足軽

dragon49

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足軽 3

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足軽3

 水煙が上がってから一刻も経った頃、兵達は久々に白い飯を腹一杯食べ、酒も回り身動きがすっかり鈍くなった。睡魔に襲われて居眠りしているものもいる。

皆、傍らに頭陀袋に入った米一升を大事そうに抱えて肩を叩き合いながら談笑している。

「これからは、白い飯が腹一杯食えるぞ」

 頃合いや良し。

「斬れ!」

一益が下知すると先鋒隊の武者達が脇差しを抜いて、次々と鉄砲隊の兵士に斬りかかった。

兵士達は、血しぶきを挙げて次々と倒れた。水煙の窯の周囲はまたたく間に血の海となった。全滅であった。

又吉は、額から血を流しながら一益に迫った。
手には書状らしきモノを持っての直訴だ。

「一益殿、これは一体、何故?」

「領主を裏切った鉄砲隊などいらぬわ!」

一益が脇差しを一閃すると又吉の首がコロリと落ちた。

一益は、落ちた首を一瞥した。

又吉の首は、陽光に照らされた涙が光っていた。

斬られた兵士達の骸が泣いていた。

その骸に腹を空かせた烏の群がたかり始めた。

一益は、血の海と涙を流す骸を越えて誰もいない無人の根城に悠々と入城した。

後続の一益の足軽部隊は、何事もなかったかのように全滅した佐間の兵士達の骸を事務的に片付け始めた。

「又吉ってのは馬鹿だなぁ。一益様と対等に話をしようとしたらしいぜ」

 「全く足軽の分際で、身分が違いすぎるのになあ」

 「米まで貰えるなんて本気で思っていたのか」

 骸を片付け終わった兵士達は、又吉らに配った米を全部回収し、血糊の着いた足軽の鉄砲と騎馬隊の脇差しを戦利品としてせしめた。
 
「こいつらの家族も父ちゃんの帰りを待ってるんだろうに」
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