天才魔法使いの未来まで巻き込んだ隠し子騒動

藤田 晶

文字の大きさ
16 / 31
第二章

第8節 異変

しおりを挟む

ロイスとヘラが帰ってから、王族と超級魔法使い達は喧喧轟々会議会議の連続であった。
ガイアスの話はこうだ。あの御方の命令で新魔獣の合成をしていた、というものだ。真祖革命派のアジトや規模についても、どこかの屋敷とか数百人といったアバウトな感じであった。唯一聞き出せたのは、あの御方の側近がヴェルフェゴールとマリウスで、あの御方は表舞台には出ずに、"儀式"とやらを夜な夜な行なっているということ、敵の名前が真祖革命派だというくらいだろう。
ロイスは、ヴェルフェゴールとマリウスに会ったことを言わずにいた。どうも、ヴェルフェゴールが言った国王が"偽者"というのが引っかかるからかもしれない。

「はぁー、王様よぉ。もういいだろ?勘弁してくれ、眠たくてかなわねぇ。来週の定例会議でまた話そうや」
「ガーゴイル!しかしこれは国を揺るがす、ッ」
「陛下、俺ももう帰ります。帰ってきてから俺もヘラさんも休みなしです。眠たくて我慢できません。あとは勝手にやりたい人だけやってください」

ガーゴイルとロイスが痺れを切らした。なにせ、1日以上会議室に詰め込まれ会議しているのだ。ロイスもヘラも半分くらいは寝ていた。
苛立つ王族を、じいやが宥めた。

「ほっほっ、陛下。陛下もお休みになった方がよろしいですぞ。一度頭を冷やすのも大事です。皆さん、今日はこの辺で解散にしましょう。ロイス君、ヘラ君、2人ともお疲れ様でした」
「…そうだな。儂らも少し頭に血が上っていたようだ。また来週の定例会議で話そう」

超級魔法使いはじいや以外を残して、控え室に転移した。ロイスはそもそも魔法を使いすぎて眠気が酷かったのに、全く寝させてもらえないのは拷問だ。

「眠い………」
「おいロイス、もっとそっち寄れよ!俺が寝れねーだろーが!あっくそもう落ちてやがる」
「…ぐぅ」

面倒見の良いガーゴイルはソファーや簡易ベッドに倒れこんだ4人に毛布をかけると、余った小さめなリクライニングソファーに座った。
結局、超級魔法使い達5人は控え室のソファーに倒れこみ、翌昼まで目が覚めなかったという。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





一番最初に起きたのはガーゴイルだった。次に起きたのはロイスである。ロイスは気配の探知に秀でているので、ガーゴイルの気配に気づいた。
他の超級魔法使いを起こすのは簡単だ。抑えている魔力を最大限開放すればいい。勝手に起きる。
ロイスもぐいーっと伸びをすると寝てる間に回復した魔力量を確認するべく魔力を開放した。一気に室内がとんでもない魔力で満たされ、超級魔法使い達はそれで完全に起きた。

「ロイ君の魔力は抑えないと本当にやばいのよねぇ…魔王?みたいなぁ?…おはよぉみんな」
「おい、また寝てる間に服脱いだのか?ったくせめてローブ羽織れ!おい、寝ンな!ドラックイーン!!」
「んーよく寝た!ドラゴンの様子見に行かなきゃー!ちょっ、ドラックイーン!見えてる見えてる!」
「…おはようございます…ソファーで寝たから身体が痛い…ドラックイーンさん、服を着て」

各々のそのそと起き出し、ロイスも開放していた魔力を最小限に押さえ込んだ。この世界の魔法使いは、大体の人が魔力を最小限身体から放出し、それ以外の魔力は体内に保存している。ただ、最小限というのも限度があり、超級魔法使いの様に魔力量が多い者は他の魔法使いよりも最小限が多めだ。ロイスを一般人が見た瞬間に魔力量が多いと感じるのはこれが理由である。ロイスにとっての最小限が一般人にとっての最大なんていうのもザラである。だからこそ驚かれるのである。
やっとのことでドラックイーンに服を着せたガーゴイルがふわぁ、と欠伸をしながら何気なく王城の庭を見た。普段と違い、なにやらガヤガヤと騒がしい。
ロイスも窓から庭を見た。

「…なんだぁ?やけに人が集まってんな。侵入者か?」
「へぇ。城に侵入なんて珍しいね」
「おい見ろよ!あれは北部の長老たちじゃねぇか?なんだってこんな時期に…」
「!」

バタバタと超級魔法使い達は窓に集まる。
北部とは、王国の領土のうち北のほうの地域を表している。王国は、盆地の様に四方を山々に囲まれており、山が国境になっている。山より先は別の国だ。ウィテカー王国の北部は、北の国とのちょうど境目に当たる部分だ。北側の山の麓だという認識で間違いはない。
王国の領土は広いため、それぞれ自治するシステムがある。長老は、北部の地域を収める者を意味している。知事みたいなものである。
本来、長老たちは北部の気候の穏やかな冬の日に帝都にやってくる。冬以外は収穫や放牧のピークで忙しい。しかし、今は春から夏になる時期で一番忙しい時期なのにわざわざ帝都にやってきたようだ。

「変ねぇ…しかも、氷女に雪ドラゴンまでいるわよ?帝都に引っ越しでもする気?」
「皆さん雪が身体についている様に見えるのは気のせいでしょうか…」
「はぁあ…俺…今日は学園にでも行こうかな………」
「そりゃいいな。俺も今すぐ逃げ出したいぜ」

氷女は、文字通り氷魔法を得意とする種族だ。寒さに強い。雪ドラゴンは、蛇に小さな羽が生えたような生物だ。ドラゴンとついてはいるが、ジュニア達の様な上位生物ではない。いってしまえば雪や寒さに強いツチノコみたいなものである。若干魔法使えるので風魔法を使ってブリザードの中を空中散歩したりするのに便利らしい。メタスターでない人の欠かせない移動手段だ。
ロイスとガーゴイルの呟きも虚しく、超級魔法使いは王の間に呼ばれた。北部で何かがあったのだろう。

「国王陛下の御成でございます」

王の間のじいやが高らかに北部の長老たちや家臣達に言った。同時に、王族と共に超級魔法使いが転移してきた。超級魔法使い達は皆一様にフードを目深に被っている。じいやだけが、燕尾服で王の側に連れ添っていた。
北部の長老たちは頭を下げ、王からの言葉を待つ。

「皆の者、面をあげよ」

やっと、長老たちは王を見た。王は威厳のある風格で、穏やかに微笑んでいる。

「北部の長老様方、急な訪来に驚いたぞ。一体どうしたのだ?」
「お久しぶりでございます。……王にお願いがございまして、こうして罷り越した次第です」
「他でもない長老様方の願い、聞こう。如何した」

ブルブルと長老たちは震えている。王に畏怖しているわけではない。歯がゆさと恥ずかしさで震えているのだ。

「冬が、終わらないのです」
「?、なにを言っておる?今はもう初夏であろう」
「例年であればそうです。しかし、北部は今も雪に閉ざされています。それどころか毎日吹雪は強まり雪は降りしきるばかりなのです!!」
「な、なんと…!」

冬が終わらないとはどういうことなのだろう。季節を変えることができる魔法はないわけではないが、魔力がいくらあっても足りない。なにせ、北部全域を冬にするとなると、ロイスでも1時間持つか持たないかくらいの魔力量が必要になるだろう。それを数ヶ月だ。となると、魔法ではない別の何かがあると考えざるを得ない。
長老たちは、まくし立てるように言った。

「北部の北のほうにある集落からの救援要請があり、そこに向かうもどうしてもその集落に行くことができないのです。救援要請があったのが3日前、ものすごいブリザードに覆われて食事や燃料も尽きると…どうか王のお力をお貸しください!集落の者達を救っていただきたいのです!」
「もちろんだとも!どちらにせよ、冬が終わらない理由を探らねばならぬ。すぐに救助隊の編成をしよう。じいや、手配してくれ」
「あ、ありがとうございます、国王陛下!!」
「長老様方、旅の疲れもあろう。よく休むと良い。………下がってよいぞ」

ははっ!と嬉しげに答えた長老たちは、ホッとしたように部屋を退出した。
3日前に救助にいって、雪に強い北部の長老たちですらブリザードに敵わなかった。しかし、ほっておけず急いで帝都にやってきたのだろう。
王族達は、新たな問題にため息をつきながらも、国の民の不幸を良しとはしない。

「じいや、どのようにしたらよいだろうか」
「そうですなぁ。戦闘要員以外にも、治癒医師が必要でしょうな。食糧も必要になりますなぁ…そうそう、寒さや雪に強い特殊能力がある者も欲しいところですが…」
「ふむ。儂から王立治療院に話をつけよう。食糧や防寒具をすぐに用意させよう。じいや、あとは頼んだぞ!…全く…しかし一体なぜ冬が終わらないのだ?異常気象か何かにしても長すぎるだろう!」

治癒医師とは、その名の通り治癒魔法を得意とした医師である。治癒医師と呼ばれ、こちらも庶民向けの簡単な治癒魔法を扱う医師と、あらゆる傷や病を治す上級医師とにわかれている。しかし、治癒医師は大体が市井で生活し、貴賎を問わず治癒を行なっている。
王立治療院は、王国が作った総合病院のようなもので、治癒魔法の研究や治癒医師の育成、その他一般の治癒などを行なう施設である。国内の医師は全員王立治療院に所属する。
ブツブツと王は呟きながらも、自室に戻って行った。他の王族もそれぞれ部屋に戻ったようだ。
じいやはドクターを王族達の護衛に回すと、残る超級魔法使い5人で立ち話をする。

「戦闘要員は…ロイス君に任せるとして、あと1人くらい超級魔法使いを出しておきたいところですねぇ?」
「…俺は確定なんですか………寒いところ嫌なのに…」
「俺はパスだぜ!さみーとこに行くくらいなら護衛してたほうが数倍ましだぜ」
「いえ、そうではなく…治療院から派遣されるのは当然一番優秀な治癒医師でしょう。ですので、ドラックイーンさん」
「もちろん私が行くわぁ♡最近私外に出てないもん!たまには出なくちゃね~」

決まりましたね、とじいやは笑った。おそらくじいやの中では初めからロイスとドラックイーンが行くと決まっていたのだろう。
ドラックイーンは嬉しげに身体をくねくねしている。

「問題は雪に有利な人ですが…うーん、ジュニア様でしょうねぇ」
「雪竜であればいるぞ。私の親衛隊員のドラゴンだ」

ジュニアは天竜なので、天気や気象を操るのを得意としている。これは当然だろう。
しかし、ロイスも予期せぬ爆弾をヘラが投下した。
ロイスは間髪を入れずに待ったをかける。

「駄目だ。絶対に今回の任務には参加させない」
「…おやおや。ロイス君が反対するとは珍しいですな、ほっほっ。しかし困りましたねぇ天竜でも雪属性の竜は欲しいところです」
「…雪竜だけならいい。だがフェ…主人の魔法使いが参加をするなら俺は今後一切超級魔法使いの仕事はしないからな。あんたらを全員殺して俺も死ぬ」

ゾゾッ、と超級魔法使いの背筋が凍る。じいやは飄々としていたが、他の超級魔法使いは冷や汗をかいてたじろぐ。ロイスの恐ろしいほどの殺気が、超級魔法使い達を畏怖させている。
ロイスはフェリを危険に晒したくなかった。特に、状況の読めない任務は余計だ。たとえロイスがこの任務から外れ、フェリが行くことになったとしても、ロイスは隠れてついて行くしなんなら選んだじいやを殺すくらいの覚悟はあった。

「まぁ待ちなさい、ロイス君。心配しなくても、竜だけ借りるつもりですよ。この任務は極秘扱いですし、人数も最小限にするつもりですよ、ほほっ」
「…なら、いい。好きにえらんでください」 

ロイスから出される殺気がなくなると、超級魔法使い達はそっと溜息をついた。ロイスも殺気なんてなかったかのようにいつもの無表情に戻って落ち着いている。
一方、ヘラは地雷を踏んだせいで今度はガーゴイルとドラックイーンから殺気を感じているのはこの際仕方のないことだろう。

「しかし驚きましたなぁ、ロイス君に執着心があるとはの。ほっほっ、じいに紹介がてら雪竜の主人に合わせて貰いましょう、ほほっ、ほ…」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話

yuzuku
ファンタジー
ベランダから落ちて死んだ私は知らない森にいた。 知らない生物、知らない植物、知らない言語。 何もかもを失った私が唯一見つけた希望の光、それはドラゴンだった。 臆病で自信もないどこにでもいるような平凡な私は、そのドラゴンとの出会いで次第に変わっていく。 いや、変わらなければならない。 ほんの少しの勇気を持った女性と青いドラゴンが冒険する異世界ファンタジー。 彼女は後にこう呼ばれることになる。 「ドラゴンの魔女」と。 ※この物語はフィクションです。 実在の人物・団体とは一切関係ありません。

精霊姫の追放

あんど もあ
ファンタジー
栄華を極める国の国王が亡くなり、国王が溺愛していた幼い少女の姿の精霊姫を離宮から追放する事に。だが、その精霊姫の正体は……。 「優しい世界」と「ざまあ」の2バージョン。

精霊に愛される(呪いにもにた愛)少女~全属性の加護を貰う~

如月花恋
ファンタジー
今この世界にはたくさんの精霊がいる その精霊達から生まれた瞬間に加護を貰う 稀に2つ以上の属性の2体の精霊から加護を貰うことがある まぁ大体は親の属性を受け継ぐのだが… だが…全属性の加護を貰うなど不可能とされてきた… そんな時に生まれたシャルロッテ 全属性の加護を持つ少女 いったいこれからどうなるのか…

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした

たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。 死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...