先生、おねがい。

あん

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 そう言うと、戸塚君は強張った表情を一転させて、頭にハテナマークを浮かべ始めた。

 「……は?添い寝?」

 (……?どうして戸塚君、不思議そうな顔してるんだろう?)

 俺は不思議に思いながらも、コクリと頷く。

 「うん。風邪のときは、無性に寂しくなるから、抱き枕代わりが欲しいんだよね?」
 「抱き、まくら?」

 またまた俺は、コクリと頷く。
 風邪のときは寂しい。自分のときは、このまま一人で死んでしまうかもって怖くなるらい弱ってしまう。戸塚君がなるかは分からないけど、さっきのお母さんを見るに、戸塚君は俺とどこか似てるんじゃないかって思うから。

 「俺がそれになるから、だから、安心して、ちゃんと休んでください」

 ただ寝るだけだとしても、先生にちょっぴりお説教されるかもしれない。でも、ちゃんと話せば分かってくれるはず。……本当はちょびっと怖いけど。

 「……なんだそれ」
 「だ、大丈夫だよ。どうなっても俺の責任だから」
 「……はぁ」

 呆れた声を出した戸塚君に突然ギュッと抱きしめられ、俺は思わず体を硬直させてしまう。

 「と、戸塚君っ」
 「黙れ。抱き枕、なるんだろ」
 「う、うん……」
 
 そうだった。
 俺は抱き枕の代わり。抱かれない抱き枕なんてない。

 「冷てー……」

 戸塚君が俺の肌に触れる。そこがジワッと熱くなる。

 「ん……」

 俺の肌の上を動く大きな手。俺は、こそばゆさに身をよじった。
 目の前にある戸塚君の胸からは、ドクドクと心臓の音が聞こえた。つられて俺の心臓の音も、なんだか速くなる。

 「お前の匂い……」
 「え、く、臭い?」

 (遊園地でいっぱい遊んだ上に、お母さんに言い返す時、変な汗かいちゃったから……)

 心配になったけど、戸塚君は首を左右に振って否定してくれて、「忘れろ」と小さく呟いた。
 それからしばらくは無言が続く。俺の身体を触る手が、たまに新たに冷たい箇所を求めて動くから、まだ寝てはいないのだろう。

 (聞いても、いいのかな……)

 さっきより若干だけど、戸塚君のまとう雰囲気が良くなったので、俺は恐る恐るながらも、ずっと気になってることを聞いてみることにした。

 「ねぇ、戸塚君……」
 「あ?」
 「まさとさん……お兄さんのこと嫌いなの?」
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