先生、おねがい。

あん

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 (け、喧嘩っ⁉︎)

 戸塚君が山田君の頭を掴んで力を込めている様子に、あたふたする俺だけど、内山君、松野君、愛知君は、山田君そっちのけで、律さんとのおしゃべりを楽しんでいた。

 「山田が元カレ面して返り討ちにあってやがる」
 「あっは。あの子面白いよねー。たけるんだっけ?」
 「そうですー、山田健ことたけるんですー」
 「律さんって、もっちーのことオドオドちゃんって呼んでますけど、何か由来があるんですかぁ?」
 「んふふ。それはね──」

 (すごい……もう馴染んでる……)

 すっかりみんなの輪に溶け込んでいる律さん。俺のときもあっという間に距離が近くなったし、律さんのコミュニケーション能力は本当にすごい。その五分の一……いや、十分の一でも見習いたい。
 そんなことを思いながら、ほのぼのとしていると、ずっと隣にいた栗原君がコソッと耳打ちをしてきた。

 「望月君。みんな律さんに懐き始めたし、こっちはこっちで遊んどくから、望月君は彼氏と二人で回っても良いんだよ?」
 「ふぇ?」
 「だって、元々デートの予定だったんでしょ?」
 「あ……で、でも……」

 律さんは察しが良いから協力してくれてるだけで、元々は戸塚君と遊ぶためにここに来ていたのだ。俺と戸塚君は実際は恋人じゃない。だから、こんな風に気を回してもらっても、素直に受け入れるわけにはいかないのだった。

 「んー?俺のことは気にしなくて良いよー、オドオドちゃん。俺は、このウッチーに相手してもらうからっ」

 俺の困惑顔を見逃さなかった律さんが、グイッと腕を引き寄せる。それも、内山君の腕を。

 「ウッチーって……お、俺っスか⁉︎」
 「うんオレオレ。君、背ぇ高いし、顔もイケてるし、おにーさん好みだなぁ……君はどう?年上興味ない?」
 「い、いや俺っ、男は経験ないし!いや、律さんはめちゃくちゃ綺麗っスけど!」
 「あはっ。照れてるの?かーわいっ」
 「〰︎〰︎っ!」

 首を律さんの細い指でツーとなぞられて、顔を真っ赤にする内山君。律さんのその仕草は色っぽくて、なんだかこっちまで気恥ずかしくなってしまう。
 普段無邪気に振舞ってる律さんだけど、こういう色気のある一面を見ると、やっぱり年上のお兄さんなんだなって実感する。『年上』というか、『オトナ』って感じだ。

 「あははー。内山が年上美人に魅了されてるー」
 「内山タッパあるからねぇ。意外とモテるよねぇ」
 「モテるというか、遊ばれてるだけにも見えるけどね……」

 
 


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