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蝋燭の館
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ツンと刺されたような頬の冷たさに、僕は目を覚ました。あわてて体を起こすと僕は知らない場所にいた。辺りを見回してみると、ここは小さい部屋のようだった。壁には大きな蜘蛛の巣が張り巡らされ、いかにもオンボロという感じだった。それにしても、どうしてこんな場所で眠っていたのだろうか。僕には何故か、過去の記憶が一切なかった。ここに来た記憶もなければ、自分の名前すら覚えていない。
そんなことを考えていた時、突然背筋が凍るような冷たい風が部屋に入ってきた。急いで後ろを振り返ると、そこには扉があり、小さなネズミが入るほどの幅が開いていた。この部屋から出られる。そう思った僕は小さな希望を胸にひそめ、恐る恐る扉へと向かった。
これが悲劇への1歩のとなった。
ギギギッという錆び付いた扉の音と共に、耳元を冷たい風がくすぐった。人のいる気配はしないが、どこか足音が聞こえてくるような気もする。少しずつ歩いていくと、そこには1本のろうそくとろうそく立てがあった。ろうそくの火は既に付いていて、風に煽られ右に左に揺れている。僕はろうそくの火の温かみを感じながら、さらに1歩、2歩と歩み出した。さっきよりも足が軽い。ろうそくの火のおかげだろうか。
でも油断をしてはいけない。もし、誰かに出会ったら、僕がここにいる理由を教えてもらおう。そう心に決め、また歩みを進めた。
しばらく歩いていると、そこには階段があった。慎重に1段ずつ下りていった。石でできた冷たい階段は、僕の恐怖を一層と増していった。どうやらこの建物は、大きな古い館のようだ。ここが1階。すると目の前にろうそくが置いてあった。僕はハッと思いついた。急いで今来た道を戻り、先程の場所のろうそくを手に取ると、階段のろうそくに火をうつしてあげた。恐怖が少しでも減るようにと、部屋を明るくした。火は、ジワーっという音を立てて燃えていた。だが、こんな所で日に見とれている場合ではない。再び寒さに凍える足を進めた。
すると、そこには信じられないくらい大きな扉があった。開いてみとうとしてもビクともしない。鍵が閉まっているのだろうか。仕方なく、別の場所を探ることにした。この館の中には、自分より背の高い時計や、どこかの国の読めない文字がびっしり並んだ本がたくさんある本棚。そして、中でも1番不気味なのが、色々な人の肖像画が並ぶ資料室のような部屋だった。まるでたくさんの亡霊に見つめられているような気分だ。
そのときふと思った。なぜだろう、ここに来た記憶があるのは…。僕の小さな頭の中に微かな記憶が残っていた。
そんなことを考えていた次の瞬間。遠くの方でガチャッという大きな音と共に、ギーッという、先程よりも大きな扉の音がした。僕すぐにそのにあった机の下に潜り込んだ。
だがその時、ふと我に返った。どうして僕は人がいるはずもない館で人に脅えているのだろうと。そして、もし人がいれば助けを求めようとしていたのに。僕は机の下から飛び出して、資料室から出て、音が鳴った部屋へ歩き出した。
音が鳴った部屋に着き、ドアノブに手をかけ、ゆっくりと下へ下ろすと、扉が開いた。どうしてさっきは開かなかったのだろう。そう思いながらも、中が気になってしまい、すぐに中へ入った。
するとその部屋は、とても縦に長いテーブルがいくつかあった。
食事をとる部屋だろうか。テーブルの上に手を乗せながら歩いていくと、何かに触れた感触があった。そこにあったのは、1枚の紙。中を開いてみると、赤い文字でこう書いてあった。
「Escape to!」
僕は、急いで考えた。
「逃げて…?」
ハッとし、顔を上げると、そこには黒ずんだ白いシャツ身につけ、体も顔もボロボロな女性がいた。彼女は奇声を上げ、走り出してこちらに向かって来た。僕は必死になって逃げた。あの大きな扉の目の前まで来て、急いで扉を開けるも、開かない。すると次の瞬間。ガシッと体を掴まれ、あの怪物に捕まった。もがいても、蹴っても効果はない。そのまま僕は意識を失った。
ツンと刺されたような頬の冷たさに、また僕は目を覚ました。僕は階段の下で眠っていた。ろうそくに火がついている。僕には記憶が一切ない。どうしてここにいるのかも、自分の名前も。
あらかた部屋を周り、最後の大きな扉の部屋に行こうとした瞬間。扉の開く音がした。僕は急いで机の下に潜り込んだ。なぜだか、しばらくこのまま動けなかった。1分ほど経ち、机から出、音を立てないようにその部屋の前を通り過ぎ、玄関のような扉の前で先程までなかったはずの鍵を手に入れて、2階へ行った。廊下の1番奥にある部屋で鍵を使って中に入ると、ろうそくが1本あった。僕は自分の持っていたろうそくの火を、そのろうそくにも分けてあげ、恐怖が少しでも減るようにと、部屋を明るくした。
その時、1匹の蛾が寄ってきたので、手で追い払い、部屋を見回した。どうやらここは、書斎のようだ。辺りを見回していると、小さな足音が聞こえた。その時僕は、突然体中に鳥肌がはしった。謎の恐怖と「また」という謎の言葉が頭の中に広がる。すぐに机の下に隠れる。すると、同時にどこか見覚えのある怪物のような女性が入ってきた。しっかりとは歩けないらしく、何度も倒れそうになっている。僕は、音を立てないように必死で隠れていた……はずなのに、彼女と目が合った。光のない目。それはとても恐ろしく、どこか悲しげだった。逃げ場のなくなってしまった僕は、彼女が手を伸ばした瞬間に目を閉じた。その時ふと気がついた。ろうそくの火。これがいけなかったのだ、と。
ツンと刺されたような頬の冷たさに、また僕は目を覚ました。ここは、書斎だろうか。上を見ると、ろうそくに火がついている。その時、小さな足音が聞こえた。僕には記憶がない。が、謎の恐怖と痛みによって、隠れると、同時に扉が開いた。その時、僕の手が勝手に動き出し、持っていたろうそくの火を摘むようにして消した。僕は息を潜めて、見つからないようにじっと怪物を見つめていた。
しばらくすると、怪物は部屋を出て行き、辺りは静まり返った。僕はそっと机の下から出、元からついていたろうそくの火から自分の持っていたろうそくに火をつけた。
部屋から出て、ゆっくり歩き出した。辺りは暗く、とても寒い。寒さと恐怖で、体はガクガクと震えていた。
その時、壁に鍵がかけてあるのを見つけた。僕は、先の事も考えたら、取っておいた方がいいのではないかと思い、手を伸ばした。
でも届かない。かなり高いところにあるその鍵は、ジャンプすれば届きそうだった。
僕は思い切ってジャンプすることに決めた。手を伸ばして大きくジャンプをしたが、もう少しという所で届かなかった。
すると、次の瞬間。すぐ近くで扉の開く音がした。そうだ。着地する時に、音を立ててしまっていた。気がつくのが遅かったのか、あの怪物はもう目の前にいた。もう間に合わないとは分かりつつも、踵を返し、急いで逃げた。
階段を急いで下り、火のついているろうそくの横を通り過ぎ、玄関のような扉のドアノブに手を置いた瞬間に捕まった。激しい痛みが体中をはしった。そして僕は意識がなくなった。
「あぁ~、もう下手くそだな~。次、俺がやるから貸して。」
「このゲーム、難しすぎるだろ。謎解き多いし。」
「お前ちゃんとセーブした?ろうそくの火をつけた所がセーブポイントってことは…。すげぇ前じゃん!めんどくせぇ。」
僕は永遠にこの館から抜け出せないのだろうか。
意識が無くなる度に記憶も消える。
僕は一体誰で、どこから来たのか。
それは自分でも分からない。
こんな戦いがいつまでも続くのだろうか。
僕は今も"蝋燭の館"で彷徨い続けている…。
そんなことを考えていた時、突然背筋が凍るような冷たい風が部屋に入ってきた。急いで後ろを振り返ると、そこには扉があり、小さなネズミが入るほどの幅が開いていた。この部屋から出られる。そう思った僕は小さな希望を胸にひそめ、恐る恐る扉へと向かった。
これが悲劇への1歩のとなった。
ギギギッという錆び付いた扉の音と共に、耳元を冷たい風がくすぐった。人のいる気配はしないが、どこか足音が聞こえてくるような気もする。少しずつ歩いていくと、そこには1本のろうそくとろうそく立てがあった。ろうそくの火は既に付いていて、風に煽られ右に左に揺れている。僕はろうそくの火の温かみを感じながら、さらに1歩、2歩と歩み出した。さっきよりも足が軽い。ろうそくの火のおかげだろうか。
でも油断をしてはいけない。もし、誰かに出会ったら、僕がここにいる理由を教えてもらおう。そう心に決め、また歩みを進めた。
しばらく歩いていると、そこには階段があった。慎重に1段ずつ下りていった。石でできた冷たい階段は、僕の恐怖を一層と増していった。どうやらこの建物は、大きな古い館のようだ。ここが1階。すると目の前にろうそくが置いてあった。僕はハッと思いついた。急いで今来た道を戻り、先程の場所のろうそくを手に取ると、階段のろうそくに火をうつしてあげた。恐怖が少しでも減るようにと、部屋を明るくした。火は、ジワーっという音を立てて燃えていた。だが、こんな所で日に見とれている場合ではない。再び寒さに凍える足を進めた。
すると、そこには信じられないくらい大きな扉があった。開いてみとうとしてもビクともしない。鍵が閉まっているのだろうか。仕方なく、別の場所を探ることにした。この館の中には、自分より背の高い時計や、どこかの国の読めない文字がびっしり並んだ本がたくさんある本棚。そして、中でも1番不気味なのが、色々な人の肖像画が並ぶ資料室のような部屋だった。まるでたくさんの亡霊に見つめられているような気分だ。
そのときふと思った。なぜだろう、ここに来た記憶があるのは…。僕の小さな頭の中に微かな記憶が残っていた。
そんなことを考えていた次の瞬間。遠くの方でガチャッという大きな音と共に、ギーッという、先程よりも大きな扉の音がした。僕すぐにそのにあった机の下に潜り込んだ。
だがその時、ふと我に返った。どうして僕は人がいるはずもない館で人に脅えているのだろうと。そして、もし人がいれば助けを求めようとしていたのに。僕は机の下から飛び出して、資料室から出て、音が鳴った部屋へ歩き出した。
音が鳴った部屋に着き、ドアノブに手をかけ、ゆっくりと下へ下ろすと、扉が開いた。どうしてさっきは開かなかったのだろう。そう思いながらも、中が気になってしまい、すぐに中へ入った。
するとその部屋は、とても縦に長いテーブルがいくつかあった。
食事をとる部屋だろうか。テーブルの上に手を乗せながら歩いていくと、何かに触れた感触があった。そこにあったのは、1枚の紙。中を開いてみると、赤い文字でこう書いてあった。
「Escape to!」
僕は、急いで考えた。
「逃げて…?」
ハッとし、顔を上げると、そこには黒ずんだ白いシャツ身につけ、体も顔もボロボロな女性がいた。彼女は奇声を上げ、走り出してこちらに向かって来た。僕は必死になって逃げた。あの大きな扉の目の前まで来て、急いで扉を開けるも、開かない。すると次の瞬間。ガシッと体を掴まれ、あの怪物に捕まった。もがいても、蹴っても効果はない。そのまま僕は意識を失った。
ツンと刺されたような頬の冷たさに、また僕は目を覚ました。僕は階段の下で眠っていた。ろうそくに火がついている。僕には記憶が一切ない。どうしてここにいるのかも、自分の名前も。
あらかた部屋を周り、最後の大きな扉の部屋に行こうとした瞬間。扉の開く音がした。僕は急いで机の下に潜り込んだ。なぜだか、しばらくこのまま動けなかった。1分ほど経ち、机から出、音を立てないようにその部屋の前を通り過ぎ、玄関のような扉の前で先程までなかったはずの鍵を手に入れて、2階へ行った。廊下の1番奥にある部屋で鍵を使って中に入ると、ろうそくが1本あった。僕は自分の持っていたろうそくの火を、そのろうそくにも分けてあげ、恐怖が少しでも減るようにと、部屋を明るくした。
その時、1匹の蛾が寄ってきたので、手で追い払い、部屋を見回した。どうやらここは、書斎のようだ。辺りを見回していると、小さな足音が聞こえた。その時僕は、突然体中に鳥肌がはしった。謎の恐怖と「また」という謎の言葉が頭の中に広がる。すぐに机の下に隠れる。すると、同時にどこか見覚えのある怪物のような女性が入ってきた。しっかりとは歩けないらしく、何度も倒れそうになっている。僕は、音を立てないように必死で隠れていた……はずなのに、彼女と目が合った。光のない目。それはとても恐ろしく、どこか悲しげだった。逃げ場のなくなってしまった僕は、彼女が手を伸ばした瞬間に目を閉じた。その時ふと気がついた。ろうそくの火。これがいけなかったのだ、と。
ツンと刺されたような頬の冷たさに、また僕は目を覚ました。ここは、書斎だろうか。上を見ると、ろうそくに火がついている。その時、小さな足音が聞こえた。僕には記憶がない。が、謎の恐怖と痛みによって、隠れると、同時に扉が開いた。その時、僕の手が勝手に動き出し、持っていたろうそくの火を摘むようにして消した。僕は息を潜めて、見つからないようにじっと怪物を見つめていた。
しばらくすると、怪物は部屋を出て行き、辺りは静まり返った。僕はそっと机の下から出、元からついていたろうそくの火から自分の持っていたろうそくに火をつけた。
部屋から出て、ゆっくり歩き出した。辺りは暗く、とても寒い。寒さと恐怖で、体はガクガクと震えていた。
その時、壁に鍵がかけてあるのを見つけた。僕は、先の事も考えたら、取っておいた方がいいのではないかと思い、手を伸ばした。
でも届かない。かなり高いところにあるその鍵は、ジャンプすれば届きそうだった。
僕は思い切ってジャンプすることに決めた。手を伸ばして大きくジャンプをしたが、もう少しという所で届かなかった。
すると、次の瞬間。すぐ近くで扉の開く音がした。そうだ。着地する時に、音を立ててしまっていた。気がつくのが遅かったのか、あの怪物はもう目の前にいた。もう間に合わないとは分かりつつも、踵を返し、急いで逃げた。
階段を急いで下り、火のついているろうそくの横を通り過ぎ、玄関のような扉のドアノブに手を置いた瞬間に捕まった。激しい痛みが体中をはしった。そして僕は意識がなくなった。
「あぁ~、もう下手くそだな~。次、俺がやるから貸して。」
「このゲーム、難しすぎるだろ。謎解き多いし。」
「お前ちゃんとセーブした?ろうそくの火をつけた所がセーブポイントってことは…。すげぇ前じゃん!めんどくせぇ。」
僕は永遠にこの館から抜け出せないのだろうか。
意識が無くなる度に記憶も消える。
僕は一体誰で、どこから来たのか。
それは自分でも分からない。
こんな戦いがいつまでも続くのだろうか。
僕は今も"蝋燭の館"で彷徨い続けている…。
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