迷宮探索者の憂鬱

焔咲 仄火

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Phase 1 生まれ変わってもブラック会社に勤めていた迷宮探索者の憂鬱

第40話 来訪者

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 その日、朝早くからレギオンを尋ねてくる者がいた。
 元気よく玄関をノックする声に呼び出され、ロキが扉を開ける。

「ん?」

 ロキの視界には人の姿がなく、一瞬だれもいないように感じてしまう。

「おい!」

 と思ったら下から声がした。視線を下におろすと一人の背の低い男がいた。
 パッと見、少年のように見えるが、貴族風の豪華な服をきた不思議な雰囲気の男だ。

「だ……誰?」

 みすぼらしい姿の子供であれば、いたずらかと思ったかもしれない。
 だがその身なりに違和感を覚え、ロキは混乱する。
 発展しているとは言え、迷宮都市は荒くれが集まる街だ。上流階級の貴族がむやみに歩き回るような土地ではない。これが王都のような都会であれば、このような姿をしている貴族の姿は珍しくはないかもしれないが、なんでこんな街にこんな若者が現れたのだろうか?という疑問がロキの頭の中によぎり、言葉を失ってしまった。

「ここにココロという女性がいると聞いた」

「え?ココロの知り合い?っていうと、もしかしてお前もハーフリング?」

「もしかしなくても私はハーフリングだ。姫様はここにいるんだな?」

「姫様?って誰のこと?」

「この期に及んで、しらばっくれるんじゃない!さっきいると言ったじゃないか!」

「ごめんちょっと話が見えてこないんだけど?」

「貴様!姫様を匿っているのか?!」

「ちょっと待てって!ココロを呼べばいいのか?今呼ぶからちょっと待ってくれ。おーいココロ!」

「なにー?」

 奥から声がすると、すぐにココロが姿を現す。
 その姿を見た来訪者は、大きな声で叫んだ!

「姫様!見つけましたよ!」

「げ!アポロ!」

 ココロはすぐにUターンをして、奥へと逃げだす。

「お待ちください!」

 アポロと呼ばれた男は、そう言ってレギオン社屋へと勝手に入ってココロを追いかけた。
 ロキが絶句していると、奥からバタバタ騒がしい音が聞こえてきて、とりあえず後を追って二人のところへ行くことにした。

「何ですかその恰好は?!迷宮探索者の真似事ですか?はしたない。全くどこで何をしているか心配していたんですよ!」

 一方的に喋るハーフリングの男アポロに、ココロが圧倒されていた。
 ココロを害する敵というわけではなさそうだが、ココロも困った顔をしていたので助け舟を出すことにした。

「ちょっと、ココロの知り合いみたいだけど、勝手に中に入られちゃ困るな」

「失礼した。姫様をずっと探していたので、逃げられては困ると思ってな。おっと、自己紹介が遅れたな。私はハーフリングの国、ビットランド王国でで王室付執務係をしておりますアポロイオン・ヘクトミスピペット・イクスオリオンという。こちらのココロククルミノフローレス・ミント・フィフスエイルハイマー姫が小さいころから面倒を見させてもらっている」

「ココロククル……なんて?」

「ココロククルミフノ……」

「噛んだ?」

「なんだ失礼だな!」

「つーかさっきなんつった?ココロのことを姫っつったの?」

「貴様、さっきから姫様の名前を気安く呼んで、失礼な奴だな!」

「いやいや、突然人様の会社に乗り込んで騒ぎ立てる奴の方が失礼だと思うけど。まあいいや、これからみんなで朝食を食うところだったんだ。良かったらあんたも一緒にどうだ?飯食いながら事情を説明してくれ」

★★★★★★★★

 レギオンの食卓をロキ、ココロ、アポロ、アルマ、レオンの五人みんなで囲む。

 ココロとアポロのことを聞く。

「アポロ、なんでここ分かったの?」

「これですよ」

 アポロはそう言って、懐から一枚の手紙を出す。

「姫が陛下へ向けて書いた手紙です。手紙を届けた者を問い詰めて、この街から送られてきたことが分かりました。この街ではハーフリングは珍しいようですから、迷宮探索者ギルドに行って聞いたらすぐに分かりましたが」

 わからないって言ったじゃんとアルマの顔を見るココロ。アルマはごめんと謝る。

「そんなことよりも姫!迷宮探索などという野蛮なことをしているのですか?今すぐお帰りください!みんな心配しているのですよ!」

「やだ、帰りたくない」

「どうしてですか?」

「帰っても楽しくない。ここは楽しいもん」

「迷宮探索が楽しい?何を言っているのですか?そんな野蛮なことを楽しいだなんて……」

「分かるわココロちゃん。最近楽しいよね」

「うん!」

 アルマに言われてうれしそうにうなずくココロ。
 アポロはわなわなと震えだす。

「そうは言っても姫様のような華奢な女性では他の皆の迷惑になっているはずです」

「そうでもないぜ?ココロの索敵能力は俺以上だし、すごく助かってるぜ?」

「でも、魔物と戦うには力が足りないでしょう?」

「だから戦闘は俺が担当で、二人には非戦闘員として後ろで待機してもらってるんだ」

「そんな話聞いたことありません。普通全員で戦うものでしょう?」

「俺らは役割分担があるんだ」

「……分かりました。そこまで言うなら、私が確かめさせてもらいます」

「どういうこと?」

「私も一緒に迷宮を探索させてもらいます。姫様が本当に役に立っているのか?そのうえで姫様に危険があるようであれば見過ごすことはできません。私と一緒に国へと帰ってもらいます」

「ココロが役に立っていて、危険もないなら帰らなくていいってこと?」

「そ、そういうことではなく……」

「よし!ココロが頑張ってる姿をこいつに見せつけてやろうぜ!」

「うん、分かった」
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