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Phase 1 生まれ変わってもブラック会社に勤めていた迷宮探索者の憂鬱
第42話 隠し部屋
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扉を開けるとそこには三体のオークがいた。
「うわ!」
アポロが驚きながらもココロを庇おうと前に立つ。
「大丈夫だよ」
ココロにそう言われ前方を見ると、ロキが一人で前に飛び出てショートソードでオークたちに襲い掛かっているところだった。
棍棒を振り回すオーク。素早くかわしながら攻撃を繰り返す。
厚い脂肪で急所を狙いにくいが、ロキの攻撃を何度も受けて動きが鈍くなったところで飛び込んで脳天に一撃をくらわすと一体目が絶命する。残り二体も大雑把に振り回す棍棒はロキには当たらない。ロキの一方的な攻撃で残りのオークたちも絶命した。
「ロキさん回復は要りますか?」
「大丈夫だ。どんくさいオークの攻撃なんか当たらないからな」
アルマとロキのやりとりを横目に、アポロは考え込んでいた。
「……」
「どうしたアポロ」
「オーク三体を相手に一人で倒すなんて、大したものだな。そうか、やはり貴様は剣士だったか。とすると魔法の方は適性があるというだけで、そこまで得意ではないな?」
「その通りだ。魔法を本格的に修行し始めたのは最近だからな」
「まあ剣の腕は認めよう。だが私は土魔法も弓も一流だ。つまり私の勝ちだな」
「なんでそんなに敵対意識燃やしてんの?」
その後もココロが索敵し、魔物と遭遇するとロキが一人前に出て戦いながら、迷宮の探索が続いた。
アポロは出番が少なく、少しもどかしそうにしていた。
「いつもこういう感じなのか?」
「ああ、まあそうだな。俺の魔法の練習の時とか魔法使いのマルコさんがいる時は、もっと魔法で攻撃するんだけど」
「そうか。まあ姫さまにはあまり危険が及ばなさそうで、少しは安心した」
「だから言ってるじゃん」
「しかし姫様、先ほどから的確に魔物の位置と個体数を当ててますが、なぜ分かるのですか?」
「えー?なんとなく?」
「なんとなく?!」
「あれ?ハーフリングの種族特性じゃないの?」
「バカなことをいうな!確かに人間族と比べたら感覚は鋭敏かもしれないが、先ほどから姫さまが魔物の居場所を言い当てているのは異常だ。そんな特技があったとは私も知らなかった」
「やっぱすげえなココロ」
「まあな」
「それじゃココロが迷宮探索者を続けるのを認めてくれたってことか?」
「バカな!それとこれとは別だ!」
「頑固だなあ……」
話しながら歩いていると、何もない場所で先頭を歩いていたココロが立ち止まった。
「どうした?」
「あの辺なんか変」
そう言ってココロが指さしたのは、何の変哲もない壁だった。
「隠し扉でもあるのか?」
そう言ってココロが指さした場所へと歩み寄るロキ。
「姫さま、何が変なのですか?」
「うーん……、わかんないけど他の場所とちょっと違う気がする」
「?」
「罠はないみたいだし、隠し扉とかもなさそうだけど……。ミノタウロスの部屋のこともあったし、何かあるのかもなあ?」
ロキはそう言いながら壁を調べ続ける。
他の三人も離れてその姿を見ている。
「姫さまのきまぐれに付き合う必要はないのだぞ……」
そんなアポロの言葉に耳を傾けることなく、念入りに壁を調べるロキ。
規則正しく積み重ねられているレンガのような石でできた壁を、軽くたたく。
何か気になったようで、何か所かをたたいて確かめる。
「この向こう側に空洞があるな」
「なんだと?隠し部屋か?」
「でもどこに入口があるのやら……」
ロキはそう言うと、腰に差したショートソードを壁に突き刺し始めた。
「ここ崩せるぞ?!」
ガシガシと壁を削ってゆく。だが剣ではあまりに効率が悪い。
「だれかツルハシ持ってないか?」
「あるわけないじゃないですか~」
アルマから当たり前の返答が返ってくる。
「その壁を破壊すればいいのか?」
「そうだけど、何かいい方法があるのか?」
「私の魔法の腕を見せてやろう。危ないから下がってろ」
アポロにそう言われ、一時壁から離れるロキたち。
後方にアルマとココロ、間にロキが立つ。
そしてアポロの呪文詠唱が始まった。
「≪機銃石弾≫!」
アポロの前方に大量の石の塊が発生し、それぞれが猛スピードで前方に発射された。
ズダダダダ……と激しい轟音と共に迷宮の壁にさく裂してゆく。
壁が崩れると同時に大量の土煙が辺りを覆う。
土煙がロキの元に到達する前に、ロキが魔法を唱えた。
「≪空気障壁≫」
目の前に現れた見えない空気の壁で土煙は遮られ、ロキたちは煙に巻き込まれずに済む。
だがその空気の壁よりも向こうにいたアポロが煙に包まれ、慌てて口元を押さえながらロキたちの元へと走ってきた。
「はあはあ……こんな便利な魔法があるなら、なぜ私の前に展開してくれないのだ!」
アポロが少しキレ気味に言う。
「いや、お前の方こそ、今の魔法使ったらこうなるって先に気づけよ」
「それにしても何だこの魔法は?」
「毒ガスとかを防ぐ魔法だ。使う機会はほとんどなかったけどな」
「貴様、風魔法を使えるのか?土魔法を使えると言っていたのは嘘か?」
「土魔法も使えるよ」
「バカな?風と土や水と火は相対するエレメントだ。相対する両方の魔法が使える魔法使いなんて稀なんだぞ」
「だからその稀なケースだよ」
「はあ?」
「そんなことより、まだ壁は貫通してないな……」
土煙が少しずつ薄くなりアポロの魔法で崩れた箇所が見えてきたが、まだ壁の向こう側は見えていなかった。
「俺も今見せてもらったやつ真似させてもらうぜ」
「バカを言うな、見てすぐできるようなものじゃ……」
「≪機銃石弾≫!」
ロキの目の前に多数の石が現れ、そしてアポロが放った時と同じようにそれらは猛スピードで壁へと放出された。
ドドドドという音と共に壁が崩れ、そして土煙が収まると、先ほどココロが違和感を感じたという壁の部分は崩れ、向こう側に続く通路をが見えた。
「やっぱ壁の向こう側があったな。行ってみよう!」
そう言って崩れた壁の瓦礫を乗り越えて進むロキにココロが続く。
唖然としているアポロにアルマが声をかけた。
「大丈夫ですか?」
「魔法は得意じゃないんじゃなかったのか……?」
「うわ!」
アポロが驚きながらもココロを庇おうと前に立つ。
「大丈夫だよ」
ココロにそう言われ前方を見ると、ロキが一人で前に飛び出てショートソードでオークたちに襲い掛かっているところだった。
棍棒を振り回すオーク。素早くかわしながら攻撃を繰り返す。
厚い脂肪で急所を狙いにくいが、ロキの攻撃を何度も受けて動きが鈍くなったところで飛び込んで脳天に一撃をくらわすと一体目が絶命する。残り二体も大雑把に振り回す棍棒はロキには当たらない。ロキの一方的な攻撃で残りのオークたちも絶命した。
「ロキさん回復は要りますか?」
「大丈夫だ。どんくさいオークの攻撃なんか当たらないからな」
アルマとロキのやりとりを横目に、アポロは考え込んでいた。
「……」
「どうしたアポロ」
「オーク三体を相手に一人で倒すなんて、大したものだな。そうか、やはり貴様は剣士だったか。とすると魔法の方は適性があるというだけで、そこまで得意ではないな?」
「その通りだ。魔法を本格的に修行し始めたのは最近だからな」
「まあ剣の腕は認めよう。だが私は土魔法も弓も一流だ。つまり私の勝ちだな」
「なんでそんなに敵対意識燃やしてんの?」
その後もココロが索敵し、魔物と遭遇するとロキが一人前に出て戦いながら、迷宮の探索が続いた。
アポロは出番が少なく、少しもどかしそうにしていた。
「いつもこういう感じなのか?」
「ああ、まあそうだな。俺の魔法の練習の時とか魔法使いのマルコさんがいる時は、もっと魔法で攻撃するんだけど」
「そうか。まあ姫さまにはあまり危険が及ばなさそうで、少しは安心した」
「だから言ってるじゃん」
「しかし姫様、先ほどから的確に魔物の位置と個体数を当ててますが、なぜ分かるのですか?」
「えー?なんとなく?」
「なんとなく?!」
「あれ?ハーフリングの種族特性じゃないの?」
「バカなことをいうな!確かに人間族と比べたら感覚は鋭敏かもしれないが、先ほどから姫さまが魔物の居場所を言い当てているのは異常だ。そんな特技があったとは私も知らなかった」
「やっぱすげえなココロ」
「まあな」
「それじゃココロが迷宮探索者を続けるのを認めてくれたってことか?」
「バカな!それとこれとは別だ!」
「頑固だなあ……」
話しながら歩いていると、何もない場所で先頭を歩いていたココロが立ち止まった。
「どうした?」
「あの辺なんか変」
そう言ってココロが指さしたのは、何の変哲もない壁だった。
「隠し扉でもあるのか?」
そう言ってココロが指さした場所へと歩み寄るロキ。
「姫さま、何が変なのですか?」
「うーん……、わかんないけど他の場所とちょっと違う気がする」
「?」
「罠はないみたいだし、隠し扉とかもなさそうだけど……。ミノタウロスの部屋のこともあったし、何かあるのかもなあ?」
ロキはそう言いながら壁を調べ続ける。
他の三人も離れてその姿を見ている。
「姫さまのきまぐれに付き合う必要はないのだぞ……」
そんなアポロの言葉に耳を傾けることなく、念入りに壁を調べるロキ。
規則正しく積み重ねられているレンガのような石でできた壁を、軽くたたく。
何か気になったようで、何か所かをたたいて確かめる。
「この向こう側に空洞があるな」
「なんだと?隠し部屋か?」
「でもどこに入口があるのやら……」
ロキはそう言うと、腰に差したショートソードを壁に突き刺し始めた。
「ここ崩せるぞ?!」
ガシガシと壁を削ってゆく。だが剣ではあまりに効率が悪い。
「だれかツルハシ持ってないか?」
「あるわけないじゃないですか~」
アルマから当たり前の返答が返ってくる。
「その壁を破壊すればいいのか?」
「そうだけど、何かいい方法があるのか?」
「私の魔法の腕を見せてやろう。危ないから下がってろ」
アポロにそう言われ、一時壁から離れるロキたち。
後方にアルマとココロ、間にロキが立つ。
そしてアポロの呪文詠唱が始まった。
「≪機銃石弾≫!」
アポロの前方に大量の石の塊が発生し、それぞれが猛スピードで前方に発射された。
ズダダダダ……と激しい轟音と共に迷宮の壁にさく裂してゆく。
壁が崩れると同時に大量の土煙が辺りを覆う。
土煙がロキの元に到達する前に、ロキが魔法を唱えた。
「≪空気障壁≫」
目の前に現れた見えない空気の壁で土煙は遮られ、ロキたちは煙に巻き込まれずに済む。
だがその空気の壁よりも向こうにいたアポロが煙に包まれ、慌てて口元を押さえながらロキたちの元へと走ってきた。
「はあはあ……こんな便利な魔法があるなら、なぜ私の前に展開してくれないのだ!」
アポロが少しキレ気味に言う。
「いや、お前の方こそ、今の魔法使ったらこうなるって先に気づけよ」
「それにしても何だこの魔法は?」
「毒ガスとかを防ぐ魔法だ。使う機会はほとんどなかったけどな」
「貴様、風魔法を使えるのか?土魔法を使えると言っていたのは嘘か?」
「土魔法も使えるよ」
「バカな?風と土や水と火は相対するエレメントだ。相対する両方の魔法が使える魔法使いなんて稀なんだぞ」
「だからその稀なケースだよ」
「はあ?」
「そんなことより、まだ壁は貫通してないな……」
土煙が少しずつ薄くなりアポロの魔法で崩れた箇所が見えてきたが、まだ壁の向こう側は見えていなかった。
「俺も今見せてもらったやつ真似させてもらうぜ」
「バカを言うな、見てすぐできるようなものじゃ……」
「≪機銃石弾≫!」
ロキの目の前に多数の石が現れ、そしてアポロが放った時と同じようにそれらは猛スピードで壁へと放出された。
ドドドドという音と共に壁が崩れ、そして土煙が収まると、先ほどココロが違和感を感じたという壁の部分は崩れ、向こう側に続く通路をが見えた。
「やっぱ壁の向こう側があったな。行ってみよう!」
そう言って崩れた壁の瓦礫を乗り越えて進むロキにココロが続く。
唖然としているアポロにアルマが声をかけた。
「大丈夫ですか?」
「魔法は得意じゃないんじゃなかったのか……?」
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