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第2章
第18話 異世界のお城で姫に薬を処方する
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俺たちは再びエリス王女の部屋へと訪れた。今度は先ほどの打ち合わせにいた医師も引き連れて。大勢の来室にエリス王女を不安がらせる気もしたが、王女は慣れているようだった。
ファランさんが先頭に立ってエリス王女の枕元まで行くと、横の椅子に座る。
「それではエリス様、私の処方した薬をお持ちしました。順番に飲んでください」
「はい」
ファランさんが持ってきた薬の説明をしていると、部屋の扉をノックする音がした。
誰だろう?
メイドがドアまで迎えに行くと、開けた扉の向こうにいたのは、帰ったはずのヴェゼル王子だった。
「ヴェゼル王子!帰ったはずじゃ?」
「いやね、帰る前に田舎からやってきた医師がどこまでの技量を持つか見学だけさせてもらいたいと思いましてね」
ヴェゼル王子の連れて来たゴライアスさんには治療でお世話になっている以上、すぐに出て行けとも言いづらい。
不穏な空気を察知したのか、ヴェゼルは「後ろの方で静かに見学させてもらいますよ」と、珍しく謙虚に言った。
とりあえず闖入者は置いておいて、ファランさんは薬の説明を続ける。
一通り説明を聞いた後、王女は薬を飲んだ。
ファランさんからは3種類の薬が処方され、一つ飲むたびに王女のステータスの確認がなされた。
この世界ではステータスが数字で見れるため、薬の効果もはっきりと目に見えるのだろう。
最後に出されたアロエの葉肉を王女がフォークで食べ終わると、最後のステータスチェックが行われた。
俺も気になったので王女の病状を≪鑑定≫する。だが、結果は同じ癌の末期状態だった。
やっぱりだめだったか……。
俺が沈痛な気持ちでいると、≪診断≫スキルでより細かい数値を確認したミハエルさんが驚きの声を上げた。
「数値が今までにないくらい良くなってきている。アロエは効果がありそうですね」
当然完治までは行かないのだが、診断の数値が少しでも良くなったようだ。
これまで重い表情でいたその場の全員に、笑みが現れた。
だがそこに水を差す者がいた。
「数値が良くなっただけですか?バラツキの範囲内かもしれませんねえ。まあ田舎医師なんか連れて来ても何の役にも立たなかったですね」
ヴェゼルだ。
何が後ろで静かに見学だ。結局いちゃもんを付けたかっただけだろう。
「ヴェゼル王子、口を控えてもらおう。妹を不安にさせるような事は言わないでくれ」
ロデリック王太子がヴェゼルを注意する。またケンカしないか俺は冷や冷やしている。
「私もゴライアスを連れて治療させてきた手前、やはりエリス様の事は最後まで見届けたいじゃないですか?例えそれが死ぬということでも」
「おまえ……いい加減にしろよ……」
「何か変な事をいいましたか?いくら国中から医師を集めようとも、エリス様は末期癌でもう助からないのは事実じゃないですか?!」
このバカ、爆弾を落としやがった。
医師連中には公然の事実だけれど、エリス王女自体はまだそれを知らないはず。
ミハエルさんの言うように、今は生きる気持ちが大切な時なのに、患者に助からないなどと告げるだなんて!
「貴様……」
ロデリックがヴェゼルにつかみかかる前に、俺はロデリックの前に立ち両手を広げて制止していた。
「ロデリックさん、エリス王女の前です。落ち着いてください」
ロデリックは、慌ててエリス王女の方に振り返り、その悲しい顔を見て冷静になる。
「大丈夫だエリス。お前はきっと助けるぞ。必ず良くなる」
ロデリックは王女のベッドに駆け寄り、妹の手を取る。
恐らくだが、エリス王女は自分の容態をなんとなく分かっていたのだろう。ヴェゼルの言葉にショックを受けたかと思ったが、意外と落ち着いた表情をしていた。
「助けると言ってもどうやって助けるというのですか?医者でもないあなたに何ができる?あなたが国中探して連れて来たその医師にだって、大した薬は出せなかったのでしょう?助からない患者に変に期待させる方が残酷じゃないのですか?」
ヴェゼルは続けざまに毒を吐く。的を得た事を言ってはいるが、それは今ここで発言していい言葉ではない。
「エリス王女!」
俺はリュックから、ペットボトルのスポーツドリンクを取り出す。
「これを飲んでください!これならきっと病気が治るはずです!」
そうだ。アロエの効果も弱かった今、王女の病気を治す可能性があるのは、鑑定の結果どんな状態異常も治してしまうエリクサーだと判明したスポーツドリンク。俺がJGRフェス会場で買って持ってきた、このスポーツドリンクしかない。
ファランさんが先頭に立ってエリス王女の枕元まで行くと、横の椅子に座る。
「それではエリス様、私の処方した薬をお持ちしました。順番に飲んでください」
「はい」
ファランさんが持ってきた薬の説明をしていると、部屋の扉をノックする音がした。
誰だろう?
メイドがドアまで迎えに行くと、開けた扉の向こうにいたのは、帰ったはずのヴェゼル王子だった。
「ヴェゼル王子!帰ったはずじゃ?」
「いやね、帰る前に田舎からやってきた医師がどこまでの技量を持つか見学だけさせてもらいたいと思いましてね」
ヴェゼル王子の連れて来たゴライアスさんには治療でお世話になっている以上、すぐに出て行けとも言いづらい。
不穏な空気を察知したのか、ヴェゼルは「後ろの方で静かに見学させてもらいますよ」と、珍しく謙虚に言った。
とりあえず闖入者は置いておいて、ファランさんは薬の説明を続ける。
一通り説明を聞いた後、王女は薬を飲んだ。
ファランさんからは3種類の薬が処方され、一つ飲むたびに王女のステータスの確認がなされた。
この世界ではステータスが数字で見れるため、薬の効果もはっきりと目に見えるのだろう。
最後に出されたアロエの葉肉を王女がフォークで食べ終わると、最後のステータスチェックが行われた。
俺も気になったので王女の病状を≪鑑定≫する。だが、結果は同じ癌の末期状態だった。
やっぱりだめだったか……。
俺が沈痛な気持ちでいると、≪診断≫スキルでより細かい数値を確認したミハエルさんが驚きの声を上げた。
「数値が今までにないくらい良くなってきている。アロエは効果がありそうですね」
当然完治までは行かないのだが、診断の数値が少しでも良くなったようだ。
これまで重い表情でいたその場の全員に、笑みが現れた。
だがそこに水を差す者がいた。
「数値が良くなっただけですか?バラツキの範囲内かもしれませんねえ。まあ田舎医師なんか連れて来ても何の役にも立たなかったですね」
ヴェゼルだ。
何が後ろで静かに見学だ。結局いちゃもんを付けたかっただけだろう。
「ヴェゼル王子、口を控えてもらおう。妹を不安にさせるような事は言わないでくれ」
ロデリック王太子がヴェゼルを注意する。またケンカしないか俺は冷や冷やしている。
「私もゴライアスを連れて治療させてきた手前、やはりエリス様の事は最後まで見届けたいじゃないですか?例えそれが死ぬということでも」
「おまえ……いい加減にしろよ……」
「何か変な事をいいましたか?いくら国中から医師を集めようとも、エリス様は末期癌でもう助からないのは事実じゃないですか?!」
このバカ、爆弾を落としやがった。
医師連中には公然の事実だけれど、エリス王女自体はまだそれを知らないはず。
ミハエルさんの言うように、今は生きる気持ちが大切な時なのに、患者に助からないなどと告げるだなんて!
「貴様……」
ロデリックがヴェゼルにつかみかかる前に、俺はロデリックの前に立ち両手を広げて制止していた。
「ロデリックさん、エリス王女の前です。落ち着いてください」
ロデリックは、慌ててエリス王女の方に振り返り、その悲しい顔を見て冷静になる。
「大丈夫だエリス。お前はきっと助けるぞ。必ず良くなる」
ロデリックは王女のベッドに駆け寄り、妹の手を取る。
恐らくだが、エリス王女は自分の容態をなんとなく分かっていたのだろう。ヴェゼルの言葉にショックを受けたかと思ったが、意外と落ち着いた表情をしていた。
「助けると言ってもどうやって助けるというのですか?医者でもないあなたに何ができる?あなたが国中探して連れて来たその医師にだって、大した薬は出せなかったのでしょう?助からない患者に変に期待させる方が残酷じゃないのですか?」
ヴェゼルは続けざまに毒を吐く。的を得た事を言ってはいるが、それは今ここで発言していい言葉ではない。
「エリス王女!」
俺はリュックから、ペットボトルのスポーツドリンクを取り出す。
「これを飲んでください!これならきっと病気が治るはずです!」
そうだ。アロエの効果も弱かった今、王女の病気を治す可能性があるのは、鑑定の結果どんな状態異常も治してしまうエリクサーだと判明したスポーツドリンク。俺がJGRフェス会場で買って持ってきた、このスポーツドリンクしかない。
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