魔王転生→失敗?(勇者に殺された魔王が転生したら人間になった)

焔咲 仄火

文字の大きさ
22 / 102

第22話 魔王、墓場で人命救助

しおりを挟む
「そんなすごい剣を持っているなら、最初から言ってくれよ。驚いたな」

 ジュードは、ユウの持つ『殲滅し尽くす聖剣エクスキューショナー』の威力に度肝を抜かれていた。
 あれからユウが何体かのスケルトンを倒して分かったのだが、『殲滅し尽くす聖剣エクスキューショナー』は刃先が少し頭蓋骨に触れただけでスケルトンを死滅させてしまうようだ。頭部を完全に破壊しなくてはいけないというスケルトン退治の基本を、完全に無視した性能だ。
 3級冒険者のジュードは、これほどまでの攻撃力の高い武器を見たことがないのであろう。まあオレも見たことなかったが。
 だがそんな、スケルトンに対して無双しているユウの表情は優れず、難しそうな顔をしていた。

「どうしたユウ?何か問題でもあるのか?」

「何かこれ面白くねえなぁ。ジュードみてえに爽快に骨を砕きたいんだけど。パコーンって」

「パコーンって……。クエストに爽快感も何もないだろう?スケルトンを討伐する事が全てだ。簡単に倒せるのならそれでいいじゃないか」

 ジュードにそう説得され、不本意ながらも納得するユウ。
 そんな二人を後方から暖かく見守るオレ。何かあった時には、魔術師たるオレが後方から支援してやらねばなるまい。
 この調子なら、たぶんそれは無さそうだが……。
 そんなオレのところにも、一体のスケルトンが近寄って来た。ノロノロと忍び寄るスケルトンごときに全く焦る必要などないのだが、後ろを振り向いたジュードがそれに気づくと大声で叫んだ。

「ヴォルト!危ない!スケルトンが近寄って来てるぞ!」

「大げさな奴だな。分かってるわ」

 オレの手が届くところまで来たスケルトンに、オレはデコピンをくらわす。中指がスケルトンの額に炸裂すると、パン!という音と共に頭蓋骨が激しく粉砕し、後方に粉々に砕けた骨が飛散する。
 ジュードがメイスで破壊した時よりも派手に頭蓋骨が砕け散ると、残されたスケルトンの身体はその場に崩れ落ちる。
 まさに指一本で倒すとはこのことだ。まあスケルトンなんていう最低レベルのモンスターはこの程度なのだ。
 当たり前の結果に特に驚く事は何もないのだが、ジュードは口を開けたままこちらを向いて固まっていた。

「どうしたジュード?」

「ハ……ハハ……。ヴォルト、あんたモンクだったのか?しかも高レベルの」

「何を言っているお前?オレは本職メインジョブ魔術師マジシャンだ!弓手アーチャーのスキルも持っているが、修道僧モンクのスキルなど無いわ!」

「……。待ってくれ。俺は何が起きてるか分からねえ。5級と6級の新米冒険者たちと一緒に初級クエストに取り組んでるはずなんだが……」

「その通りだが?」

 よく分からんが、先ほどまで雄弁だったジュードはそれ以降無口になっていった。だがまあ、特に問題はないだろう。
 それよりもユウだ。
 俺がデコピンでスケルトンを倒すところを見ると、「それだ!」とか言って、それ以降スケルトンをパンチで倒し始めた。「ヒャッハー!」とか言いながら、次々とスケルトンの頭を殴って破壊してゆく。なんだか非常に危ない奴に見える。

「ストレス解消に最適だな、これ!」

 こいつも何を考えてるかよく分からんが、なんだかご機嫌になったようだ。
 そんな楽しみながらスケルトンを殴り倒して進むユウを先頭に、俺たち三人はだんだんと墓地の奥へと進んでいた。

 ところでこの共同墓地は、平坦な土地ではなく、小さな丘や岩石などで凸凹とした土地にある。
 墓石もしっかりとしたものではなく、人間を埋葬した場所の上にただ岩が置かれているだけのものが多い。埋葬した土壌もアンデッド化した死体が地中から出てきたため、今では土も起こされてかなり荒れている。
 瘴気が濃いところは雑草も生えていないが、それでもところどころ雑草が生い茂っている。
 本当に荒れ地だ。外周を柵で覆っていなければ、ここが共同墓地とは分からないだろう。まあその柵もかなり傷んでいるのだが。
 入り口の辺りは見通しが良かったのだが、奥へ進むほど見通しは悪くなる。変なところに隠れている魔物に襲われるのを気を付けなければいけない。それもまあスケルトンなので恐れる事はないのだが。

 ふと、小高い丘の手前の見通しの悪い場所に、一人の男が倒れているのを見つけた。墓場だけに一瞬死体かと思ったが、息をしているようだ。

「おい!誰か倒れているみたいだぞ?」

 困っている人間をほおっておけない寛大なオレは、倒れている男に近寄り、声を掛ける。

「おい!大丈夫か?」

 倒れている男は、その装備から冒険者のようだ。オレたちより先にスケルトン退治に来ていたのだろうか?
 オレは座り込み、その男を抱え起こす。

「あが……が……」

 目つきがおかしい。これは……

「≪麻痺パラライズ≫にかかっているのか?」

 意識はあるようだったが、体が動かないようだ。

「おいジュード。麻痺治療の薬はあるか?」

 だがジュードが用意していた毒消し草などの薬草類の中には、麻痺を回復させるものはなかった。
 仕方なく、オレは覚えたばかりの精霊魔法≪水精小回復アクアヒール≫で、体力だけでも回復させてやる。麻痺は治らないが、多少は言葉が聞き取れるくらいに回復はしてきたようだ。

「な……仲間が……」

 そう言って男が指を刺した先には、人が通る事ができそうな洞窟が見えていた。

「まだお前の仲間があそこにいるのか?」

「そ……う。た……すけ……て……」

「分かった。ちょっとお前はここで待ってろ。死んだふりをしてればスケルトンも襲ってこないだろう」

「待てヴォルト。こいつの仲間を助けに行くつもりか?麻痺毒を持ったモンスターがいるんだろう?危険だ!」

 オレがこいつの仲間を助けに洞窟へ行こうとしたところ、ジュードが止めに入った。

「危険なら、なおさら早く助けに行ってやらないといけないだろう?」

「確かにそうだが、俺たちはスケルトン退治の準備しかしていないんだ」

「オレはいつでもドラゴンとでも戦える準備はできてるけどな」

 オレとジュードの意見が平行線のままいると、ユウが口を出して来た。

「それならジュードはここで待ってればいいじゃん。俺とヴォルトの二人で洞窟に行こうぜ」

「な……」

「そうか。そうだな。無理してつき合うこともない。お前はここで待ってろ」

「そんな事言われて、はいそうですかとお前たちだけ危険な場所へ行かせられるか!分かった。だが危ないと思ったらすぐに引き返すぞ!」

「何だ?おまえも来るの?」

 心無いユウの言葉に困った顔をするジュード。

「そんな言い方したら可哀そうだろう?まあジュード、お前も一人でいるよりオレたちと一緒の方が安全だ。一緒に行こう」

 そうして俺たち三人は、遭難者の救助に洞窟の中へと入って行った。




しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記  大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。 それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。  生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、 まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。  しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。 無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。 これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?  依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、 いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。 誰かこの悪循環、何とかして! まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

処理中です...