迷宮探索者の憂鬱

焔咲 仄火

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Phase 1 生まれ変わってもブラック会社に勤めていた迷宮探索者の憂鬱

第44話 アポロの判断

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 ギルドに戻ったロキたちは、探索結果の報告をすると共に手に入れた黒鋼鉄を換金する。
 ロキはアポロに一連の流れを説明しながら手続きを行い、そして最後にこう尋ねた。

「まあまあ良い金になったな!アポロ、これで探索は終了だ。俺たちは毎日こんな感じで探索を行っているんだ。ところでアポロ、お前も迷宮探索者になって、これからも俺たちと一緒に探索をしないか?」

「は?」

「お前の弓の腕はなかなか大したもんだ。それに魔法もすごい、できたら俺におまえの土魔法を教えてほしい。今俺に魔法を教えてくれるマルコさんって人も週3で一緒に探索しているんだが、マルコさんは高齢なんでいつまで一緒にやれるか分かんないんだ。レギオン運営に最低でも5人はいないといけないんだけど、お前が入ってくれたらマルコさんが迷宮探索できなくなってもレギオンを解散しないで済むし、お前がウチのレギオンに入ってくれれば助かることばかりだ」

「それはお前の都合だろう?私には何のメリットもない。それにそもそも私は姫様が迷宮探索者を続けることを認めた覚えはない!」

「えっ?ダメなの?」

「当たり前だ!姫様に危険が及ばないようにしていることと、姫様がお前たちの役に立っていることは認めるが、この仕事が家出してまでしなきゃいけないことだとは思わん!絶対にダメだ!」

「だって危険じゃなくて役に立てているなら認めてくれるって言ったじゃねえか!」

「言ってない!」

「……そういえば言ってないな」

「ロキ~!」

 言い合いに負けるロキに、ココロが助けを求めるような声を上げる。

「さあ姫様!国に帰って国王陛下に謝罪しなさい!」

「やだ~!」

 そんな感じでロキたちがギルド内で騒いでいると、そんな姿を見つけた一人の男が話しかけてきた。

「あの……もしかしてココロさんですか?」

「そうだよ?おじさんは誰?」

「やっぱり!ハーフリングは珍しいからそうだと……。すいません、私は旅商人をしている者です。実はココロさん宛に手紙を預かっておりまして、受け取りのサインをいただけますでしょうか?」

「わたしに手紙?」

 聞くとココロに手紙を渡したというサインをもらって差出人に提出すると、追加料金をもらえるという。
 配達記録を残す郵便局の書き留めみたいなもんか。この世界でもそういう仕組みがあるんだな。
 などとロキが考えていると、ココロが差出人の名前を見て驚いていた。

「父上からだ!」

「え?ココロちゃんのお父さんっていうと、王様?」

「そうだよ」

「なんて書いてあるの?」

「待ってて。今読む」

 ココロが手紙を読んでいる間、パーティーに沈黙が流れる。

「陛下もお怒りのようですね。おそらく早く帰ってこいと書いてあるのでしょう」

 アポロの勝ち誇った顔に、ロキたちは何も言い返せなくなる。
 アポロだけでなく、ココロの父親であるハーフリングの国の国王にもココロの居場所はバレていたようだ。
 帰ってこいと言われたら、それはココロだけの問題でなくココロの家族の問題でもある。
 ロキだってこれからもココロと一緒に迷宮探索者を続けていきたいとは思っているが、それはロキたちが強制できるものではない。
 ココロは親に逆らってこれからも迷宮探索者を続けるか、それとも親に従って国に帰るのか、自分自身でどちらかを選択しなくてはいけない。
 するとココロから想定外の発言があった。

「えっとね、アポロはクビだって書いてある」

「はあ?何でたらめ言ってるんですか?!」

「見ていいよ」

 突然そんな事を言われて取り乱したアポロは、ココロから手紙を奪い取るように受け取り、そして食い入るように読みだした。

「なんて書いてあったんだ?」

「そんなバカな……」

 放心状態のアポロから手紙を受け取り、ロキも読み始める。

「何々……、ココロよ、手紙を送ってくれてありがとう。おまえがが家出してからというもの、私も王妃もずっと心配をしていたのだぞ。だが元気そうで安心した。おまえが城での生活に対して、そこまで窮屈に感じていると気づかなかった父を許してほしい。私も王妃もおまえが健やかにすごしてくれているというのなら、何も言うことはない。これからも体に気を付けて頑張るがよい。たまに手紙を送って近況を知らせてくれ……」

「お父さんはココロちゃんの事を認めてくれたのね?」

「うん!」

 アルマとココロが笑顔で向き合う。
 ロキは手紙の続きを読み続ける。

「ところで、おまえからの手紙が来たことをアポロに伝えたところ、あやつはワシから手紙を奪い取って突然城を出て行った。おそらくお前のところに行くつもりであろう。迷惑をかける。アポロに会ったらこう伝えてほしい。仕事を突然投げ出して出て行くような奴に、王室付きの仕事は任せられん。今日を持って貴様を王室付執務係の職務から解雇する。二度とワシの前に顔を出すな、と」

「ぷぷっ」

 思わず笑ってしまうアルマの横で、アポロはこの世の終わりのような顔をしていた。
 ロキもニヤニヤした笑みを浮かべながらアポロに声をかける。

「もう戻ってこなくて良いんだってよ」

「そんなバカな……こんなにも忠義を感じているというのに……」

「気持ちじゃなくて行動だろ?勝手に仕事を投げ出すようなやつはいらないだろそりゃ(ニヤニヤ)」

「姫様!姫様からも陛下に取り次いでください!」

「やだ。面倒くさい」

「そうだ、ロキよ!おまえさっき私を仲間にしたいと言っていたな?仕方がない、こうなったら私も迷宮探索者となって姫様の傍でお守りしよう。おまえのレギオンに入ってやろう」

「いや、やっぱいいや」

「なんでだ?!」

「なんとなく……」

「私が仲間になってやると言ってやってるんだぞ!」

「その感じが嫌なんだよな~。仲間にしてくださいって頭を下げるなら考えてやってもいいけど」

「なんでだ?さっき仲間になってくれって言ったのはお前じゃないか!」

「さっきはね。でも今はお前帰る場所がなくなって困ってるじゃん?」

「私の立場が弱くなったらといって、急に強気になるんじゃない!姫様からもこいつに何か言ってやってください!」

「私もアポロと一緒は嫌」

「姫様~!」

「まあまあロキさん、ココロちゃん。アポロ君の気持ちも考えてあげようよ。アポロ君はココロちゃんの事が大好きでここまで追いかけてきたんだよ」

「貴様!私はそんなよこしまな気持ちは……」

「私は好きじゃない」

「姫様~?!」

 ロキたちにさんざんからかわれたが、結局アポロはレギオンに加入することとなった。
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