先生、おねがい。

あん

文字の大きさ
上 下
23 / 329

22

しおりを挟む




 「──ん」


 (何だろう。誰かの声……?)

 
 「──ん。しーん」


 心地良くて、胸があったまる優しい声。


 「心」


 (そうだ。この声は……)


 「せんせ……」

 「あ、起きた」


 目を覚ますと、ぱちりと合わさった視線。

 見たことない黒縁眼鏡の奥で、優しい色を含んだ綺麗な黒い瞳。


 「眠たいなら寝てて良いって言ったろ?こんなとこじゃ、風邪引く」

 「……?」


 だからお言葉に甘えて寝たのだけれど、何か間違ってしまったのだろうか。頭を傾げる俺に、先生は苦笑を漏らす。


 「心、寝ぼけてる?俺ももう寝るから、取り敢えずおいで」

 「どこに……?」

 「どこって、ベッド」


 言われるがまま手を引かれて連れてかれたのは寝室。ベッドを見たままぼーっとする俺の身体を優しく横たえた先生が、自らも布団の中に入って眼鏡を外し、見慣れた顔に戻った。


 「ごめんな。うち客用布団ないから、買うまでは我慢して」

 「布団……ぁ!」


 先生のその行動と言葉をやっと理解した俺は起き上がって、リモコンで電気を消そうとする先生の手を掴む。


 「い、いいですっ。俺、あっちで寝ます」

 「何言ってんだ。そんな遠慮しなくていいよ」

 「で、でも……狭いですよ?」


 元々先生一人で寝ていたベッドで二人は狭いし、こんな状態じゃ先生の身体は休まらないと思う。たかが居候の身でそんな迷惑は掛けられない。


 「でも、心はベッドに寝かせてあげたいし。だからと言って、俺がリビング行っても気にするだろ?」

 「あ、当たり前、です……だから、俺があっちに」

 「大丈夫。これ一応 セミダブルだから」


 ベッドから出る間も無く再び横たえられてしまった。手際よく掛け布団をかけられ、続いて部屋の明かりが消える。


 「で、でも……やっぱり俺──」


 いくら良いと言われても、やっぱり申し訳なくてベッドから出ようとした俺だけど。


 「こーら」


 と、不服そうな声を出した先生に、なんと腰までホールドされてしまいました。


しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

そして全てが奪われた

BL / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:205

出逢えた幸せ

BL / 連載中 24h.ポイント:56pt お気に入り:463

キスだけ、できない

BL / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:23

春に落ちる恋

BL / 連載中 24h.ポイント:28pt お気に入り:658

カラダの恋人

BL / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:66

ネームレスセックス

BL / 完結 24h.ポイント:49pt お気に入り:28

エリート先輩はうかつな後輩に執着する

BL / 連載中 24h.ポイント:3,629pt お気に入り:1,694

処理中です...