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Phase 2 なぜか世界の命運を担うことになった迷宮探索者の憂鬱
第68話 大魔導師と呼ばれて
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宮廷魔術師モールによる、迷宮踏破の報酬についての話が終わると、自然と雑談が始まった。
「ところでロキ殿、そなたの魔法の腕は相当なものだそうだな。王都に入る前にワイバーンを殲滅した話は聞いたぞ。ワシと同じ宮廷魔術師でもあるエフェリーネという者が見ていたらしく、魔導通信機で興奮気味に伝えてきおった。あやつは王国でもトップレベルの魔法使いだが、ロキ殿の魔法にはとても叶わないと言っておった」
「エフェリーネって、興奮気味に話しかけてきたあの人か」
「どうだろう、ロキ殿?その魔法を王立魔法学園で教えてもらえないだろうか?」
「いやいや、先生とか無理!」
「そんなことを言わず、前向きに考えてくれんか?」
「無理だよ!魔法を誰かに教えた事なんてないもん!」
「そうか、意思は固そうだな。残念だが、もし気が変わった言ってくれ。いつでも歓迎するぞ。大魔導士ロキの名前は今や城中に知れ渡っているのでな」
「大魔導士って?!」
ロキが頭の上にはてなマークを浮かべるような顔をすると、モールがその言葉を言い残して部屋を去っていった。
不本意そうな顔をしたロキに、アルマが苦笑いを浮かべながら声をかけた。
「いつのまにか魔法使いが本職になっちゃいましたね」
「本当だよ。はぁ、早く全部終わらせて迷宮探索者の仕事に戻りたいよ」
そんな誰に言ったでもないロキの独り言に、レオンが尋ねる。
「戻ってどうするんだ?」
「いや、だから前みたいに中層でコツコツ稼いで生活してくだけだよ」
「……?
「何か俺、変なこと言ったか?」
「ロキ、賞金がもらえるって話聞いてたか?」
「聞いてたけど?」
「献上した聖鍵が問題なく稼働している限り、年金として毎年およそ1000万セル貰えるって言ってただろ?わざわざ中層攻略なんかやってるよりよっぽどもらえるんだぞ?」
「えっ?」
「いまさら働く意味なんかないんだぞ?」
「マジか?でも不労所得は人間をダメにする。そういうやつらは俺の前世で見てきた」
「じゃあ年金を断るのか?」
「いや貰えるもんなら貰うけれど……まあこれからの事は全部終わってから考えるか!ワハハ!」
そう言うロキの顔は引きつっていた。
ロキの理想としているのは、ほどほど働いてほどほど稼ぐライフスタイル。それを仲間たち全員があまりストレスを感じない環境で、安定して給料を払える状態にしたいと考えていた。
だがそれを叶えるためにはレオンの悩みを解決しなくてはならず、そのためにまずは迷宮踏破しないといけないと分かり、危険を顧みずに全員で力を合わせて迷宮踏破をした。
その結果逆にもう働かなくてもいいほどの財産を手に入れてしまったことに、世の中上手くいかないものだとロキは複雑な気持ちになっていた。
「そういえば明日はどうするんだ?例の貧民街の炊き出しに行くのか?」
「あ?ああ、そうだな。そうするよ。ココロも行くだろ?」
「ココロも行くー!」
「アルマも行くか?」
「お邪魔じゃないんですか?」
「なんだよ邪魔って?」
「だってロキさん、ルナさんって人を狙ってるんじゃないんですか?」
「そ……そんなんじゃねーし!」
「知ってますか?ロキさんって綺麗な女性と話す時だけ敬語になってるんですよ?」
「えっ?そんなことねーよ!」
「確かにそうだな。ギルド長に対しても敬語使わないロキが、カリナには敬語で話すもんな!」
「ルナと話す時のロキも敬語だった!」
「ほら!ロキさんやらしー!」
「ワハハ!」
ココロの密告によって、一同笑いの渦に巻き込まれた。
「ココロが来るなら必然的にアポロも付いてくるだろうけど、レオンはどうする?」
「俺は色々情報を集めたいから別行動だな」
「分かった」
「というかロキ、その女に他に何か気になることがあるのか?」
「ん?ああ。何で?」
「いや、難しい顔してるから。本当に惚れた女のことを考えてる時のお前は、もっとニヤニヤしてるもんな?」
再びアルマたちは爆笑をする。
「おまえら……。実はココロの勘が鋭いって言っても、そこら中にいる困ってる人間の中からルナさんにだけ特に気になったってことは、何かある気がするんだ。ただの杞憂ならいいけどな」
「そうか。まあ、あんま気にしすぎず、休暇と思って楽しんで来いよ」
「ああ。お前も勇者のこととか調べるんだろ?虎の尾を踏まないように気をつけろよ」
「ああ」
★★★★★★★★
翌日、空は雲一つなく晴れ渡っていた。
ロキたちが宿泊している王都の中心部にある高級住宅街からは離れた、王都の外壁に近い貧民街。そこは同じ王都とは思えないほど雰囲気が違っていた。ただ板を張り付けただけの家が並び、舗装されていない道路は土がむき出しになっていた。
そんな場所にロキたちはホテルで用意してもらった魔動車で送ってきてもらう。魔動者を降りたロキたちの視線の先には、まだ準備中だというのに炊き出しを待ちわびて並んでいる者たちが広場の外に列をなして並ぶ姿があった。
ロキたちはその列をかき分け、広場の中へと入ってゆくと、見知った顔を見つけて声をかけた。
「ルナさん!」
前掛けを掛け頭に頭巾をかぶった姿のルナが、声をかけたロキを見つけると驚きと喜びの表情を顔に浮かべた。
「ロキさん、本当に来てくれたんですね」
「ええ。仲間も手伝いたいっていうんで連れてきました」
「皆さんありがとうございます。早速ですいませんが、馬車から荷物を運ぶのを手伝ってもらえませんか?」
「力仕事なら任せてくださいよ」
そう言ってロキが馬車の方へ行く。ルナの顔をじっと見つめていたアルマに、ルナが尋ねる。
「初めまして。私の顔に何かついてます?」
「すっごいお綺麗ですね」
「まあ?ありがとう。女の子二人は食事を作るのを手伝ってもらえるかしら?」
「はい!」
「うん!」
「ところでロキ殿、そなたの魔法の腕は相当なものだそうだな。王都に入る前にワイバーンを殲滅した話は聞いたぞ。ワシと同じ宮廷魔術師でもあるエフェリーネという者が見ていたらしく、魔導通信機で興奮気味に伝えてきおった。あやつは王国でもトップレベルの魔法使いだが、ロキ殿の魔法にはとても叶わないと言っておった」
「エフェリーネって、興奮気味に話しかけてきたあの人か」
「どうだろう、ロキ殿?その魔法を王立魔法学園で教えてもらえないだろうか?」
「いやいや、先生とか無理!」
「そんなことを言わず、前向きに考えてくれんか?」
「無理だよ!魔法を誰かに教えた事なんてないもん!」
「そうか、意思は固そうだな。残念だが、もし気が変わった言ってくれ。いつでも歓迎するぞ。大魔導士ロキの名前は今や城中に知れ渡っているのでな」
「大魔導士って?!」
ロキが頭の上にはてなマークを浮かべるような顔をすると、モールがその言葉を言い残して部屋を去っていった。
不本意そうな顔をしたロキに、アルマが苦笑いを浮かべながら声をかけた。
「いつのまにか魔法使いが本職になっちゃいましたね」
「本当だよ。はぁ、早く全部終わらせて迷宮探索者の仕事に戻りたいよ」
そんな誰に言ったでもないロキの独り言に、レオンが尋ねる。
「戻ってどうするんだ?」
「いや、だから前みたいに中層でコツコツ稼いで生活してくだけだよ」
「……?
「何か俺、変なこと言ったか?」
「ロキ、賞金がもらえるって話聞いてたか?」
「聞いてたけど?」
「献上した聖鍵が問題なく稼働している限り、年金として毎年およそ1000万セル貰えるって言ってただろ?わざわざ中層攻略なんかやってるよりよっぽどもらえるんだぞ?」
「えっ?」
「いまさら働く意味なんかないんだぞ?」
「マジか?でも不労所得は人間をダメにする。そういうやつらは俺の前世で見てきた」
「じゃあ年金を断るのか?」
「いや貰えるもんなら貰うけれど……まあこれからの事は全部終わってから考えるか!ワハハ!」
そう言うロキの顔は引きつっていた。
ロキの理想としているのは、ほどほど働いてほどほど稼ぐライフスタイル。それを仲間たち全員があまりストレスを感じない環境で、安定して給料を払える状態にしたいと考えていた。
だがそれを叶えるためにはレオンの悩みを解決しなくてはならず、そのためにまずは迷宮踏破しないといけないと分かり、危険を顧みずに全員で力を合わせて迷宮踏破をした。
その結果逆にもう働かなくてもいいほどの財産を手に入れてしまったことに、世の中上手くいかないものだとロキは複雑な気持ちになっていた。
「そういえば明日はどうするんだ?例の貧民街の炊き出しに行くのか?」
「あ?ああ、そうだな。そうするよ。ココロも行くだろ?」
「ココロも行くー!」
「アルマも行くか?」
「お邪魔じゃないんですか?」
「なんだよ邪魔って?」
「だってロキさん、ルナさんって人を狙ってるんじゃないんですか?」
「そ……そんなんじゃねーし!」
「知ってますか?ロキさんって綺麗な女性と話す時だけ敬語になってるんですよ?」
「えっ?そんなことねーよ!」
「確かにそうだな。ギルド長に対しても敬語使わないロキが、カリナには敬語で話すもんな!」
「ルナと話す時のロキも敬語だった!」
「ほら!ロキさんやらしー!」
「ワハハ!」
ココロの密告によって、一同笑いの渦に巻き込まれた。
「ココロが来るなら必然的にアポロも付いてくるだろうけど、レオンはどうする?」
「俺は色々情報を集めたいから別行動だな」
「分かった」
「というかロキ、その女に他に何か気になることがあるのか?」
「ん?ああ。何で?」
「いや、難しい顔してるから。本当に惚れた女のことを考えてる時のお前は、もっとニヤニヤしてるもんな?」
再びアルマたちは爆笑をする。
「おまえら……。実はココロの勘が鋭いって言っても、そこら中にいる困ってる人間の中からルナさんにだけ特に気になったってことは、何かある気がするんだ。ただの杞憂ならいいけどな」
「そうか。まあ、あんま気にしすぎず、休暇と思って楽しんで来いよ」
「ああ。お前も勇者のこととか調べるんだろ?虎の尾を踏まないように気をつけろよ」
「ああ」
★★★★★★★★
翌日、空は雲一つなく晴れ渡っていた。
ロキたちが宿泊している王都の中心部にある高級住宅街からは離れた、王都の外壁に近い貧民街。そこは同じ王都とは思えないほど雰囲気が違っていた。ただ板を張り付けただけの家が並び、舗装されていない道路は土がむき出しになっていた。
そんな場所にロキたちはホテルで用意してもらった魔動車で送ってきてもらう。魔動者を降りたロキたちの視線の先には、まだ準備中だというのに炊き出しを待ちわびて並んでいる者たちが広場の外に列をなして並ぶ姿があった。
ロキたちはその列をかき分け、広場の中へと入ってゆくと、見知った顔を見つけて声をかけた。
「ルナさん!」
前掛けを掛け頭に頭巾をかぶった姿のルナが、声をかけたロキを見つけると驚きと喜びの表情を顔に浮かべた。
「ロキさん、本当に来てくれたんですね」
「ええ。仲間も手伝いたいっていうんで連れてきました」
「皆さんありがとうございます。早速ですいませんが、馬車から荷物を運ぶのを手伝ってもらえませんか?」
「力仕事なら任せてくださいよ」
そう言ってロキが馬車の方へ行く。ルナの顔をじっと見つめていたアルマに、ルナが尋ねる。
「初めまして。私の顔に何かついてます?」
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「まあ?ありがとう。女の子二人は食事を作るのを手伝ってもらえるかしら?」
「はい!」
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