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第68話 魔王、話を聞く
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半獣半人の一族である、少年カイトとその従者デュランとユーゴ。
三人が泊っているという宿へと、ヴォルトとユウは付いて行った。
「おっ、三人ともお帰りなさい」
宿の奥から前掛けを付けた男が顔を見せる。
「いやー、デュランさんが帰ってこないって言ってカイト君がイライラして探しに出た時は心配したけど、無事に見つかって良かったですね。あれ?後ろの二人は?」
「大将、ちょっとこの二人と話があるんで、部屋を借りてもいいですかね?」
「え?ああ、どうぞどうぞ。それじゃ先に仕込みだけやっときますね」
デュランが男に買って来た食材を預ける。
男はそれを受け取ると、また奥へ戻っていった。
オレたちはユーゴに案内され、部屋へと入ってゆく。
「随分となじんでいるようだな」
先ほどのやり取りを見てオレは呟いた。
「最近じゃずっとここでお世話になってますからね。無理言って厨房を貸してもらったりもしています」
これだけ戦闘能力の高い半獣半人のこいつらが、宿屋の主人となじんでいるということは平和的に接しているからだろう。力ずくで言う事を聞かせようとするもの簡単だろうがそうしないのは、秘密の任務があって目立てないのか、本当に争うつもりはないかのどちらかだろう。
そしてオレたちは部屋の中へと通されると、各々好きな場所へと座った。
「さて、それではさっきの話を詳しく聞かせてもらおう。お前たちは半獣半人という事だったな」
「そうです。この私、ユーゴはオオカミのライカンスロープである狼男。そしてこのデュランと、主人カイト様は吸血コウモリのライカンスロープ、コウモリ男です」
「コウモリ男?吸血鬼とは違うのか?」
実際に目撃したという者の話を直接聞いた事はないが、吸血鬼の伝承は各地に伝わっている。様々な逸話があるが、人間を襲って血を吸う恐ろしい魔物であるという話がほとんどだ。
一説では不老不死であり、太陽の光を苦手としているという話も聞いた事があるが、この二人は日中から外を歩いていたので太陽が苦手というわけでもなさそうだ。
「私らは吸血鬼を見たことがないので何とも言えませんが、よく聞く吸血鬼伝説と共通しているところはあります。完全ではないですがコウモリに化けたり、血を吸ったりすることもできます。私たちは自分の意思で自由に獣化できますが、特に強い力を発することができるのは夜で、特に満月の夜がピークであるというのも共通していると思います」
「なるほどな。おまえたちが人間ではない事は分かった。それで、なぜこの国に来た?どうして人間たちに混じって生活をしているのだ?」
それこそがオレがこいつらに最初から訪ねている内容である。どこかの国から尖兵や密偵として送り込まれたのなら見逃すわけにはいかない。だが子供を庇うところをみると、そういった役目には向かない関係だと思える。
果たしてこいつらの目的は何か、それはゆっくりと無精ひげの狼男ユーゴの口から説明がなされた。
「私たちは、西の大陸から海を渡って来ました。私たちの故郷は、半獣半人の国ギュスティオン。こちらにおりますカイト様は、ギュスティオンの大王ブルートニクス様の御子息、つまり王子であります」
「西の海の向こう?大海獣が棲む魔の海を越えてやってきたのか?」
今オレたちのいるこの大陸は、南北に長い形をしている。
ここから北へ行き、雲よりも高い山脈を越えた先はオレの故郷である魔界。南はある程度まで人間たちの国が広がっているが、その先は人跡未踏の密林が広がっている。東側には比較的穏やかと言われる大海が広がり、その先にアトランティス大陸があると言われている。
この国の西にも山脈が広がっている。その先は海で、西の海は東の海と比べて巨大な海獣が多く出現するらしい。そのため西の海に船を出す者はいない。そしてその西の海の向こうがどうなっているか知る者はいない。
こいつらはそんな魔の海の向こうから来たと言う。
「そうです。何度か海の魔物に襲われ、危ない目に会いましたが、我々の力でなんとか撃退できました」
「なるほど」
西の海の向こうに、半獣半人の国があるなどとは知らなかった。
やはり世界は広い。魔王であるオレにも知らないことはたくさんある。
「それで、なぜおまえたちはそんな危険な目にあってまでここへ?」
小僧カイトが、悔しそうな表情をする。話したくない理由があるのだろうか?
ユーゴも同じく辛そうな表情で、オレの質問に答えた
「我が国に百年ぶりに現れた、神人アトラスによって大虐殺が行われたため、国から逃げて来たのです。私とこのデュランは、大王陛下直々にカイト王子の護衛を仰せつかりました。私たちが去った後、国がどうなったかは分かりません」
「「神人だと?!」」
オレとユウは同時に声を上げる。
オレたちの敵であるオーテウス教が祀っているというのが、十二柱の神人だという。
そんなものいない可能性もあると思っていたのだが、それが実際に存在していて、こいつらのように人間離れした身体能力を持つ半獣半人たちを虐殺できるほどの武力を持っているというのか?
「まさかそれはオーテウス十二柱の内の一柱か?」
ユウの言葉に、ユーゴは静かに頷く。
「逃げてきたこの国にもオーテウス教があるとは驚きました。ですが調べたところ、五十年ほど前にこの国でも神人が現れたと考えられる記録が残っています。ですからこの国はまだ当分は大丈夫ではないかと睨んでいます」
「待て、どういう事だ?」
「神人は百年ごとに目覚め、地上の生き物を大量に殺し、その命を食料として食べるのです。この国で五十年前に神人が現れたのなら、次に現れ大量虐殺を行うのは、五十年後くらいになるのではないかと」
三人が泊っているという宿へと、ヴォルトとユウは付いて行った。
「おっ、三人ともお帰りなさい」
宿の奥から前掛けを付けた男が顔を見せる。
「いやー、デュランさんが帰ってこないって言ってカイト君がイライラして探しに出た時は心配したけど、無事に見つかって良かったですね。あれ?後ろの二人は?」
「大将、ちょっとこの二人と話があるんで、部屋を借りてもいいですかね?」
「え?ああ、どうぞどうぞ。それじゃ先に仕込みだけやっときますね」
デュランが男に買って来た食材を預ける。
男はそれを受け取ると、また奥へ戻っていった。
オレたちはユーゴに案内され、部屋へと入ってゆく。
「随分となじんでいるようだな」
先ほどのやり取りを見てオレは呟いた。
「最近じゃずっとここでお世話になってますからね。無理言って厨房を貸してもらったりもしています」
これだけ戦闘能力の高い半獣半人のこいつらが、宿屋の主人となじんでいるということは平和的に接しているからだろう。力ずくで言う事を聞かせようとするもの簡単だろうがそうしないのは、秘密の任務があって目立てないのか、本当に争うつもりはないかのどちらかだろう。
そしてオレたちは部屋の中へと通されると、各々好きな場所へと座った。
「さて、それではさっきの話を詳しく聞かせてもらおう。お前たちは半獣半人という事だったな」
「そうです。この私、ユーゴはオオカミのライカンスロープである狼男。そしてこのデュランと、主人カイト様は吸血コウモリのライカンスロープ、コウモリ男です」
「コウモリ男?吸血鬼とは違うのか?」
実際に目撃したという者の話を直接聞いた事はないが、吸血鬼の伝承は各地に伝わっている。様々な逸話があるが、人間を襲って血を吸う恐ろしい魔物であるという話がほとんどだ。
一説では不老不死であり、太陽の光を苦手としているという話も聞いた事があるが、この二人は日中から外を歩いていたので太陽が苦手というわけでもなさそうだ。
「私らは吸血鬼を見たことがないので何とも言えませんが、よく聞く吸血鬼伝説と共通しているところはあります。完全ではないですがコウモリに化けたり、血を吸ったりすることもできます。私たちは自分の意思で自由に獣化できますが、特に強い力を発することができるのは夜で、特に満月の夜がピークであるというのも共通していると思います」
「なるほどな。おまえたちが人間ではない事は分かった。それで、なぜこの国に来た?どうして人間たちに混じって生活をしているのだ?」
それこそがオレがこいつらに最初から訪ねている内容である。どこかの国から尖兵や密偵として送り込まれたのなら見逃すわけにはいかない。だが子供を庇うところをみると、そういった役目には向かない関係だと思える。
果たしてこいつらの目的は何か、それはゆっくりと無精ひげの狼男ユーゴの口から説明がなされた。
「私たちは、西の大陸から海を渡って来ました。私たちの故郷は、半獣半人の国ギュスティオン。こちらにおりますカイト様は、ギュスティオンの大王ブルートニクス様の御子息、つまり王子であります」
「西の海の向こう?大海獣が棲む魔の海を越えてやってきたのか?」
今オレたちのいるこの大陸は、南北に長い形をしている。
ここから北へ行き、雲よりも高い山脈を越えた先はオレの故郷である魔界。南はある程度まで人間たちの国が広がっているが、その先は人跡未踏の密林が広がっている。東側には比較的穏やかと言われる大海が広がり、その先にアトランティス大陸があると言われている。
この国の西にも山脈が広がっている。その先は海で、西の海は東の海と比べて巨大な海獣が多く出現するらしい。そのため西の海に船を出す者はいない。そしてその西の海の向こうがどうなっているか知る者はいない。
こいつらはそんな魔の海の向こうから来たと言う。
「そうです。何度か海の魔物に襲われ、危ない目に会いましたが、我々の力でなんとか撃退できました」
「なるほど」
西の海の向こうに、半獣半人の国があるなどとは知らなかった。
やはり世界は広い。魔王であるオレにも知らないことはたくさんある。
「それで、なぜおまえたちはそんな危険な目にあってまでここへ?」
小僧カイトが、悔しそうな表情をする。話したくない理由があるのだろうか?
ユーゴも同じく辛そうな表情で、オレの質問に答えた
「我が国に百年ぶりに現れた、神人アトラスによって大虐殺が行われたため、国から逃げて来たのです。私とこのデュランは、大王陛下直々にカイト王子の護衛を仰せつかりました。私たちが去った後、国がどうなったかは分かりません」
「「神人だと?!」」
オレとユウは同時に声を上げる。
オレたちの敵であるオーテウス教が祀っているというのが、十二柱の神人だという。
そんなものいない可能性もあると思っていたのだが、それが実際に存在していて、こいつらのように人間離れした身体能力を持つ半獣半人たちを虐殺できるほどの武力を持っているというのか?
「まさかそれはオーテウス十二柱の内の一柱か?」
ユウの言葉に、ユーゴは静かに頷く。
「逃げてきたこの国にもオーテウス教があるとは驚きました。ですが調べたところ、五十年ほど前にこの国でも神人が現れたと考えられる記録が残っています。ですからこの国はまだ当分は大丈夫ではないかと睨んでいます」
「待て、どういう事だ?」
「神人は百年ごとに目覚め、地上の生き物を大量に殺し、その命を食料として食べるのです。この国で五十年前に神人が現れたのなら、次に現れ大量虐殺を行うのは、五十年後くらいになるのではないかと」
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