4 / 16
シオンに脳筋聖女がバレました
しおりを挟む
最初にパーティに加入してから1か月半くらい経ったかも。
私たちは魔物の被害が多いという地方へ移動していた。
戦闘での連携もばっちり。
まずシオンが魔法で先手を打ち、リアナが魔法と剣で切り込んで、イグニス様が大ダメージを与える。
私は大体その間後ろで控えている。みんながケガしたり状態異常攻撃を受けたらすぐ回復できるように。
だけど、あんまり出番がないんだよね。
なんかみんな、最初からすごく強いんだけど。すでに完成されてるんだけど。
苦戦してるのなんて見たことない。
これならもう魔王なんて倒せるんじゃない?
まあでも、魔王はものすごく強いのかもしれないから、油断はしちゃダメだよね。
あ、いけないいけない。ぼけーっと考えてたら、もう戦闘終わっちゃってた。
「みなさん、お疲れ様です」
そういって水筒を差し出すと、イグニス様とリアナは「ありがとう」と受け取って一気に飲んだ。シオンは「ん」とだけ。
……シオンのやつ、ほんっと可愛くない。
顔が引きつるが、何とか慈愛フェイスを崩さない。
「はぁ、うまい。サポート助かるよフェルマ」
イグニス様が微笑んで言ってくれた。さらっと風に金髪が揺れて。額の汗が煌めく。
はわわわ~なんて素敵なの。
「いえ、皆さんお強いので私の出番がなくて。これくらいさせてくださいませ」
「なんだ、そんな風に思わないでいいのに」
そう言うと、リアナはニカっと笑った。
ありがたいんだけど、やることないのもなんか申し訳ないんだよねえ。
ちなみに神殿にいる時、魔力をまとわせて身体を強化する技も、いろいろやってたらなんか出来るようになった。
だから私が魔力で身体強化して物理で戦えば、もっと役には立てると思うけど、なんかそれって、聖女のイメージとかけ離れるしな……
イグニス様に脳筋聖女って引かれるのもやだし。
そう、そのイグニス様なんだけど、仲良くはなれたんだけど、なんかこう、薄皮一枚触れられないというか、まだ少し線を引かれている気がする。
うーん。もっと仲良くなるにはどうしたらいいんだろうなあ。
♢♢♢
魔物の討伐が終わったので、私たちは街の宿に戻って来た。身支度を整えている間に夜になり、お腹もすいたから、宿の隣にある酒場で夕ご飯を食べることになった。
「お待たせ~」
酒場のウェイトレスさんが、山盛りのお肉と野菜の炒め物、根野菜のスープ、大盛りのパンとジョッキに入った飲み物を持ってきてくれた。みんなはいつもお酒を飲む。私のだけ果実水。
お酒、ほんとは私も飲んでみたいなあ。
けど、そんな聖女、イメージぶっ壊れだ。なのでガマンしてる。
「これ美味しいわね」
ジョッキのお酒を何杯も飲んだリアナはいつものように上機嫌になって、イグニス様へのボディタッチが増えて来た。
うぐぅ……。
イグニス様もそんなに嫌そうじゃないところが、もやもやしてしまう。
見たくないから、さっさと食べて宿に帰ろう。
「私、お先に宿に戻らせていただきますわね。それではおやすみなさいませ」
にっこり笑って聖女ムーブ。くぅ、心は嵐だよ。
「ああ、フェルマお疲れ様。ゆっくり休んでね」
イグニス様の微笑みだけを見て、私はさっと出て行った。
外に出ると、酒場の前に3人くらいのガラの悪い男たちが座っていて、目が合ったとたん、その男たちは私にニヤニヤと話しかけてきた。
「おー綺麗なねえちゃんだな。俺らと一緒にうまいもんでも食わねえ?」
「今食べて来ましたので、結構ですわ」
聖女ムーブでかわすが、3人は立ち上がって目の前に立ちはだかる。うへえ、酒臭い。
「そんなこと言わずに行こうぜえ」
「申し訳ありませんが、お断りします」
「いーからいーから」
酔ってて人の話を聞いていないのか、しつこいな。
そのうち、一人が私の腕を掴んで来て、私は静かにキレた。
こちとら、ただでさえ機嫌悪いんだからな?どうなっても知らねえからな?
あんたらぶっ飛ばしてイライラを解消させてもらうからな?
おっと、その前に周りを確認せねば。うん、こいつら以外に見ている人はいないな。
「私に触れないでくださいます?」
言うと、私は魔力を体に纏わせ、かるーく掴まれた腕を振り払う。男は数メートル先に転がっていった。手加減はしないと、ケガをさせてしまう。
「おっ!?なんだこの女?」
男が転がっていったのを見たのに、残りの二人は信じられなかったのか、気色ばんで私に掴みかかろうとした。
掴みかかって来た一人目の方は、その手をはねのけて、足元を払って倒す。
「うわ!」
もう一人の方は腹パンで地に沈めた。
「うッぐ」
ふう、まったく人が機嫌の悪い時に絡んでくるからだよ。
あっ、そうそう。今の見られてないか確認しましょ……と、振り返ったところでこっちを見ているフードと目(?)が合った。
「シオンーーー」
「ーーー大丈夫か?」
やっば、今の見られた?見られたの?
「この方々転んでしまったようですわ。どうか助けて差し上げてくださいませ。それでは私は宿に戻っておりますね」
にこおおっと聖母スマイルを浮かべると、私は後ろも見ずに早足で歩いていった。
いや、怖くて後ろ向けない。
******
ブクマ、評価して下さった方々ー!ほんとにありがとうございます!めちゃくちゃ嬉しいです!
私たちは魔物の被害が多いという地方へ移動していた。
戦闘での連携もばっちり。
まずシオンが魔法で先手を打ち、リアナが魔法と剣で切り込んで、イグニス様が大ダメージを与える。
私は大体その間後ろで控えている。みんながケガしたり状態異常攻撃を受けたらすぐ回復できるように。
だけど、あんまり出番がないんだよね。
なんかみんな、最初からすごく強いんだけど。すでに完成されてるんだけど。
苦戦してるのなんて見たことない。
これならもう魔王なんて倒せるんじゃない?
まあでも、魔王はものすごく強いのかもしれないから、油断はしちゃダメだよね。
あ、いけないいけない。ぼけーっと考えてたら、もう戦闘終わっちゃってた。
「みなさん、お疲れ様です」
そういって水筒を差し出すと、イグニス様とリアナは「ありがとう」と受け取って一気に飲んだ。シオンは「ん」とだけ。
……シオンのやつ、ほんっと可愛くない。
顔が引きつるが、何とか慈愛フェイスを崩さない。
「はぁ、うまい。サポート助かるよフェルマ」
イグニス様が微笑んで言ってくれた。さらっと風に金髪が揺れて。額の汗が煌めく。
はわわわ~なんて素敵なの。
「いえ、皆さんお強いので私の出番がなくて。これくらいさせてくださいませ」
「なんだ、そんな風に思わないでいいのに」
そう言うと、リアナはニカっと笑った。
ありがたいんだけど、やることないのもなんか申し訳ないんだよねえ。
ちなみに神殿にいる時、魔力をまとわせて身体を強化する技も、いろいろやってたらなんか出来るようになった。
だから私が魔力で身体強化して物理で戦えば、もっと役には立てると思うけど、なんかそれって、聖女のイメージとかけ離れるしな……
イグニス様に脳筋聖女って引かれるのもやだし。
そう、そのイグニス様なんだけど、仲良くはなれたんだけど、なんかこう、薄皮一枚触れられないというか、まだ少し線を引かれている気がする。
うーん。もっと仲良くなるにはどうしたらいいんだろうなあ。
♢♢♢
魔物の討伐が終わったので、私たちは街の宿に戻って来た。身支度を整えている間に夜になり、お腹もすいたから、宿の隣にある酒場で夕ご飯を食べることになった。
「お待たせ~」
酒場のウェイトレスさんが、山盛りのお肉と野菜の炒め物、根野菜のスープ、大盛りのパンとジョッキに入った飲み物を持ってきてくれた。みんなはいつもお酒を飲む。私のだけ果実水。
お酒、ほんとは私も飲んでみたいなあ。
けど、そんな聖女、イメージぶっ壊れだ。なのでガマンしてる。
「これ美味しいわね」
ジョッキのお酒を何杯も飲んだリアナはいつものように上機嫌になって、イグニス様へのボディタッチが増えて来た。
うぐぅ……。
イグニス様もそんなに嫌そうじゃないところが、もやもやしてしまう。
見たくないから、さっさと食べて宿に帰ろう。
「私、お先に宿に戻らせていただきますわね。それではおやすみなさいませ」
にっこり笑って聖女ムーブ。くぅ、心は嵐だよ。
「ああ、フェルマお疲れ様。ゆっくり休んでね」
イグニス様の微笑みだけを見て、私はさっと出て行った。
外に出ると、酒場の前に3人くらいのガラの悪い男たちが座っていて、目が合ったとたん、その男たちは私にニヤニヤと話しかけてきた。
「おー綺麗なねえちゃんだな。俺らと一緒にうまいもんでも食わねえ?」
「今食べて来ましたので、結構ですわ」
聖女ムーブでかわすが、3人は立ち上がって目の前に立ちはだかる。うへえ、酒臭い。
「そんなこと言わずに行こうぜえ」
「申し訳ありませんが、お断りします」
「いーからいーから」
酔ってて人の話を聞いていないのか、しつこいな。
そのうち、一人が私の腕を掴んで来て、私は静かにキレた。
こちとら、ただでさえ機嫌悪いんだからな?どうなっても知らねえからな?
あんたらぶっ飛ばしてイライラを解消させてもらうからな?
おっと、その前に周りを確認せねば。うん、こいつら以外に見ている人はいないな。
「私に触れないでくださいます?」
言うと、私は魔力を体に纏わせ、かるーく掴まれた腕を振り払う。男は数メートル先に転がっていった。手加減はしないと、ケガをさせてしまう。
「おっ!?なんだこの女?」
男が転がっていったのを見たのに、残りの二人は信じられなかったのか、気色ばんで私に掴みかかろうとした。
掴みかかって来た一人目の方は、その手をはねのけて、足元を払って倒す。
「うわ!」
もう一人の方は腹パンで地に沈めた。
「うッぐ」
ふう、まったく人が機嫌の悪い時に絡んでくるからだよ。
あっ、そうそう。今の見られてないか確認しましょ……と、振り返ったところでこっちを見ているフードと目(?)が合った。
「シオンーーー」
「ーーー大丈夫か?」
やっば、今の見られた?見られたの?
「この方々転んでしまったようですわ。どうか助けて差し上げてくださいませ。それでは私は宿に戻っておりますね」
にこおおっと聖母スマイルを浮かべると、私は後ろも見ずに早足で歩いていった。
いや、怖くて後ろ向けない。
******
ブクマ、評価して下さった方々ー!ほんとにありがとうございます!めちゃくちゃ嬉しいです!
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
異世界召喚されたアラサー聖女、王弟の愛人になるそうです
籠の中のうさぎ
恋愛
日々の生活に疲れたOL如月茉莉は、帰宅ラッシュの時間から大幅にずれた電車の中でつぶやいた。
「はー、何もかも投げだしたぁい……」
直後電車の座席部分が光輝き、気づけば見知らぬ異世界に聖女として召喚されていた。
十六歳の王子と結婚?未成年淫行罪というものがありまして。
王様の側妃?三十年間一夫一妻の国で生きてきたので、それもちょっと……。
聖女の後ろ盾となる大義名分が欲しい王家と、王家の一員になるのは荷が勝ちすぎるので遠慮したい茉莉。
そんな中、王弟陛下が名案と言わんばかりに声をあげた。
「では、私の愛人はいかがでしょう」
酒飲み聖女は気だるげな騎士団長に秘密を握られています〜完璧じゃなくても愛してるって正気ですか!?〜
鳥花風星
恋愛
太陽の光に当たって透けるような銀髪、紫水晶のような美しい瞳、均整の取れた体つき、女性なら誰もが羨むような見た目でうっとりするほどの完璧な聖女。この国の聖女は、清楚で見た目も中身も美しく、誰もが羨む存在でなければいけない。聖女リリアは、ずっとみんなの理想の「聖女様」でいることに専念してきた。
そんな完璧な聖女であるリリアには誰にも知られてはいけない秘密があった。その秘密は完璧に隠し通され、絶対に誰にも知られないはずだった。だが、そんなある日、騎士団長のセルにその秘密を知られてしまう。
秘密がばれてしまったら、完璧な聖女としての立場が危うく、国民もがっかりさせてしまう。秘密をばらさないようにとセルに懇願するリリアだが、セルは秘密をばらされたくなければ婚約してほしいと言ってきた。
一途な騎士団長といつの間にか逃げられなくなっていた聖女のラブストーリー。
◇氷雨そら様主催「愛が重いヒーロー企画」参加作品です。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
氷のメイドが辞職を伝えたらご主人様が何度も一緒にお出かけするようになりました
まさかの
恋愛
「結婚しようかと思います」
あまり表情に出ない氷のメイドとして噂されるサラサの一言が家族団欒としていた空気をぶち壊した。
ただそれは田舎に戻って結婚相手を探すというだけのことだった。
それに安心した伯爵の奥様が伯爵家の一人息子のオックスが成人するまでの一年間は残ってほしいという頼みを受け、いつものようにオックスのお世話をするサラサ。
するとどうしてかオックスは真面目に勉強を始め、社会勉強と評してサラサと一緒に何度もお出かけをするようになった。
好みの宝石を聞かれたり、ドレスを着せられたり、さらには何度も自分の好きな料理を食べさせてもらったりしながらも、あくまでも社会勉強と言い続けるオックス。
二人の甘酸っぱい日々と夫婦になるまでの物語。
王家を追放された落ちこぼれ聖女は、小さな村で鍛冶屋の妻候補になります
cotonoha garden
恋愛
「聖女失格です。王家にも国にも、あなたはもう必要ありません」——そう告げられた日、リーネは王女でいることさえ許されなくなりました。
聖女としても王女としても半人前。婚約者の王太子には冷たく切り捨てられ、居場所を失った彼女がたどり着いたのは、森と鉄の匂いが混ざる辺境の小さな村。
そこで出会ったのは、無骨で無口なくせに、さりげなく怪我の手当てをしてくれる鍛冶屋ユリウス。
村の事情から「書類上の仮妻」として迎えられたリーネは、鍛冶場の雑用や村人の看病をこなしながら、少しずつ「誰かに必要とされる感覚」を取り戻していきます。
かつては「落ちこぼれ聖女」とさげすまれた力が、今度は村の子どもたちの笑顔を守るために使われる。
そんな新しい日々の中で、ぶっきらぼうな鍛冶屋の優しさや、村人たちのさりげない気遣いが、冷え切っていたリーネの心をゆっくりと溶かしていきます。
やがて、国難を前に王都から使者が訪れ、「再び聖女として戻ってこい」と告げられたとき——
リーネが選ぶのは、きらびやかな王宮か、それとも鉄音の響く小さな家か。
理不尽な追放と婚約破棄から始まる物語は、
「大切にされなかった記憶」を持つ読者に寄り添いながら、
自分で選び取った居場所と、静かであたたかな愛へとたどり着く物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる