迷宮探索者の憂鬱

焔咲 仄火

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Phase 2 なぜか世界の命運を担うことになった迷宮探索者の憂鬱

第66話 ロキは綺麗な女性に弱い

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●前回のあらすじ。男に襲われているように見えた女性を助けたら、勘違いだった。

「いきなり何しやがるんだ!」

 ロキの飛び蹴りを食らって転倒した男は、ロキに対して激怒している。
 女性はその男に駆け寄り、大丈夫ですかと心配していた。

「あれ?二人は知り合い?ココロおまえこの人を助けたかったんじゃないの?」

「そうだよ?」

「え?じゃあなんで俺怒られてんの?」

「分かんない」

「おい、おまえら俺の話を聞いてんのか!いきなり蹴りくらわせやがって。頭おかしいんじゃないのか?」

「えーっと、悪い。なんかもめてるみたいだったんで。あんたがその女の人に絡んでるのかと思って」

「ふざけんな!」

 男はさきほどロキに蹴られたところをさすって痛がっている。

「あー……痴話げんかとか?」

「ち、違います!」

 ロキの予想は女性の方が強めに否定した。

「じゃあ何を言い争ってたんですか?」

「それは……」

 ロキの質問に対し、女性は答えを言いよどむ。
 女性の代わりに男がそれに答えた。

「この人が急に代金を払えないとか言い出したんだよ!」

「代金?」

「食材や機材の手配をした代金だよ。当日になって急に払えなくなりましたって言われても困るんだよ!」

「ですからそれは後日必ずお払いいたしますので……」

「後日じゃ困るんだ!こっちだって仕入先に金を払わなきゃいけないんだ!」

「……」

 黙ったまま困った顔で俯く女性。

「じゃあ悪いのはあなたの方なんですね?おじさん、勘違いして悪かったよ」

「悪かったじゃ済まないんだよ!」

「あ?じゃあどうすりゃいいんだよ?」

 素直に謝罪を受け入れない男に対し、イラっとしたロキは男を睨みつける。
 普通の町民であろう男に対し、迷宮探索者をしているロキの鍛えている体は一回り以上大きい。そんなロキに睨まれ、男はうろたえる。
 そんな二人の間に女性が仲裁に入る。

「すいません、悪いのは私です。こちらの人は私を心配してくださっただけなんです。お許しください」

「許すも許さないもないよ!こっちはとにかく金さえ払ってくれればいいんだよ。あんたくらい器量がいい女ならいくらでも稼げるところを紹介するよ」

「それは……」

「なーんか釈然としないなあ。おっさん、やっぱあんたの方が悪人なんじゃねえのか?」

「な……、なんださっきからおまえは!関係ないって分かったならもうどこかへ行け!」

 男は明らかにロキの事を邪魔に感じている。ロキにはその態度が怪しく感じられていた。

「ココロ、悪人はどっちだ?」

 ロキは第六感の鋭いココロに尋ねる。
 そう問われ、ロキの横にいるココロが指さしたのは、男の方だった。

「何だおまえ?お前が俺の何を知ってるって言うんだ?」

「代金はいくらだ?」

「は?」

「この女性がお前に払わなければいけないと言う代金はいくらだって聞いてるんだ?」

「何だ?貴様が代わりに払ってくれるとでもいうのか?30万だ!30万セルだよ!そんな大金を通りすがりのお前が見ず知らずの女のために払ってくれるとでも言うのか?」

 ロキは男の前に金貨を三枚投げ捨てた。

「ほらよ」

 男は自分の目を疑うかのように驚いた顔をして硬直していたが、それを拾うと間違いなく金貨であることを確認する。

「それでいいだろう?」

「何でおまえ……」

 男は何か言いたいことがありそうだったが、ボロを出す前にその金を大切に懐にしまうと立ち去って行った。
 そしてその場には代金の督促をされていた女性と、ロキとココロが残された。

「あの……本当にすいません。お金は必ずお返し致しますので……」

「いや、それよりもそもそも何の代金だったんですか?」

「はい。実はこの辺りに住む人たちは貧しい人たちが多くて、明日炊き出しをする予定なんです。そのためにお金を貯めてきたのですが、ボランティアで手伝ってくれていた人の一人がお金を持ち逃げしてしまって、それで先ほどの商人のデビッドさんに準備してもらっていたレンタルのテントや鍋などの代金や食材の代金が払えなくなってしまったんです。本当に助かりました。あの、私はルナと申します。お名前を聞かせていただいても?」

「俺はロキ、迷宮探索者をしています。こう見えて結構稼いでるんで、さっきのお金のことは気にしないでください」

「そんな……」

 以前のロキであったら30万セルという金額は簡単に出せるものではなかったが、迷宮を踏破した今となっては気軽に使える金額であった。だがやはり貴族でもない一般の人からしたら大金であり、ルナと名乗る女性もそんな大金を簡単に出してもらったことに困惑していた。

「貧しい人たちのために炊き出しだなんてなかなかできることじゃないですよね。俺の金も有意義に使ってもらえるなら本望です」

「そんな……本当にありがとうございます!」

 女性は深々と頭を下げた。
 ロキよりも年上であろうその女性は、化粧をしていないが整った顔立ちをしていて、外見を気にしなくなった既婚者とも違い、清潔感のある凛々しい雰囲気をしていた。ロキは改めてそんなルナの外見を見て、思い切り好みのタイプであることに気づき頬を赤める。
 そんなロキに気づいたココロが一言呟く。

「ロキは綺麗な女の人には優しいよね?」

「俺のかっこいいとこ台無し!」

「ウフフ……」

 ロキたちはもし明日時間が取れたら炊き出しの手伝いに来ることを約束すると、仲間たちの元に戻った。
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