヴィス教会に密告したそうだ。
「最初は恩人であるカンナギ殿のことは隠そうとしたのですが、私が口を割らぬなら妻や子どもを殺すと脅されて……」
「それは全然、言ってくれて良かったです」
自分に何かあるより、私を庇った人たちが死んでしまうほうが嫌だ。
それにしても
「マティアスさんたちは貴族なのに、こんな無法が許されるの?」
この世界は元の世界と比べて司法や道徳が行き届いていない。だから死んでも騒ぐ人がいない私のような流れ者や身分の低い人たちは、犯罪者の餌食になりやすい。
けれど貴族であるマティアスさんたちに手を出せば、国が放っておかないはずだ。それなのに、なぜこんな大胆な犯行ができたかと言うと
「聖トラヴィス教会の噂なら、俺も聞いたことがある。殺人や強盗や誘拐などで各国に目をつけられているが、信者たちは神出鬼没で本部がどこにあるかも分からないらしい。そのせいでやりたい放題になっているそうだ」
リュシオンの説明に、私は「そんな恐ろしい集団なんだ……」と怖くなった。
さらにマティアスさんは続けて
「多勢に無勢でどうにもできず、レティシアたちを人質に取られた私は、ヤツらの命じるままカンナギ殿を捜しに行くことになりました。妻子を殺されたくなければ、悪魔の指輪を渡すように伝えるために」
「す、すみません。私のせいで大変なことに巻き込んでしまって」
謝って済むことではないけど、反射的に謝罪すると
「いえ。悪魔の指輪などと縁ができたのは、カンナギ殿のせいではなくロレンスのせいです。ああ、ですが、どうか妻と子どもたちだけは。カンナギ殿のご迷惑になるとしても、お助けいただきたい」
マティアスさんは食堂のテーブルに手をついて深く頭を下げた。
「頭を上げてください。私だって絶対にレティシアさんとお子さんたちを助けたいと思っていますから。一緒に解決策を考えましょう」
教会の言いなりになって、悪魔の指輪を渡すわけにはいかない。でも、こちらには全知の力を持つフィーロがいるのだし、必ず解決できるはずだと励ますも
「ちなみに悪いニュースは続くが、同じ手口でクリスティアと彼女の母も連中に捕まっている」
「ええっ!?」
仰天する私に、リュシオンも険しい表情で
「噂以上に厄介で性質の悪い連中だな」
その後。マティアスさんと同様、どこにいるかも分からない私を捜して旅していたクリスティアちゃんのお父さんとも合流した。
こちらもロレンスさんと同じく悪事がバレて追い出された伯母さんが、復讐とお金目当てに怠惰の指輪のことを教会に密告したらしい。
マティアスさんも同じ目に遭っていると知ったエミリオさんは驚いて
「なんと。あなたも妻子を人質に取られたのですか?」
「家族を人質にして言うことを聞かせるなんて、どこまで卑劣な連中なんだ」
聖トラヴィス教会のやり口に、憤るマティアスさんたちに
「妻子が戻るまでは、とても心穏やかにはなれないだろうが、君たちの家族は軟禁されているだけで危害は加えられていない。実はもう殺されているとか、酷い目に遭わされているとかは無いから、そこは安心していい」
フィーロの言葉に、エミリオさんは「そうですか」と少しホッとした様子で
「実は解放する気など無いのではないかと気がかりだったので、少なくとも命は無事だと分かって安心しました」
「だが、これからどうする? いくら彼らの妻子が人質になっているからと言って、そんな危険な集団に悪魔の指輪を渡すわけにはいかない」
リュシオンの問いに、フィーロを見ると
「大丈夫だ。この場にいる全員の協力が得られるなら、解決の目途は立っている」
「どうすればいいの?」
2
あなたにおすすめの小説
娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る
ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。
異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。
一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。
娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。
そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。
異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。
娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。
そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。
3人と1匹の冒険が、今始まる。
※小説家になろうでも投稿しています
※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!
よろしくお願いします!
聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。
そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来?
エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
修学旅行に行くはずが異世界に着いた。〜三種のお買い物スキルで仲間と共に〜
長船凪
ファンタジー
修学旅行へ行く為に荷物を持って、バスの来る学校のグラウンドへ向かう途中、三人の高校生はコンビニに寄った。
コンビニから出た先は、見知らぬ場所、森の中だった。
ここから生き残る為、サバイバルと旅が始まる。
実際の所、そこは異世界だった。
勇者召喚の余波を受けて、異世界へ転移してしまった彼等は、お買い物スキルを得た。
奏が食品。コウタが金物。紗耶香が化粧品。という、三人種類の違うショップスキルを得た。
特殊なお買い物スキルを使い商品を仕入れ、料理を作り、現地の人達と交流し、商人や狩りなどをしながら、少しずつ、異世界に順応しつつ生きていく、三人の物語。
実は時間差クラス転移で、他のクラスメイトも勇者召喚により、異世界に転移していた。
主人公 高校2年 高遠 奏 呼び名 カナデっち。奏。
クラスメイトのギャル 水木 紗耶香 呼び名 サヤ。 紗耶香ちゃん。水木さん。
主人公の幼馴染 片桐 浩太 呼び名 コウタ コータ君
(なろうでも別名義で公開)
タイトル微妙に変更しました。
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる