夏フェス行ったら異世界に迷い込んだ

焔咲 仄火

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第2章

第17話 異世界のお城で治療方法についての打ち合わせ

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 俺たち三人は、エリス王女の部屋へと戻った。

「お騒がせしてすいませんでした」

 なんとなく俺が代表して謝りながら部屋へと入る。

「王女様はご病気なのですから、近くで騒ぎを起こさないようにしてくださいね」

 ファランさんは静かに怒っていた。

「すいません……」

 俺とロデリック王太子は同時に謝った。

「ウフフ……」

 そんな姿を見て、王女が少し笑ったようだ。
 ちょっと恥ずかしいけど、笑ってもらえたならよかったと思い、その顔を覗く。
 王女と目が合って、軽く会釈をする。
 病気でやつれているとは言え、やはり王女は美しい。この子をブスなんて言うキツネ目はバカだよ。
 婚約解消は大ごとなので隠しておくわけにもいかないと思い、俺は廊下であった出来事をオブラートに包んで説明する。

「あのですね、それで突然なんですけど、流れでですね、ヴェゼル王子と王女様の婚約はなかったことになりまして、ヴェゼル王子は国に帰ることになりました」

 それを聞いた部屋の全員が目を丸くして驚いた。

「まあ!」

 王女も大きく開けた口に手を当てて驚く。

「でもですね、ゴライアスさんだけ残ってくれるそうです」

「ヴェゼル殿下は帰られることになりましたが、私はこれまで王女様の治療に関わって来た身として、最後までご一緒させてもらいたいと思います。よろしくお願いします」

「ゴライアス先生、ありがとうございます」

 頭を下げる坊主の医師に、王女はお礼を言う。
 ちょっと騒ぎになってしまったが、結果的にはあんなやつとの婚約が解消できて良かった、良かった。

「それでは別室で、処方する薬について話し合いましょう」

 話がひと段落したところで、王家侍医ミハエルさんがそう言うと、部屋にいた医師たちはミハエルさんに続いて部屋を出て行く。
 俺も一緒について行こうとした時、ロデリック王太子に引き留められる。

「カイ。少し良いか?」

「あ、はい。ファランさん……」

「分かりました。先に行ってますね」

 ファランさんの許可をもらい、俺は部屋に残る。みんなが部屋を出たところで俺は王太子に尋ねた。

「なんでしょうか?」

「カイ、すまなかった!」

「えっ?」

「先ほどはお前が止めてくれなければ、あれくらいでは済まなかった。それに、俺の代わりにオブラートに包んで説明してくれてありがとう」

「いや、王女様に止めてって言われたんで」

「お兄様は私の事になるとすぐに人が変わってしまうんですよ」

 エリス王女にそう言われ、ロデリック王太子は恥ずかしそうに頭をかく。
 俺も王女の悪口を言わないように気を付けよう……。

「それに、お父様が決めたこととは言え、私もヴェゼル王子は苦手でしたので、破談になったと聞いてちょっと安心してしまいました」

 そうだったのか。それは良かった。
 それに気のせいか王女の様子も、さっきより少し明るくなった気がする。

「それじゃ、俺もみんなの所へ行っていますね」

 そう言って俺は部屋を出た。


 俺がその部屋に入ると、侍医ミハエルさんと王女の治療に当たっている医師4名、ファランさん、クロエ、そしてコーネリウス王国の医師ゴライアスさんの8名がテーブルを囲んで、王女の治療方法について話し合いをしていた。
 それぞれの診断結果と治療方針についてはこうだ。

・ミハエル→完治不可能。楽になるための痛み止め処方と、精神的なケアの実施
・ゴライアス→完治不可能。悪化を遅らせるための手当ての実施
・ファラン→おそらく完治不可能。薬草を処方して様子を見たい

 残念ながら、やはり全員が、エリス王女の病気はもはや治らないレベルまで悪化しているという診断結果だった。

 それと、ミハエルさんとゴライアスさんの話を聞いていて分かったことがある。コーネリウス王国では病気になった部位は切除したり、薬で病気を殺すという発想で治療するのに対し、グリセリア王国では、病気を治すのは自分の力であり、薬はその体の自己治癒の手助けをするという考えで治療しているという事だった。
 地球で言う、西洋医療と東洋医療の違いに似ている気がする。ただ違うのは、この世界には魔法というものがあるという事だった。
 魔法と言っても、火の玉を飛ばしたり雷を落としたりするものではないらしい。
 ゴライアスさんのスキル≪手当≫は、触った箇所の自己治癒を推進させるものらしい。現在ゴライアスさんによってエリス王女は延命処置をされているという事だった。
 ゴライアスさんの治療では、通常≪手当≫で治せない病気は薬で強引に殺すか手術で切除するらしいが、エリス王女の場合は転移先が多すぎてもはや手遅れらしい。

「私がここに来るのがもう少し早ければ、病気の転移部分を切除して完治させることができたかもしれません。今言ってもどうしようもないことですが」

 だがミハエルさんの治療は違う。どうも超常現象的な事を信じているかのようだった。

「私たちがいくら治療をしても、生きようとする気力の無い患者を救うことはできない。その逆も然り。人間の身体というものは未知の可能性を秘めている。いくら私たちの力が不足していても、強く生きようとする者は自ら病気を治してしまう事もあるのだ。今はエリス王女に、強く生きようと思う気持ちを持ってもらうよう努力するのが大事だ」

 自分のできる治療を諦めて非現実的な事を言っているように聞こえるが、でも俺にはミハエルさんの言う事がなんだか分かるような気がした。思わず口を挟んでしまう。

「お……俺も、40℃の熱が出て寝込んでいた時に楽しみにしていたバンドのニューアルバムが届いて、それを夢中で聴いていたら、気付けばいつの間にか平熱になっていた事があります!」

 思わず自分の体験を話してしまう。俺は興奮すると突然語りだす癖があるのだけれど、ここは異世界だという事を忘れていた。ニューアルバムとは?と、みんな不思議そうな顔をしてたけど、会議の本題と無関係なのでスルーしてもらえた。気を付けたい。

 ファランさんが今回初めて診察をし、処方すると決めたいくつかの薬について、みんなに説明を始めた。
 その中でアロエについては、これまでみんな聞いたことの無い薬草という事で、全員に確認してもらう。
 ミハエルさんとゴライアスさんは既に確認済みだったが、ミハエルさんの部下の医師4名は、それを鑑定すると、その万能性に「おお!」という声が漏れた。

「確かにどんな病気にも効きそうな素晴らしい薬草だが、効果が弱いのが気になるな」

 そんな声も聞こえてきたが、今一番期待ができる薬草はアロエだろうとの結論だった。
 処方する薬についての確認が取れた後、ファランさんは調合を始める。

 その間、俺とクロエはミハエルさんから

「年齢が近い君たちからも、エリス王女を励ましてやってくれ」

 と頼まれ、深く頷いた。

 そして俺たちは、ファランさんの薬を飲んでもらうため、再びエリス王女の部屋へと向かった。
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