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第38話 魔王、真犯人を探す
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第二、第三、第四王子の命を狙っていたのは、第五王子の母親だというヴォルトの推理を証明するため、ヴォルトたちは深夜にも関わらず、第五王子の部屋へと歩みを進めていた。
あと少しで第五王子の部屋に辿り着くという時、突然悲鳴が聞こえて来た。
第五王子の部屋からだ。
ヴォルトたちは、第五王子の部屋へと続く通路を慌てて走り出した。
バタン!
部屋の前にいた護衛の兵士が躊躇しているのをしり目に、ヴォルトが第五王子の部屋の扉を押し開ける。
「どうした?!」
部屋の中に入ったヴォルトの目に飛び込んで来たのは、転倒している侍女と、その横で子供の上に覆いかぶさっている、羽の生えた生き物だった。
「ガーゴイル!?」
すぐにその魔物の正体に気付き、ヴォルトは最速で、だが慎重に狙いを定めて≪魔法の矢≫を放つ。
子供……第五王子の上に覆いかぶさっていたガーゴイルに≪魔法の矢≫が突き刺さると、第五王子の身体の上から吹き飛ぶ。そしてそのガーゴイルの身体は、バラバラになって崩れ落ちた。
「大丈夫か?!何があった?!」
駆け寄ると、ガーゴイルに噛みつかれた傷から大量に出血している第五王子の姿があった。
「くっ、≪水精小回復≫!」
ヴォルトが慌てて回復魔法をかけるが、傷は完全に塞がらない。
「≪水精小回復≫!≪水精小回復≫!くそっ、慣れない精霊魔法では効果が弱い。≪小回復≫!≪小回復≫!≪小回復≫!」
消費魔力が大きいが、慣れている魔力系回復魔法を連呼し、第五王子の治療を行うヴォルト。その結果、第五王子の傷は塞がり、だんだん呼吸も落ち着いてきた。
「大丈夫か?おい、侍女!何があったのだ?」
「ああ……、あああ……」
侍女は泣きながら取り乱している。目の前で自分が使える幼い王子が死にそうになったのだ。仕方がないと言えば仕方がないのだが。
「≪鎮静≫。……どうだ?落ち着いたか?」
ヴォルトは混乱を鎮める魔法を唱える。
魔法が効いてきたのか、侍女は泣き止むとだんだん落ち着きを取り戻し、言葉を振り絞って返事をした。
「と……突然あの窓から、その魔物が入って来て……。襲い掛かって来たのです……。私はピエール様を庇おうとしたのですが、ピエール様が私を突き飛ばして……」
「この子はお前を庇ったのだな。さすが小さくても男だ。ところで、この部屋は鉄の格子窓ではなかったのか」
侍女が指さす方向を見ると、部屋の窓の木製の鎧戸が壊されていた。
「城の全ての窓に鉄格子が付いているわけではありません……」
スカーレットが説明をしてくれる。確かに本来こんなところまで頑丈な鉄格子窓にする必要はない。
第五王子まで狙われてるとは思わなかったヴォルトは、確認すらしていなかった。
ヴォルトの魔法により回復した第五王子は、ゆっくりと目を開けた。
傷口は塞がったが、破れた衣服や飛び散った鮮血で無残な姿だった。
「あ……僕は……?」
「大丈夫か?傷は魔法で治したが、万全ではないかもしれん。無理はするな」
「ありがとうございます。死んじゃうかと思いました……」
「本当に死ぬところだったのだぞ?無茶はするな」
第五王子を介抱するヴォルト。その横ではスカーレットが、侍女に第五王妃を呼んでくるよう指示を出す。
「おいヴォルト。もしかしてお前の推理めちゃくちゃハズレてねえか?」
「……」
ユウの言葉に、視線を合わせようとしないヴォルト。
ヴォルトの推理では、この第五王子を王位に就かせるために、第五王妃がその兄たちを狙った犯行ではないかという話だったが、第五王妃が犯人であれば王位に就かせたい息子まで襲うはずがない。
つまりヴォルトの推理は間違っていたのだが、あれだけ大見栄切って発表した手前、間違っていましたというのも恥ずかしくなっていた。
「おかしいな……、王家に恨みを持つ者の無差別攻撃なのか……?」
わざとらしく独り言をつぶやくヴォルト。そんなヴォルトに、ユウは冷たい視線を送っていた。
ユウはヴォルトに倒され瓦礫となったガーゴイルの残骸を見つめる。
「これで三体目か。もしかしてガーゴイルを操っているのって、それなりにすごい魔法使いなんじゃねえの?」
ユウはこの世界の魔法がどれくらいのレベルなのか分からないため、そばにいたスカーレットに尋ねた。
スカーレットは手をあごに添えて考え、少し間を空けて答えた。
「そうですね。おそらくこの国にいる魔法使いでは、単独で三体のガーゴイルを操ることなど不可能です……」
「余計に分からなくなってきたな」
王子たちへの襲撃を依頼した犯人もだが、実行犯についても謎が多い。全く手掛かりもなく困っていると、侍女に連れられ、隣の部屋から第五王妃がやってきた。
「ピエール!!!」
血まみれの服と床を見て、第五王妃は顔を真っ青にして第五王子のところへと駆け寄る。
既にヴォルトの魔法で回復している息子を抱きしめると、第五王子から大丈夫だという返事が返って来た。
「母上、大丈夫です。そちらのヴォルト様に助けてもらいました。傷も魔法で治してもらいました」
「ああ、ありがとうございます!何とお礼を言っていいのか……」
「気にするな。それよりこいつが襲われると推測できなかったオレの判断ミスだ。第四王子、第二王子の部屋を襲ったガーゴイルを倒し、ここに来たら三体目のガーゴイルが第五王子を襲っていた。犯人の動機はまだ分からんが、他のガーゴイルがやられて焦ったのだろう。それで強引に攻めて来たようだ。危険な目に会わせたのはオレのせいでもある。悪かったな」
「まあ、殿下たちも襲われたのですね。あっ?!カーラは?サンドラ、カーラは大丈夫なの?」
第五王妃は娘の第一王女の安否も心配する。
今回の襲撃は王位継承権に関わる事件と考え、女性であるため王位継承権のない王女の事はヴォルトの頭には入っていなかった。
「サンドラ、すぐにカーラの部屋の様子を見てきて!」
「分かりました!」
侍女は走って部屋を出て行った。
まさかとは思っていたが、少し経って侍女の悲鳴が聞こえて来た時、慌ててヴォルトたちも王女の部屋へと向かった。
あと少しで第五王子の部屋に辿り着くという時、突然悲鳴が聞こえて来た。
第五王子の部屋からだ。
ヴォルトたちは、第五王子の部屋へと続く通路を慌てて走り出した。
バタン!
部屋の前にいた護衛の兵士が躊躇しているのをしり目に、ヴォルトが第五王子の部屋の扉を押し開ける。
「どうした?!」
部屋の中に入ったヴォルトの目に飛び込んで来たのは、転倒している侍女と、その横で子供の上に覆いかぶさっている、羽の生えた生き物だった。
「ガーゴイル!?」
すぐにその魔物の正体に気付き、ヴォルトは最速で、だが慎重に狙いを定めて≪魔法の矢≫を放つ。
子供……第五王子の上に覆いかぶさっていたガーゴイルに≪魔法の矢≫が突き刺さると、第五王子の身体の上から吹き飛ぶ。そしてそのガーゴイルの身体は、バラバラになって崩れ落ちた。
「大丈夫か?!何があった?!」
駆け寄ると、ガーゴイルに噛みつかれた傷から大量に出血している第五王子の姿があった。
「くっ、≪水精小回復≫!」
ヴォルトが慌てて回復魔法をかけるが、傷は完全に塞がらない。
「≪水精小回復≫!≪水精小回復≫!くそっ、慣れない精霊魔法では効果が弱い。≪小回復≫!≪小回復≫!≪小回復≫!」
消費魔力が大きいが、慣れている魔力系回復魔法を連呼し、第五王子の治療を行うヴォルト。その結果、第五王子の傷は塞がり、だんだん呼吸も落ち着いてきた。
「大丈夫か?おい、侍女!何があったのだ?」
「ああ……、あああ……」
侍女は泣きながら取り乱している。目の前で自分が使える幼い王子が死にそうになったのだ。仕方がないと言えば仕方がないのだが。
「≪鎮静≫。……どうだ?落ち着いたか?」
ヴォルトは混乱を鎮める魔法を唱える。
魔法が効いてきたのか、侍女は泣き止むとだんだん落ち着きを取り戻し、言葉を振り絞って返事をした。
「と……突然あの窓から、その魔物が入って来て……。襲い掛かって来たのです……。私はピエール様を庇おうとしたのですが、ピエール様が私を突き飛ばして……」
「この子はお前を庇ったのだな。さすが小さくても男だ。ところで、この部屋は鉄の格子窓ではなかったのか」
侍女が指さす方向を見ると、部屋の窓の木製の鎧戸が壊されていた。
「城の全ての窓に鉄格子が付いているわけではありません……」
スカーレットが説明をしてくれる。確かに本来こんなところまで頑丈な鉄格子窓にする必要はない。
第五王子まで狙われてるとは思わなかったヴォルトは、確認すらしていなかった。
ヴォルトの魔法により回復した第五王子は、ゆっくりと目を開けた。
傷口は塞がったが、破れた衣服や飛び散った鮮血で無残な姿だった。
「あ……僕は……?」
「大丈夫か?傷は魔法で治したが、万全ではないかもしれん。無理はするな」
「ありがとうございます。死んじゃうかと思いました……」
「本当に死ぬところだったのだぞ?無茶はするな」
第五王子を介抱するヴォルト。その横ではスカーレットが、侍女に第五王妃を呼んでくるよう指示を出す。
「おいヴォルト。もしかしてお前の推理めちゃくちゃハズレてねえか?」
「……」
ユウの言葉に、視線を合わせようとしないヴォルト。
ヴォルトの推理では、この第五王子を王位に就かせるために、第五王妃がその兄たちを狙った犯行ではないかという話だったが、第五王妃が犯人であれば王位に就かせたい息子まで襲うはずがない。
つまりヴォルトの推理は間違っていたのだが、あれだけ大見栄切って発表した手前、間違っていましたというのも恥ずかしくなっていた。
「おかしいな……、王家に恨みを持つ者の無差別攻撃なのか……?」
わざとらしく独り言をつぶやくヴォルト。そんなヴォルトに、ユウは冷たい視線を送っていた。
ユウはヴォルトに倒され瓦礫となったガーゴイルの残骸を見つめる。
「これで三体目か。もしかしてガーゴイルを操っているのって、それなりにすごい魔法使いなんじゃねえの?」
ユウはこの世界の魔法がどれくらいのレベルなのか分からないため、そばにいたスカーレットに尋ねた。
スカーレットは手をあごに添えて考え、少し間を空けて答えた。
「そうですね。おそらくこの国にいる魔法使いでは、単独で三体のガーゴイルを操ることなど不可能です……」
「余計に分からなくなってきたな」
王子たちへの襲撃を依頼した犯人もだが、実行犯についても謎が多い。全く手掛かりもなく困っていると、侍女に連れられ、隣の部屋から第五王妃がやってきた。
「ピエール!!!」
血まみれの服と床を見て、第五王妃は顔を真っ青にして第五王子のところへと駆け寄る。
既にヴォルトの魔法で回復している息子を抱きしめると、第五王子から大丈夫だという返事が返って来た。
「母上、大丈夫です。そちらのヴォルト様に助けてもらいました。傷も魔法で治してもらいました」
「ああ、ありがとうございます!何とお礼を言っていいのか……」
「気にするな。それよりこいつが襲われると推測できなかったオレの判断ミスだ。第四王子、第二王子の部屋を襲ったガーゴイルを倒し、ここに来たら三体目のガーゴイルが第五王子を襲っていた。犯人の動機はまだ分からんが、他のガーゴイルがやられて焦ったのだろう。それで強引に攻めて来たようだ。危険な目に会わせたのはオレのせいでもある。悪かったな」
「まあ、殿下たちも襲われたのですね。あっ?!カーラは?サンドラ、カーラは大丈夫なの?」
第五王妃は娘の第一王女の安否も心配する。
今回の襲撃は王位継承権に関わる事件と考え、女性であるため王位継承権のない王女の事はヴォルトの頭には入っていなかった。
「サンドラ、すぐにカーラの部屋の様子を見てきて!」
「分かりました!」
侍女は走って部屋を出て行った。
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