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Phase 1 生まれ変わってもブラック会社に勤めていた迷宮探索者の憂鬱
第58話 遅すぎた忠告
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「ごめんて!」
「もうー!やりすぎですよ!」
先ほどからロキはアルマに謝り倒していた。
「だってやらなきゃ、逆にこっちが殺されてたかもしれないんだぜ?」
「だからって、もうちょっとで全員殺しちゃうところだったんですよ!」
新興レギオン『先導する戦旗』のメンバーに襲われたロキは、魔法で街を破壊してしまうと捕まるのなら街を破壊しなければよいと考え、マルコから教わった魔力操作を駆使し範囲攻撃である上級魔法を凝縮した威力の強い魔法を使った。
最後、上級土魔法『隕石』の凝縮版を試し、下級魔法『石弾』サイズの石を発生させた。それがどれほどの威力かもわからずに相手に打ち込んだところ、見事なスプラッターとなり、とっさにアルマがヒールをかけたおかげで全員一命を取り留めたが、感じた痛みと破壊された装備に、男たちは完全に戦意を喪失していた。
そしてその結果、ロキに対しやりすぎだとアルマが怒っているのだ。
「そういえばレオンさんは!」
思い出してアルマは振り向くと、そこにいたのは大きくなった体から黄金の体毛を生やし、狼の顔をしていたレオンの姿だった。
「え?レオンさん?」
「おいおい、あれだってやりすぎじゃないのか?」
ロキがそう言って見ていたのは、ぼろ雑巾のように血まみれで倒れるアモルファスの姿だった。
「きゃー大変!≪ヒール≫!」
慌ててアモルファスの怪我を癒す。
そして振り返ったレオンにアルマは声をかける。
「あの……レオンさん……ですよね?」
「ああ」
そう返事したレオンの姿は、いつも見ていた容姿とは打って変わって、魔物と見間違う上半身黄金の狼の姿だった。
「アルマはレオンのこの姿見るの初めてだっけ?」
「はい……。あ、レオンさんはお怪我はないですか?」
「怪我したとしても、こいつすぐ治るから大丈夫だよ)
「え?どういうことですか?」
「あれ?話したことなかったっけ?」
「はい」
「アルマにこの姿を見せるのは初めてだったな」
レオンの全身の体毛はぼんやりとした光と共に消失し、その顔は狼の顔から元の精悍な人間の顔へと戻る。
「俺は狼の獣人なんだ。一族の中でも特殊な力を持った金色狼の獣人として生まれた俺は、どんな怪我でも自然に治癒する超回復能力を持っている」
「えっ?レオンさんって人間じゃなかったんですか?」
「まあ、獣人なんてまず見ないもんな。獣化すると戦闘能力が化け物みたいになるっていうだけで、普段は普通の人間と変わらないんだ。だけどいまだに獣人の事を野蛮人と思ってるやつらがいて、偏見の目もあるんだよな」
「すいません。私も全然知らなかったです……」
「まあ、できたら今まで通り接してくれたらありがたいな」
「もちろんです!」
レオンに言われて大きな声で答えるアルマ。
殺されかけて怯えた目でこちらを見ているアモルファスたちは、今後今まで通り接してくることはないだろうが。
その時、この夜の人気のない道に、一人の男の叫び声が響いた。
「う、うわあああ!!!」
誰かに見られた?話を大きくされてはかなわない。どうにか穏便に黙っていてもらえるよう、その男止めなければ。
ロキがそう思って、声のする方を見る。
「ん?」
「あああ!お前は!!!」
「おまえは確か……」
「な、何も見ていません!俺は何も見ていません!」
そこに偶然通りかかったのは、ゴイス。以前ココロがいたレギオンの探索者だ。
ロキにボコボコにされてから、ロキたちの事を異常に怖がっているようだ。
「えっと……名前なんだったっけ?前にココロがいたレギオンのやつだよな?」
「はい、い、いえ、私は皆さんの事は知りませんし、ここで何も見ていません!!魔法を使って人を殺しそうになったところなんて見ていませせんんんん!!」
ゴイスはガクガクと震えながら、見ていたであろう一部始終のことを見ていないと白を切る。
そんな滑稽な姿にロキとレオンは目を合わせて噴き出す。
「見てんじゃねえか!誤解すんなよ。こいつらが夜道で襲ってきたんで、返り討ちにしただけだ。まあ誰かに話されても誰も得しねえし、黙っててくれりゃそれでいい」
「はいっ!何も話しません!」
「クックク……、じゃあな!」
レオンがゴイスの肩をポンと叩くと、ロキたち三人は彼らを残して立ち去って行った。
怯えるゴイスと、ボロボロの鎧を着て倒れているアモルファスたちがその場に残される。
ゴイスはアモルファスたちを見回す。アモルファスたちはアルマの回復魔法によって怪我は完治していたが、あま りの出来事に心神喪失しており無言のままだ。
ゴイスはそんな彼らに向かって一言つぶやいた。
「おい、あいつらにはかかわらない方がいいぞ!」
「忠告するならもっと早く言ってくれ!」
アモルファスは悲しそうな顔で叫んだ。
★★★★★★★★
翌朝。
あんなことがあった翌日だろうと、迷宮探索者の日常は変わることがない。
レオンはいつものように迷宮にもぐるべく装備を整えると、レギオンの二階にある自分の部屋を出た。
昨夜はレギオンに帰ってからもロキとはあまり話をしなかった。
ギルドでアモルファスと喧嘩になった理由は、獣人族をバカにされたからだけではない。おそらく無意識のうちに迷宮探索が滞っている自分自身に苛ついているためだ。それをロキから指摘されて、さらにいらだちが募った。これをどうにかするには、やはり迷宮探索を進めるしかない。
そんなことを考えながらレオンがロビーへと降りてゆくと、そこには先に準備を済ませたロキたちがレオンを待っていた。
「もうー!やりすぎですよ!」
先ほどからロキはアルマに謝り倒していた。
「だってやらなきゃ、逆にこっちが殺されてたかもしれないんだぜ?」
「だからって、もうちょっとで全員殺しちゃうところだったんですよ!」
新興レギオン『先導する戦旗』のメンバーに襲われたロキは、魔法で街を破壊してしまうと捕まるのなら街を破壊しなければよいと考え、マルコから教わった魔力操作を駆使し範囲攻撃である上級魔法を凝縮した威力の強い魔法を使った。
最後、上級土魔法『隕石』の凝縮版を試し、下級魔法『石弾』サイズの石を発生させた。それがどれほどの威力かもわからずに相手に打ち込んだところ、見事なスプラッターとなり、とっさにアルマがヒールをかけたおかげで全員一命を取り留めたが、感じた痛みと破壊された装備に、男たちは完全に戦意を喪失していた。
そしてその結果、ロキに対しやりすぎだとアルマが怒っているのだ。
「そういえばレオンさんは!」
思い出してアルマは振り向くと、そこにいたのは大きくなった体から黄金の体毛を生やし、狼の顔をしていたレオンの姿だった。
「え?レオンさん?」
「おいおい、あれだってやりすぎじゃないのか?」
ロキがそう言って見ていたのは、ぼろ雑巾のように血まみれで倒れるアモルファスの姿だった。
「きゃー大変!≪ヒール≫!」
慌ててアモルファスの怪我を癒す。
そして振り返ったレオンにアルマは声をかける。
「あの……レオンさん……ですよね?」
「ああ」
そう返事したレオンの姿は、いつも見ていた容姿とは打って変わって、魔物と見間違う上半身黄金の狼の姿だった。
「アルマはレオンのこの姿見るの初めてだっけ?」
「はい……。あ、レオンさんはお怪我はないですか?」
「怪我したとしても、こいつすぐ治るから大丈夫だよ)
「え?どういうことですか?」
「あれ?話したことなかったっけ?」
「はい」
「アルマにこの姿を見せるのは初めてだったな」
レオンの全身の体毛はぼんやりとした光と共に消失し、その顔は狼の顔から元の精悍な人間の顔へと戻る。
「俺は狼の獣人なんだ。一族の中でも特殊な力を持った金色狼の獣人として生まれた俺は、どんな怪我でも自然に治癒する超回復能力を持っている」
「えっ?レオンさんって人間じゃなかったんですか?」
「まあ、獣人なんてまず見ないもんな。獣化すると戦闘能力が化け物みたいになるっていうだけで、普段は普通の人間と変わらないんだ。だけどいまだに獣人の事を野蛮人と思ってるやつらがいて、偏見の目もあるんだよな」
「すいません。私も全然知らなかったです……」
「まあ、できたら今まで通り接してくれたらありがたいな」
「もちろんです!」
レオンに言われて大きな声で答えるアルマ。
殺されかけて怯えた目でこちらを見ているアモルファスたちは、今後今まで通り接してくることはないだろうが。
その時、この夜の人気のない道に、一人の男の叫び声が響いた。
「う、うわあああ!!!」
誰かに見られた?話を大きくされてはかなわない。どうにか穏便に黙っていてもらえるよう、その男止めなければ。
ロキがそう思って、声のする方を見る。
「ん?」
「あああ!お前は!!!」
「おまえは確か……」
「な、何も見ていません!俺は何も見ていません!」
そこに偶然通りかかったのは、ゴイス。以前ココロがいたレギオンの探索者だ。
ロキにボコボコにされてから、ロキたちの事を異常に怖がっているようだ。
「えっと……名前なんだったっけ?前にココロがいたレギオンのやつだよな?」
「はい、い、いえ、私は皆さんの事は知りませんし、ここで何も見ていません!!魔法を使って人を殺しそうになったところなんて見ていませせんんんん!!」
ゴイスはガクガクと震えながら、見ていたであろう一部始終のことを見ていないと白を切る。
そんな滑稽な姿にロキとレオンは目を合わせて噴き出す。
「見てんじゃねえか!誤解すんなよ。こいつらが夜道で襲ってきたんで、返り討ちにしただけだ。まあ誰かに話されても誰も得しねえし、黙っててくれりゃそれでいい」
「はいっ!何も話しません!」
「クックク……、じゃあな!」
レオンがゴイスの肩をポンと叩くと、ロキたち三人は彼らを残して立ち去って行った。
怯えるゴイスと、ボロボロの鎧を着て倒れているアモルファスたちがその場に残される。
ゴイスはアモルファスたちを見回す。アモルファスたちはアルマの回復魔法によって怪我は完治していたが、あま りの出来事に心神喪失しており無言のままだ。
ゴイスはそんな彼らに向かって一言つぶやいた。
「おい、あいつらにはかかわらない方がいいぞ!」
「忠告するならもっと早く言ってくれ!」
アモルファスは悲しそうな顔で叫んだ。
★★★★★★★★
翌朝。
あんなことがあった翌日だろうと、迷宮探索者の日常は変わることがない。
レオンはいつものように迷宮にもぐるべく装備を整えると、レギオンの二階にある自分の部屋を出た。
昨夜はレギオンに帰ってからもロキとはあまり話をしなかった。
ギルドでアモルファスと喧嘩になった理由は、獣人族をバカにされたからだけではない。おそらく無意識のうちに迷宮探索が滞っている自分自身に苛ついているためだ。それをロキから指摘されて、さらにいらだちが募った。これをどうにかするには、やはり迷宮探索を進めるしかない。
そんなことを考えながらレオンがロビーへと降りてゆくと、そこには先に準備を済ませたロキたちがレオンを待っていた。
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