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Phase 1 生まれ変わってもブラック会社に勤めていた迷宮探索者の憂鬱
第27話 四人での初探索
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「何やっとるんじゃお前は!」
老魔法使いマルコの怒鳴り声がダンジョンに響いた。
今日はロキ、アルマ、ココロ、マルコの四人でパーティーを組み、ダンジョンに来ていた。
レオンは彼らとは別にソロで深層を探索している。
基本的にロキのレギオンは、この二つのパーティーが基本編成となる。
ロキたち四人の方のパーティーは、基本的な活動方針を打ち合わせるため、まずは浅層で様子を見ているところだった。
迷宮内を歩きながらふと雑談が始まり、昨夜の話となった時、その話を聞いたマルコが目を丸くして驚き、そしてロキを叱ったのだ。
「ココロの敵討ちで、相手レギオンに乗り込んだ?お前、たまたま相手が折れてくれたからよかったものの、もし相手が引かず、例えば魔法の打ち合いにでもなったら、街に大きな被害を与えることになっていたんじゃぞ?そうしたらただの暴行罪では済まんぞ?ワシの知ってる限り、騒乱罪で中心人物が死刑になったことだってあるんじゃ!」
「はいはい、すいません!」
「何が『はいはい』だ!もっと反省をしろ!何度も言うが、探索者同士のケンカはご法度じゃからな!」
「それを言ったら、そもそも今回はあっちの方がココロにケンカを売ってきたんだぜ?」
「うるさい!ケンカを売られても買うなって言っとるんじゃ!両方に罪が被せられるんじゃぞ!」
「はいはい、すいませんでした」
「それで謝っとるつもりか!」
強い剣幕のマルコに、アルマがロキを庇うように言葉をかける。
「マルコさん、ロキさんはココロちゃんを守ってくれたんですから、それくらいで許してあげてください」
「う……ううむ……」
「そうだよ。ロキは悪くないよ」
アルマだけでなくココロもロキを庇うと、マルコは言葉に詰まった。
「まあ、レギオンを移籍するということは、こういうトラブルが起こりやすい。移籍してしまったものは仕方がないが、今後は気を付けるようにな。それよりアルマの方は大丈夫なのか?前のレギオンの奴らから何かされたりはしとらんか?」
「私ですか?私の方はあんまり気にされてないみたいです。昨日寮に荷物を取りに戻った時も、レギオンのロイダさんって人のパーティーが帰ってないって騒ぎになっていて、私のことを気にする人はいませんでした」
「ロイダって、あのモンスタートレインババアか?」
「えっと、あの……その人です」
『モンスタートレインババア』というあだ名に一瞬どう返答したらよいか迷うが、言ってる意味は理解できるため肯定するアルマ。
ロキはそんなアルマの躊躇を気にすることなく話し続ける。
「帰って来ないってことは、おそらく全滅したんだろうな。あんな探索の仕方してちゃ、いずれ死ぬだろうって思ってたぜ。だんだん実力が付いてくると、自信過剰になるやつがいるんだ。こないだだってモンスタートレインを人のせいにしてただろ?自分のミスに気づけないんだから、何度でもミスし続けるに決まってる」
死んだだろうという言葉を聞き、悲しげな表情を浮かべるアルマ。
マルコもロキの推測に同意する。
「ワシはロイダという人間の事は知らんが、帰って来ないというなら確かに死んでる可能性は高いな。あまり推測でものを言うもんではないが。階層転移が発見された今は、昔みたいに迷宮内で夜を明かすことはなくなったしのう」
「そう言えば昔は迷宮で寝泊まりしてたんですよね?夜ってどうしてたんですか?」
迷宮の中にも昼と夜がある。迷宮の中は自然の洞窟と違い、日中は謎の明かりによって照らされているのだ。そして日没とともに迷宮の中も暗くなり、魔物に襲われる危険性が上がる。
現在では各階層の入口の部屋で転移ができることが発見されたため、日が暮れる前に地上へ戻り、また翌朝続きの階層から探索しなおすという活動がされるようになった。
しかし階層転移ができることが知られていなかった時代は、迷宮内で寝泊まりをし、一回の探索で何日もかかっていたという。そのため荷物も必然的に多くなり、そしてそれほど深くまでの探索はできていなかった。
マルコが現役だった頃は、そんな不便な時代だった。
「夜はキャンプを張って、交代で寝てたんじゃ。誰か見張りがいないといつ襲われるか分からんかったからな。そのうち魔物が現れることのない安全地帯とかも発見されるようになったが、それでも心配だったから、見張りは必ずいたもんじゃ」
「うわー、24時間労働、超ブラックじゃん!」
「ブラックってどういう意味じゃ?」
「劣悪な労働環境ってことだよ。俺はホワイトな環境を目指すから!」
「よくわからんが、ワシらのころはそれが普通だったんじゃ。それが悪いかどうかは関係なくな」
老人の中には、今の若いやつらは、みたいな言い方をする者もいる。だがマルコはそういう言い方をするタイプではなく、今は今で昔より深層を探索する大変さがあることを知っているし、自分たちの時代の自慢をすることもなかった。
「まあ話ばかりしてても仕方ない。探索を続けよう。ロキ、早く魔物を見つけんか!」
「えー?!そんな急に言われても」
「魔物だったらあっちの方にいるよ」
「え?」
魔物がいるとココロが指差した方を全員が見る。だがそこに魔物の影は見当たらない。
念のためロキは地面に耳を当て、足音に聞き耳を立てる。
だがロキの耳には魔物の足音は聞こえてこなかった。
「ココロ、魔物を探す時はまずは音を聞くんだ。そして次に目でその姿を探す。まだ魔物は近くにはいないぞ」
「近くじゃないよ。あっちの方にいるんだよ」
「え?」
ロキはもう一度ココロが指さす方向を眺める。だがロキには魔物がいるかどうかは分からなかった。
「ココロ、なんであっちに魔物がいると思う?」
「だってあっちの方にザワザワした感じがするもん」
「ザワザワ……?」
言ってることが全く分からないロキが困惑していると、マルコが口をはさむ。
「よし、行くぞロキ!」
「は、はあ」
老魔法使いマルコの怒鳴り声がダンジョンに響いた。
今日はロキ、アルマ、ココロ、マルコの四人でパーティーを組み、ダンジョンに来ていた。
レオンは彼らとは別にソロで深層を探索している。
基本的にロキのレギオンは、この二つのパーティーが基本編成となる。
ロキたち四人の方のパーティーは、基本的な活動方針を打ち合わせるため、まずは浅層で様子を見ているところだった。
迷宮内を歩きながらふと雑談が始まり、昨夜の話となった時、その話を聞いたマルコが目を丸くして驚き、そしてロキを叱ったのだ。
「ココロの敵討ちで、相手レギオンに乗り込んだ?お前、たまたま相手が折れてくれたからよかったものの、もし相手が引かず、例えば魔法の打ち合いにでもなったら、街に大きな被害を与えることになっていたんじゃぞ?そうしたらただの暴行罪では済まんぞ?ワシの知ってる限り、騒乱罪で中心人物が死刑になったことだってあるんじゃ!」
「はいはい、すいません!」
「何が『はいはい』だ!もっと反省をしろ!何度も言うが、探索者同士のケンカはご法度じゃからな!」
「それを言ったら、そもそも今回はあっちの方がココロにケンカを売ってきたんだぜ?」
「うるさい!ケンカを売られても買うなって言っとるんじゃ!両方に罪が被せられるんじゃぞ!」
「はいはい、すいませんでした」
「それで謝っとるつもりか!」
強い剣幕のマルコに、アルマがロキを庇うように言葉をかける。
「マルコさん、ロキさんはココロちゃんを守ってくれたんですから、それくらいで許してあげてください」
「う……ううむ……」
「そうだよ。ロキは悪くないよ」
アルマだけでなくココロもロキを庇うと、マルコは言葉に詰まった。
「まあ、レギオンを移籍するということは、こういうトラブルが起こりやすい。移籍してしまったものは仕方がないが、今後は気を付けるようにな。それよりアルマの方は大丈夫なのか?前のレギオンの奴らから何かされたりはしとらんか?」
「私ですか?私の方はあんまり気にされてないみたいです。昨日寮に荷物を取りに戻った時も、レギオンのロイダさんって人のパーティーが帰ってないって騒ぎになっていて、私のことを気にする人はいませんでした」
「ロイダって、あのモンスタートレインババアか?」
「えっと、あの……その人です」
『モンスタートレインババア』というあだ名に一瞬どう返答したらよいか迷うが、言ってる意味は理解できるため肯定するアルマ。
ロキはそんなアルマの躊躇を気にすることなく話し続ける。
「帰って来ないってことは、おそらく全滅したんだろうな。あんな探索の仕方してちゃ、いずれ死ぬだろうって思ってたぜ。だんだん実力が付いてくると、自信過剰になるやつがいるんだ。こないだだってモンスタートレインを人のせいにしてただろ?自分のミスに気づけないんだから、何度でもミスし続けるに決まってる」
死んだだろうという言葉を聞き、悲しげな表情を浮かべるアルマ。
マルコもロキの推測に同意する。
「ワシはロイダという人間の事は知らんが、帰って来ないというなら確かに死んでる可能性は高いな。あまり推測でものを言うもんではないが。階層転移が発見された今は、昔みたいに迷宮内で夜を明かすことはなくなったしのう」
「そう言えば昔は迷宮で寝泊まりしてたんですよね?夜ってどうしてたんですか?」
迷宮の中にも昼と夜がある。迷宮の中は自然の洞窟と違い、日中は謎の明かりによって照らされているのだ。そして日没とともに迷宮の中も暗くなり、魔物に襲われる危険性が上がる。
現在では各階層の入口の部屋で転移ができることが発見されたため、日が暮れる前に地上へ戻り、また翌朝続きの階層から探索しなおすという活動がされるようになった。
しかし階層転移ができることが知られていなかった時代は、迷宮内で寝泊まりをし、一回の探索で何日もかかっていたという。そのため荷物も必然的に多くなり、そしてそれほど深くまでの探索はできていなかった。
マルコが現役だった頃は、そんな不便な時代だった。
「夜はキャンプを張って、交代で寝てたんじゃ。誰か見張りがいないといつ襲われるか分からんかったからな。そのうち魔物が現れることのない安全地帯とかも発見されるようになったが、それでも心配だったから、見張りは必ずいたもんじゃ」
「うわー、24時間労働、超ブラックじゃん!」
「ブラックってどういう意味じゃ?」
「劣悪な労働環境ってことだよ。俺はホワイトな環境を目指すから!」
「よくわからんが、ワシらのころはそれが普通だったんじゃ。それが悪いかどうかは関係なくな」
老人の中には、今の若いやつらは、みたいな言い方をする者もいる。だがマルコはそういう言い方をするタイプではなく、今は今で昔より深層を探索する大変さがあることを知っているし、自分たちの時代の自慢をすることもなかった。
「まあ話ばかりしてても仕方ない。探索を続けよう。ロキ、早く魔物を見つけんか!」
「えー?!そんな急に言われても」
「魔物だったらあっちの方にいるよ」
「え?」
魔物がいるとココロが指差した方を全員が見る。だがそこに魔物の影は見当たらない。
念のためロキは地面に耳を当て、足音に聞き耳を立てる。
だがロキの耳には魔物の足音は聞こえてこなかった。
「ココロ、魔物を探す時はまずは音を聞くんだ。そして次に目でその姿を探す。まだ魔物は近くにはいないぞ」
「近くじゃないよ。あっちの方にいるんだよ」
「え?」
ロキはもう一度ココロが指さす方向を眺める。だがロキには魔物がいるかどうかは分からなかった。
「ココロ、なんであっちに魔物がいると思う?」
「だってあっちの方にザワザワした感じがするもん」
「ザワザワ……?」
言ってることが全く分からないロキが困惑していると、マルコが口をはさむ。
「よし、行くぞロキ!」
「は、はあ」
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