バルタゴ戦記

カササギ

文字の大きさ
63 / 68

酒好き

しおりを挟む
(さて泊まる場所に移る前に……)

馬車へと向かい中に入る。

「ガルダ、泊まる場所を確保した。
明日迎えに行くから今日はゆっくり休んでくれ。風呂付きだから寛げると思うぞ。」

「迎えにくるだと?一緒の宿ではないのか?」

「この宿のシステムだと、家令は別の宿を取るのが普通だそうだ。もしかしたら女性の従者であれば泊まることが出来たのかもな。」

「…………多分だが、お前以外の家令であったのなら、サービスで離れにおいて貰えたのかも知れない。」

「………………?」

「お前も薄々感じておろうが、この国では人種差別がひどい。ある程度の格式がある場所では、基本白人種以外肩身は狭いのじゃ。先に一言お主に伝えておけば良かったんじゃが。
これだとお主には不便をかけるな。
いっそのこと別の宿でも妾は構わないぞ。」

「すでに宿代は払ってあるし、厩も整っている。気遣いなくゆっくりしてくれ。」

そう話した後ガルダの荷物を馬車から取り下ろし、宿へと運び込む。

「宿主、主殿と馬の世話よろしく頼むぞ。」

そう言って金貨を一枚手に握らせた。

握らせた貨幣が金貨と分かると満面の笑みを浮かべたのが分かった。

馬車の方に振り返りシュバルツ達に、厩に向かうが暴れぬように小声で釘をさす。
「ヒヒーン」とシュバルツは嘶いた。
(分かってくれたようだな?)

宿主に軽く合図をし、道と宿の名前を聞いた後
宿泊先に向かった。

何かガルダが言いたそうにしていたが手で制し後ろを振り返らず向かう。

ある程度距離が離れたタイミングで後ろを見るとすでにガルダの姿は見えなかった。

(まったくもって、ひどい所だなここは。)

◼️□◼️□◼️□◼️□

暫く歩くと少し雑多なエリアに着いた。

屋台とか見え、食べ物の匂いが鼻をくすぐる。

『グウウウ』
不意に腹がなった。

(今日はそう言えば何も食べていなかったな)

白人種がやっている屋台を避け、串焼き屋台に入る。

「店主串焼き10本ばかりくれ。それと酒を」

「酒はバージュしか無いが良いか?執事さんよ」

(バージュってそもそもなんだ?まあ、飲めば分かるか……。)

酒と聞き、屋台の周りにいる労働者らしき者どもの表情が羨ましそうに歪む。

(皆好きそうだな……)

「亭主、亭主」
小声で呼んだ

「旦那、なにかい?」

「ここらへんに居るのは常連かい?」

「ああ、たまに串を一本買っていく程度の奴等を常連と言うのならばだが、客には違わねぇ。」

「そうか。あんがとうよ。」

「こっちを見ているそこのお前ら、酒をご馳走するから、こっち来い。店主、これで出せるだけの肉串とバージュを振る舞ってくれ。」

そう言って金貨を一枚渡す。

その途端どこで見ていたのか、大勢の連中が屋台へと押し寄せてきた。

(どこからこんなに湧いてきたんだ?)

どんどん屋台から食料が無くなっていく。

(これじゃあ、一枚じゃ足りないな。)

「亭主、亭主の仲の良い奴らに児えがしてもう少し食べ物を調達してくれ。
勿論亭主も亭主の仲間も飲み食いして良いから」

それを聞くと同時に亭主の姿はあっと言う間に消えて行った。

(しまった……亭主も酒好きだったのか)

そして長い宴会が始まったのだった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

生まれ変わったら飛べない鳥でした。~ドラゴンのはずなのに~

イチイ アキラ
ファンタジー
生まれ変わったら飛べない鳥――ペンギンでした。 ドラゴンとして生まれ変わったらしいのにどうみてもペンギンな、ドラゴン名ジュヌヴィエーヴ。 兄姉たちが巣立っても、自分はまだ巣に残っていた。 (だって飛べないから) そんなある日、気がつけば巣の外にいた。 …人間に攫われました(?)

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

役立たずと追放された辺境令嬢、前世の民俗学知識で忘れられた神々を祀り上げたら、いつの間にか『神託の巫女』と呼ばれ救国の英雄になっていました

☆ほしい
ファンタジー
貧しい辺境伯の三女として生まれたリゼット。魔力も持たず、華やかさもない彼女は、王都の社交界で「出来損ない」と嘲笑われ、挙句の果てには食い扶持減らしのために辺境のさらに奥地、忘れられた土地へと追いやられてしまう。 しかし、彼女には秘密があった。前世は、地方の伝承や風習を研究する地味な民俗学者だったのだ。 誰も見向きもしない古びた祠、意味不明とされる奇妙な祭り、ガラクタ扱いの古文書。それらが、失われた古代の技術や強力な神々の加護を得るための重要な儀式であることを、リゼットの知識は見抜いてしまう。 「この石ころ、古代の神様への捧げものだったんだ。あっちの変な踊りは、雨乞いの儀式の簡略化された形……!」 ただ、前世の知識欲と少しでもマシな食生活への渇望から、忘れられた神々を祀り、古の儀式を復活させていくだけだったのに。寂れた土地はみるみる豊かになり、枯れた泉からは水が湧き、なぜかリゼットの言葉は神託として扱われるようになってしまった。 本人は美味しい干し肉と温かいスープが手に入れば満足なのに、周囲の勘違いは加速していく。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

処理中です...