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第二章
第7節 真祖革命派
しおりを挟むヴェルフェゴールとマリウスは、王国の帝都にある、とある貴族邸宅に転移した。貴族邸宅とはいっても、とうの昔に廃れて廃屋に近いが。外見は蔦の張った古い屋敷だが、中は豪奢な造りに改造され生活しやすくなっているようだ。廊下は広く、普通の町のように商店のような簡易的な店まである。
「ヴェルフェゴール様、マリウス様!戻られたのですね」
屋敷の中には数百人もの人が暮らしていた。狭さを感じないのは、魔法で部屋を拡張しているからだろう。あるものは食事をし、あるものは剣術で訓練し、あるものはドラゴンの世話をする。まるで小さな町のように活気付いていた。
1人の青年がヴェルフェゴールに駆け寄って来た。
「ああ、戻ったよ。あの御方はどちらに?」
「教会にいらっしゃいますよ。儀式中です。そろそろ終わる頃だと思います」
「そうか。君、先に行って私が行くことを伝えておくれ」
「はい!」
青年はヴェルフェゴールをとても慕っているようで、ヴェルフェゴールの言う通りに教会に転移したようだ。
ヴェルフェゴールとマリウスはゆっくりと廊下を歩いて教会に向かうようだった。
教会、と行ってもこの屋敷の部屋の1つで、あの御方の部屋に相当する場所だ。そして、この町のような巨大な空間はもちろん、あの御方が作り出したものである。
「あっ、マリウス様だ!遊ぼう!」
この空間には、子供もたくさんいた。マリウスは強面だが子供達には懐かれているようだった。
「そうしたいのはやまやまだがこれからあの御方に会いに行かなくては」
「ははは、いいよ、マリウス。私だけであの御方に報告しよう。遊んでおあげなさい」
「やった!ヴェルフェゴール様ありがとう!!マリウス様、魔法教えてよ!」
仕方ないな、とマリウスは子供達に引っ張られ何処かに行ってしまった。
そうこうしているうちに、ヴェルフェゴールは教会の扉の前に立っていた。ノックの後、重たい扉を開ける。
そこには、祭壇に白いローブを着た男と、祭壇に横たわる若い女が居た。
男の瞳は薄暗い中でもはっきりと緑色に輝き、薄茶色の長い髪が背中のあたりまで伸びていた。男の顔は、王太子によくにていた。ただ、王太子の様な笑みはなく、冷たい無表情であった。
「…ヴェルさん。今、儀式が終わったところです」
「御方様、ご報告したいことが」
「…奥で、聞きましょう」
祭壇の真後ろの壁にはステンドグラスが一面に貼られており、その隅に扉があった。御方様と呼ばれる男は、ヴェルフェゴールを伴って扉の中に入る。
そこは小さな執務室になっており、御方様は執務室の椅子に座った。
「ご報告申し上げます。透過魔法使いのガイアスですが、死亡致しました」
「!…ガイアスが…」
「森林保護区にて帝都の超級魔法使いと交戦、その後超級魔法使いに…。ガイアスが調教していた魔獣達もその超級魔法使いに処理されたものと考えます」
「…それはいいのです。ガイアスを思うと…私の力が至らないばかりにガイアスを…喪ってしまいました」
「…ですがガイアスは我々に新しい情報を与えてくれました。私がガイアスの元に行った時に見た相手…見たことのない超級魔法使いでした。王国の超級魔法使いは5人のはずです…つまり、6人めの超級魔法使いがいる様です」
「!!」
「しかもおそらく…今まで見た超級魔法使いの誰よりも強い…そう、感じました。しかし、彼は他の超級魔法使いと違い我々と同じ様な猜疑心を持っているようです。国王を偽物と言ったとき、彼は反発したり逆向したりしなかった…不思議です」
「…」
御方様は少し考えるようなそぶりを見せた。
「その魔法使いについて、王城にいるもの達に調べさせてみましょう。それと…ガイアスの葬いをお願いします…すまないね、ヴェルさん。苦労ばかりさせます」
「………いいえ、御方様の御心のままに」
ヴェルフェゴールは微笑んだ。御方様の顔に煌めくものがあった。ガイアスのために泣いているようだ。
ヴェルフェゴールは嬉しかった。御方様は喪った友を想って泣ける人だった。感情はあまりないものの、誰よりも心が優しい人なのだ、と思った。
御方様は、少し休むといって何処かに転移した。寝室に行ったのであろう。
一方、ヴェルフェゴール自身も謎の超級魔法使いについて探るべく何処かに消えた。
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