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しおりを挟む(そ、そうだった……!)
最近は可愛い姿ばっかり見てたから、ついつい忘れていたけど、蓮君はおばさん曰く『無愛想』なのだった。
(俺も初めて会ったとき、「ちっさ」って言われちゃったもんなぁ)
最初は上手く関係を築けるか不安だったけれど、先生の名案のおかげで仲良くなれたのだった。
「は?何こいつ」
ほのぼのとした気持ちで初めてのことを思い出していた俺とは裏腹に、栗原君はピキッとした顔で、ピクピクと口端を引きつらせていた。そんな栗原君に対して、松野君は心底面白そうにケラケラと笑いを漏らす。
「出た出た、栗原の短気癖」
「いやこれは普通にムカつくでしょ。むしろ何でそんな楽しそうなの松野」
「ご、ごめんね栗原君っ。蓮君ちょっと、ひ、人見知りなところがあって!」
「人見知りぃ?」
(く、口調が愛知君みたくなってる……)
これは相当お怒りだと悟った俺は、冷や汗をかきながら首を見上げるように捻って、後ろにくっついている蓮君の顔を覗き込んだ。
「れ、蓮君っ。二人は俺の大事なお友だちだから、仲良くしてくれると嬉しいなっ」
「……」
「蓮君?」
「……ずるいから」
「え?」
「一緒の学年で、同じクラスで、心と四六時中一緒にいれるのずるいし、羨ましい……」
「……!」
拗ねた顔をする蓮君にドキッと胸が跳ねる。
(はぅっ……やっぱり可愛い……!)
どうして蓮君はこんなにも俺に懐いてくれているのだろう。それが不思議で、でも確かに嬉しくて、きゅんきゅんと胸を高鳴らせていると、すかさずツッコミの声が。
「いや四六時中は一緒にいないから」
「栗原、それは野暮さ」
「だって事実じゃん。てかなに?こいつも望月君をってこと?」
「だろうねー。年下まで魅了しちゃうなんて、さすがもっちー」
(……?)
二人の会話にきょとんと首を傾げていると、突然、女の子の悲鳴にも似た叫び声が耳を劈いた。
「えー⁉︎高谷先生の弟⁉︎」
「多分ね。あの子、高谷蓮くんだよ。剣道めちゃくちゃ強いって、同中の子に聞いたことある」
「ひゃー!兄弟揃ってハイスペック!」
そしてその声に、ちょうどドアから顔を出したのが……。
「君たち何騒いでるの」
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