迷宮探索者の憂鬱

焔咲 仄火

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Phase 1 生まれ変わってもブラック会社に勤めていた迷宮探索者の憂鬱

第43話 意外とバランスよいパーティーなのかもしれない

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 ロキたち四人は、破壊した迷宮の壁の向こう側に発見した隠し通路を進む。
 迷うことなく続く一本道を進むと、広い空間に出た。
 正面には祭壇のような場所があった。

「おお!何かお宝がありそうな場所じゃないか!」

「気をつけろよアポロ」

 辺りを警戒するココロよりも先に、その場所へ向かおうとするアポロ。
 10段くらいある階段を上り始めた時、階段の横にいた石像が動き出した。

「ガーゴイルだ!」

 ロキの声にアポロも反応する。
 アポロはとっさに魔法を唱えた。

「≪石弾ストーンバレット≫!」

 前に掲げた手のひらの先に発生した石に塊が、ガーゴイルに向けて発射される。
 だが、ガーゴイルに激突したはずの石弾は、ゴン!という音とともに跳ね返され、何のダメージを与えている様子もない。

「≪火球ファイヤーボール≫!」

 ロキも火球をガーゴイルに放つ。
 だが放たれた火球もガーゴイルの体表ではじけ飛び、やはりダメージを与えられていないようだ。

「ココロは下がってろ!アルマ頼む」

「うん!」「はい!」

 二人を安全地帯へと下がらせ、ショートソードを構えて走りだすロキ。
 アポロを襲おうとしていたガーゴイルも、火球を放ったロキを見て狙いを変える。
 ガーゴイルが空を飛びながら一直線にロキへと向かってくる。
 ロキはそんなガーゴイルに向かって、思い切り上段から剣を振り下ろした。
 振り下ろされる剣を右腕で防御しようとするガーゴイル。石でできていてとても硬い腕だったが、ロキの一撃で激しく砕かれた。

「今回は武器の選択が功を奏したな」

 今ロキが使っているショートソードは鋳造でできており、鈍器のようなものだ。切ることに特化した刃先の鋭い剣であったら折れていただろう。
 片腕を砕かれたガーゴイルは、上空に上昇して、ロキを警戒している。

「アポロ大丈夫か?」

「ああ」

 ロキがすぐに駆け寄ったため、アポロは攻撃されずにすんだようだ。

「怪我したらすぐにアルマに見てもらえよ」

「ああ。しかし、あの魔物、魔法が一切効かないようだが……」

「ガーゴイルは魔法耐性が異常に高い。魔法でできた石弾や火球では傷つけることはできないようだ」

 アポロはロキの剣を見ながらつぶやく。

「物理なら有効なのか」

「そのようだな。だけど参ったな。空を飛ばれてちゃ、いつまで経っても戦闘が終わらない。もう一度攻撃してきてくれればいいんだが……」

「地面に落とせばいいんだな?」

 アポロはそう言って背負っていた弓を手に持ち構える。

「あれは石だぜ?弓矢じゃさすがに傷つけるのは難しいだろう?」

 ロキの言葉を無視し、集中して弓を絞るアポロ。そして矢を放った。
 弓に備わった風の魔法で、矢は加速する。そして見事ガーゴイルの羽に的中し、羽に穴を開けると姿勢を崩したガーゴイルはバタバタ羽を羽ばたかせるも、無様にも地面へと落下した。
 その隙をロキが逃すはずなく、矢が当たった瞬間に走りだしていた。落下したガーゴイルは逃げる余裕もなく、振り下ろされたロキの剣に、頭部を破壊され、その姿を魔石へと変えた。

「なかなかやるなアポロ!」

 振り返るロキの視線に、高速で空を飛ぶ物体の姿があった。
 もちろんアポロもそれを視界にとらえており、慌てて迎撃態勢を取る。
 空を飛ぶそれは、もう一体いたガーゴイルだった。

 先ほどは狙いを定められたアポロの弓矢だったが、急な襲撃に今度は狙いを定める余裕がない。
 慌てて放った矢は交わされ、ガーゴイルの飛行速度は落ちることがない。

「しまった!」

 アポロのその声は自分が攻撃されたからではない。アポロの頭上を越えてガーゴイルが飛んで行ったからだ。
 先ほど仲間が倒されたのを見て、アポロとロキは強敵と判断したに違いない。そのため後方に控えている、弱そうな二人を狙っているのだ。

「姫様!」

 アポロは狙われたココロを心配し声を上げる。
 アポロにはもう一度攻撃する余裕はなく、ココロたちへと襲い掛かるガーゴイルの後姿を見ることしかできなかった。
 と、次に瞬間、突然空中で見えない壁にぶつかったガーゴイルは跳ね飛ばされて地面へと落下する。
 地に落ちたガーゴイルは、何が起きたか分からずキョロキョロとしていた。
 混乱しているガーゴイルの元へ駆けてきたロキが一撃をくらわすと、その二体目のガーゴイルも絶命し、煙と共に消え魔石へと姿を変えた。
 助けに来たロキにアルマとココロは、ありがとうという礼を言うのであった。

「さっきのは何だ?」

 三人の元に来たアポロは開口一番尋ねた。

「さっきのというと……」

「ガーゴイルが空中で跳ね返ったあれだ!あれもお前の魔法なのか?」

「いや、あれがアルマの結界だ。アルマが結界を意識している間は、その中に魔物は入って来れないんだ」

「そんな無茶苦茶な……」

「そう。無茶苦茶チートなんだ」

★★★★★★★★

 祭壇を守っていた二体のガーゴイルを倒すと、ここに他の魔物はいないようだった。
 警戒しながら階段を上っていくが、何の罠も仕掛けもない。
 階段の先には三つの宝箱が置かれていた。
 ロキが警戒しながらそれぞれを足で押す。

「困ったな……」

「どうした?」

「どれも結構中に入ってる。全部お宝だとしたら、一度じゃ持ち帰れないぞ」

「また取りに戻ればいいだろう?」

「迷宮を探索しているのは俺たちだけじゃないんだ。さっき壁を壊した音を聞いて集まってくる奴らがいるはずだ」

「だが、ガーゴイルを倒したのは我々だぞ!」

「他の奴が魔物を倒した先を探索していけないというルールはないんだよな。まあいい。だからどれか一つだけ選んで持っていこう。ココロどれがいいと思う?」

「うーん、じゃあ右の」

「なぜ姫様に選ばせるのだ?」

「俺たちの中じゃ、ココロが一番勘が鋭いんだよ。じゃあココロ、開錠も頼むな」

「うん」

 そう言うと、ココロはバッグから針金を取り出し、恐る恐る宝箱の鍵穴にそれを差し込む。
 すると、突然鍵穴から針が飛び出した。

「うわ!危ない!姫様お怪我はないですか?」

「大丈夫」

「鍵穴をのぞき見していたら、目をつぶされてたな」

「貴様、何をそんなに冷静に!姫様がお怪我をするところだったのだぞ!」

「もちろんむやみに鍵穴を覗いてはいけないとかいうことは教えてあるんだ。大丈夫だよ、ココロは器用だからすぐにカギを開けてくれる……」

「開いた!」

「にしても早いな……」

 宝箱を開けた時に飛び出す罠もあるため、開口部に体を置かないようにし、警戒しながらふたを開けるが、それ以上の罠はないようだった。
 宝箱の中には黒い鉱石がごろごろと入っていた。

「なんだこれは……石?」

 アポロが不思議がるが、ロキはそれを一つ手に取って見つめる。

「多分、黒鋼鉄だな。鋼鉄よりも硬くて軽い不思議な鉱石だ。この世界には前世じゃ聞いたことない鉱石がいろいろあるんだよな……。ともかくこれは武器の材料として高く売れる。持てるだけ持って帰ろう」

「他の二つはどうする?もっと良いものが入ってるかもしれないぞ?開けるだけ開けて持ち帰るものを選んだらどうだ?」

「いや、そこまでしなくていいだろう」

 そうこうしているうちに、ロキが予測した通り、他の探索者パーティーがやってきた。
 他の探索者が見つけた財宝を横取りするのはマナー違反だが、ロキが挨拶を交わして簡単に情報交換を行い、持ち切れないから残りの宝箱を譲ると伝えると、ロキたちはギルドへと帰還をした。
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