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Phase 1 生まれ変わってもブラック会社に勤めていた迷宮探索者の憂鬱
第3話 ブラック会社に勤めています
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『レギオン』それは迷宮探索者たちが集まる集団だ。
『レギオン』は、『迷宮探索者協同組合』通称『ギルド』と同じく法律によって権利能力を認められた組織体であり、『レギオン』の事を『会社』という別称で呼ぶこともある。
この国の法律では、『レギオンは、迷宮探索者が迷宮探索によって得た利益を構成員に分配することを目的とする』と記されている。
迷宮探索者は稼いできた財宝をレギオンに納め、そこからレギオンが税金や必要経費、レギオン運営資金など捻出し、構成員へ毎月契約された給料を支払うという仕組みになっている。
パーティの編成や迷宮の情報の共有、取得したアイテムの交換など、レギオンに所属することで得られる利益はいろいろとあるが、皆がレギオンに所属する一番の理由は税金である。
この国には迷宮で得た利益に応じた、税金の支払いの義務がある。
この税金の計算が、面倒なだけでなく難易度が高くとてもやっかいだ。
収入に応じて税率が変わる複雑な仕組みとなっており、上級学校で習う高等数学を学んだものでないと計算することもできないと言われている。
迷宮探索者は体が資本の労働者階級出身の者がほとんどだ。そんな専門教育を受けた迷宮探索者などいるわけがない。納税の仕組みは探索者にとって面倒極まりないものなのである。
だがそんな難解な税金の計算も、レギオンに所属すれば専門の事務員が税金の計算をしてくれ、迷宮探索者に代わって納税までしてくれる。
レギオンに所属さえすれば、迷宮探索者は面倒な税金の計算について悩む必要はないのだ。
この迷宮都市にもいくつものレギオンがあり、大抵の迷宮探索者はどこかのレギオンに所属している。
ロキが所属している大手レギオン「ストラグルフォーリバティー」は、迷宮都市でも1,2を争う大手レギオンだ。
大手に就職したロキの生活は安定するはずだったが、なかなか思ったようにはいかないというのが現実だった。
★★★★★★★★
「よう、ロキ!またやらかしたんだって?」
ロキが金牛亭で晩飯を食っていると、一人の男から声をかけられた。
ロキよりも少し高い上背と、明らかに迷宮探索者であると分かる屈強な肉体をしている。
この辺りでは珍しいブロンドの長髪と整った顔立ちが目を引く。
彼は許可を得るでもなく当然のようにロキの向かいの席に座り、そしてムスッとした顔のロキに向かって満面の笑みを浮かべながら手に持ったエールを突き出してきた。
「今夜は何に乾杯する?」
「乾杯じゃねえよ!」
「カッカッカッ!」
男の名はレオン。数少ないロキの友人である。
「笑ってんじゃねえよ!どこまで聞いたんだよ?」
「お前が会社で大声で怒鳴りあってたってことだけだ。何があったんだ?」
「聞いてくれよ!今日ついに俺も30階層を突破したんだよ」
「お、遂にやったな!おめでとう!」
「軽いな。まあA級探索者のお前からしたら、大したことない話かもしれねーけどな」
「いやいや、そんなことねーよ。30階層っつーとジャイアントトロールか」
「それが運悪く階層主の更新がされててさ、見たこともない階層主が現れたんだ」
「へー、何が出た?」
「砂巨人ってわかるか?」
「知らん!」
「だろ?お前が知らねえ魔物、他に誰が知ってるっつうんだよ!俺も見るのも聞くのも初めてだよ!しかも弱点は体の中に隠れてる丸い石でさ!初見殺しもいいとこだよ!」
「でも突破したってことは、倒したんだろ?」
「ギリだよ、ギリ!ギリギリのギリだよ!」
「何回ギリって言うんだよ」
「そんだけギリギリだったんだよ!」
ロキが熱くなって大きな声を挙げたところに、料理を持った店員の女性が現れる。
串に刺されて焼かれた鶏肉と野菜が乗った皿が、二人のテーブルの上に置かれる。
「盛り上がってるわね」
「へへ……」
年上女性の色気のある微笑みに、ロキは少し恥ずかしそうに照れ笑いを浮かべる。
「うまそーだな、俺にもそれと同じヤキトリもらえるか」
「はいよ」
「カリナさん、俺はエールのお替りを!」
レオンがロキと同じ品を注文をすると、ロキもエールのお替りを注文する。
その後ロキは砂巨人との死闘を詳しく説明する。熱く語るロキをレオンは面白そうに見ながら、要所要所で相槌を打って話を聞いている。
「まあとにかく、生還できて良かったじゃねえか。それが何でレギオンで怒鳴りあいになるんだ?普通もっとこう、よくやったって称賛されるだろ?」
「そう、まさにそこだよ!普通そうだろ?それがさ、レギオンに戻って報告したらさ、おめでとうの言葉一つも何もないんだよ。だから俺は言ってやったんだよ。少ない給料でやってんだから、賞与の一つでもないのか?って!そしたら逆ギレしてくんだよ!」
「あー、名前何つったっけ?お前の上司?」
「ゲイズだよ。あのやろー椅子に座ってるだけで探索者の大変さ分かってねえんだよ!」
「あーゲイズ!いつもお前が愚痴ってる相手な。そうだな、どこのレギオンも事務員はダメだって言うよな」
「本当それ!ほんそれ!こっちは命を懸けて探索してるって言うのに、あいつら椅子に座ってるだけで俺たちよりも良い給料もらってるって考えると、殺してやりたくなるね!」
「実行すんなよ、最近は聞かねえけど時々暴力沙汰で捕まるやつもいるからな。この国の法律だと、探索者が非力な非探索者に暴力を奮うと、理由はどうあれ重罪になるからな。手を出したら一生牢屋を覚悟しとけ」
「手は出さねえよ!口は出すけど。でも口を出したら倍返しでさ、『階層を突破したらいつもボーナスがもらえると思うな、ボーナスはみんなが稼いできた金を事務員ががんばってやりくりして余裕が出た時にだけ貰えるんだ。ボーナスを欲しければもっと貢献しろ』とか言いやがる。お前ら事務員の給料は俺らが迷宮で稼いできた金から出てるんだろうが!事務員なんて金の計算してるだけじゃねえかって!」
すると、そんなロキの声が聞こえた隣のテーブルの迷宮探索者も声を掛けてくる。
「そうだそうだ!ウチの会社にも同じこと言ってやってくれ!」
「自分で言えよ!」
「やだよ!そんなん直接言った日にゃあ、翌日から給料減らされるの分かり切ってるだろうが!」
「そうなんだよ!給料減らすとか言いやがるんだよ!」
「ガハハハハッ!」
ロキの言葉に、周りから笑いが起こる。
「笑いごとじゃねえよ!」
『レギオン』は、『迷宮探索者協同組合』通称『ギルド』と同じく法律によって権利能力を認められた組織体であり、『レギオン』の事を『会社』という別称で呼ぶこともある。
この国の法律では、『レギオンは、迷宮探索者が迷宮探索によって得た利益を構成員に分配することを目的とする』と記されている。
迷宮探索者は稼いできた財宝をレギオンに納め、そこからレギオンが税金や必要経費、レギオン運営資金など捻出し、構成員へ毎月契約された給料を支払うという仕組みになっている。
パーティの編成や迷宮の情報の共有、取得したアイテムの交換など、レギオンに所属することで得られる利益はいろいろとあるが、皆がレギオンに所属する一番の理由は税金である。
この国には迷宮で得た利益に応じた、税金の支払いの義務がある。
この税金の計算が、面倒なだけでなく難易度が高くとてもやっかいだ。
収入に応じて税率が変わる複雑な仕組みとなっており、上級学校で習う高等数学を学んだものでないと計算することもできないと言われている。
迷宮探索者は体が資本の労働者階級出身の者がほとんどだ。そんな専門教育を受けた迷宮探索者などいるわけがない。納税の仕組みは探索者にとって面倒極まりないものなのである。
だがそんな難解な税金の計算も、レギオンに所属すれば専門の事務員が税金の計算をしてくれ、迷宮探索者に代わって納税までしてくれる。
レギオンに所属さえすれば、迷宮探索者は面倒な税金の計算について悩む必要はないのだ。
この迷宮都市にもいくつものレギオンがあり、大抵の迷宮探索者はどこかのレギオンに所属している。
ロキが所属している大手レギオン「ストラグルフォーリバティー」は、迷宮都市でも1,2を争う大手レギオンだ。
大手に就職したロキの生活は安定するはずだったが、なかなか思ったようにはいかないというのが現実だった。
★★★★★★★★
「よう、ロキ!またやらかしたんだって?」
ロキが金牛亭で晩飯を食っていると、一人の男から声をかけられた。
ロキよりも少し高い上背と、明らかに迷宮探索者であると分かる屈強な肉体をしている。
この辺りでは珍しいブロンドの長髪と整った顔立ちが目を引く。
彼は許可を得るでもなく当然のようにロキの向かいの席に座り、そしてムスッとした顔のロキに向かって満面の笑みを浮かべながら手に持ったエールを突き出してきた。
「今夜は何に乾杯する?」
「乾杯じゃねえよ!」
「カッカッカッ!」
男の名はレオン。数少ないロキの友人である。
「笑ってんじゃねえよ!どこまで聞いたんだよ?」
「お前が会社で大声で怒鳴りあってたってことだけだ。何があったんだ?」
「聞いてくれよ!今日ついに俺も30階層を突破したんだよ」
「お、遂にやったな!おめでとう!」
「軽いな。まあA級探索者のお前からしたら、大したことない話かもしれねーけどな」
「いやいや、そんなことねーよ。30階層っつーとジャイアントトロールか」
「それが運悪く階層主の更新がされててさ、見たこともない階層主が現れたんだ」
「へー、何が出た?」
「砂巨人ってわかるか?」
「知らん!」
「だろ?お前が知らねえ魔物、他に誰が知ってるっつうんだよ!俺も見るのも聞くのも初めてだよ!しかも弱点は体の中に隠れてる丸い石でさ!初見殺しもいいとこだよ!」
「でも突破したってことは、倒したんだろ?」
「ギリだよ、ギリ!ギリギリのギリだよ!」
「何回ギリって言うんだよ」
「そんだけギリギリだったんだよ!」
ロキが熱くなって大きな声を挙げたところに、料理を持った店員の女性が現れる。
串に刺されて焼かれた鶏肉と野菜が乗った皿が、二人のテーブルの上に置かれる。
「盛り上がってるわね」
「へへ……」
年上女性の色気のある微笑みに、ロキは少し恥ずかしそうに照れ笑いを浮かべる。
「うまそーだな、俺にもそれと同じヤキトリもらえるか」
「はいよ」
「カリナさん、俺はエールのお替りを!」
レオンがロキと同じ品を注文をすると、ロキもエールのお替りを注文する。
その後ロキは砂巨人との死闘を詳しく説明する。熱く語るロキをレオンは面白そうに見ながら、要所要所で相槌を打って話を聞いている。
「まあとにかく、生還できて良かったじゃねえか。それが何でレギオンで怒鳴りあいになるんだ?普通もっとこう、よくやったって称賛されるだろ?」
「そう、まさにそこだよ!普通そうだろ?それがさ、レギオンに戻って報告したらさ、おめでとうの言葉一つも何もないんだよ。だから俺は言ってやったんだよ。少ない給料でやってんだから、賞与の一つでもないのか?って!そしたら逆ギレしてくんだよ!」
「あー、名前何つったっけ?お前の上司?」
「ゲイズだよ。あのやろー椅子に座ってるだけで探索者の大変さ分かってねえんだよ!」
「あーゲイズ!いつもお前が愚痴ってる相手な。そうだな、どこのレギオンも事務員はダメだって言うよな」
「本当それ!ほんそれ!こっちは命を懸けて探索してるって言うのに、あいつら椅子に座ってるだけで俺たちよりも良い給料もらってるって考えると、殺してやりたくなるね!」
「実行すんなよ、最近は聞かねえけど時々暴力沙汰で捕まるやつもいるからな。この国の法律だと、探索者が非力な非探索者に暴力を奮うと、理由はどうあれ重罪になるからな。手を出したら一生牢屋を覚悟しとけ」
「手は出さねえよ!口は出すけど。でも口を出したら倍返しでさ、『階層を突破したらいつもボーナスがもらえると思うな、ボーナスはみんなが稼いできた金を事務員ががんばってやりくりして余裕が出た時にだけ貰えるんだ。ボーナスを欲しければもっと貢献しろ』とか言いやがる。お前ら事務員の給料は俺らが迷宮で稼いできた金から出てるんだろうが!事務員なんて金の計算してるだけじゃねえかって!」
すると、そんなロキの声が聞こえた隣のテーブルの迷宮探索者も声を掛けてくる。
「そうだそうだ!ウチの会社にも同じこと言ってやってくれ!」
「自分で言えよ!」
「やだよ!そんなん直接言った日にゃあ、翌日から給料減らされるの分かり切ってるだろうが!」
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「ガハハハハッ!」
ロキの言葉に、周りから笑いが起こる。
「笑いごとじゃねえよ!」
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