101 / 282
第二章 白鳥雛派遣:魔法使い編
◆37 ドミニク=スフォルト王国初の……?
しおりを挟む
ワタシ、魔法使いヒナの両肩を鷲掴みにして迫る男に対して、ワタシは、何十本も並べられたボトルを指し示して、お願いした。
「貴方なら、ここに揃えたボトル、一気に開けること出来ますわよね?」
店主が息を飲む。
店で消費する一ヶ月分の酒量を、一度に購入することを意味する。
ロバートは頬を引き攣らせながらも、胸に手を当て、うやうやしくお辞儀をする。
「ええ。ヒナ様のご命令とあらば。
いいですよ。
だけど、そんなに沢山のお酒、飲めるんですか?」
「飲めるわよ! みんなでね」
「フッ。異世界から来た魔法使いさんの考えることには、ついていけないな」
「マジで、ヤバいんだから。
騙されたと思って、見てなさいって。
コッチの世界にはグラスがないから、ワタシが創造しないとーーええっと、取っ手の部分が細くて、グラスが円錐形の……そうそう、そういうワイン・グラスを何十個も!」
では。
杖を一振り!
魔法使いヒナの大魔法が展開した。
夥(おびただ)しい数のワイングラスが中空から出現し、次々と折り重なって立てられていく。
グラスを何段も重ねて、シャンパン・タワーが出来上がっていく。
みなが呆然とした表情で見守る中、ワタシは明るい声をあげた。
「ほら、そこのイケメンなウエイターさん」
「い、いけめん……?」
「さあ、店の人!
みなでこのグラスに、こうしてボトルからお酒を注ぐのよ!」
ドボドボ……。
店長の指示で、バーテンや店員が大勢で、ピラミッドのように組み上げられたグラスに、アルコールを注いでいく。
ワタシはロバートの傍らに駆け寄り、彼の手を取った。
「おめでとうございます。
ドミニク=スフォルト王国初のシャンパンタワーを打ち立てたのは、仮面の宝石商ロバート・ハンター様です。
みなさん、拍手!」
ワタシが率先して拍手すると、従者同然の騎士たちのほか、店内にいた多くの客たちが追随して拍手し始める。
シャンパングラスを何段にも重ねた前例など、この国にはもちろんなかった。
でも、どこであろうと、シャンパンタワーを築くには、何本もの高級シャンパン|《お酒》を必要とする。
ワタシはこの仮面の貴公子から、金の匂いを嗅ぎ取っていた。
宝石商を営んでいるという自称を信じ、彼をお金持ちと見越して、誘いかけたのだ。
「ほら、みんな、手を叩いて!」
パン、パン、パン!
拍手から、一定のリズムをとったお囃子へと変貌する。
調子に合わせて、タワー状に積まれたシャンパン・グラスに、お酒がドボドボと注がれていく。
「ああ、お酒が無駄に……」
「そこが良いんじゃない!」
オロオロする店長を、ワタシは一喝する。
ロバートには、お酒の瓶ごと手渡した。
「さあ、あんたも男なら、一気に呑みな!
イッキ、イッキ!」
ロバート・ハンターは一瞬、面喰らった。
が、もとより、酒に酔っていたからだろう。
大きく深呼吸をすると、酒瓶を受け取って仮面を取った。
鋭く光る紅い瞳に、彫りが深く、整った美顔が露出する。
そんな彼の素顔を覗き込んだとたん、自然にワタシの頬が火照ってきた。
(ヤバッ! マジで、これほどとは。
どストライクじゃね!?)
ロバート・ハンターこと、男爵家子息アレック・フォン・タウンゼントは、もろにヒナが好む、渋いオラ系ホスト顔だった。
さらに、彼の振る舞いも、ヒナ好みの〈男らしい〉ものだった。
酒瓶のイッキ飲みだけではなく、彼はタワーのグラスを上から取って、何杯も一気にガンガン呑みまくっている。
そんなこと、ホストだって、やらないよ。
「ヤバい、ヤバい! めっちゃ素敵!
あなた、有名ホストになる素質があるわ!
このまま歌舞伎町に連れて行きたい!」
ワタシ、魔法使いヒナは、彼に思い切り抱きついて、胸を押しつける。
ロバートことアレック男爵家子息は、当惑顔で応える。
「ほすと? ーーなんだかわからないが、ありがとう」
そして、いかにも太っ腹な男らしく、周囲に向けて、声を張り上げる。
「さあ、みなさんもご一緒に!」
「うわー! ヤバいよ、ほんと。
よくわかってるじゃないの!」
ワタシは歓声をあげた。
他の席にいるお客さんにも声をかけて、巻き込んでこそのシャンパン・タワーである。
教えもしないのに、歌舞伎町のマナーを察するとは。
なんて見どころのある男なんだろうーーそう思って、ワタシは歓喜に身を震わせた。
「ええ、どうぞ、どうぞ!
みんなで楽しく盛り上げるってのが、シャンパンタワーの流儀なんだから!
ヒナからロバートへ。愛をこめて、乾杯!」
ワタシは勢いついでに、ロバートの頬にキスをする。
嫌そうな顔一つせず、彼も明るく応じてくれた。
「じゃあ、俺からも!」
ロバートがグラスを飲み干した後に、ワタシの頬にキスをする。
イケメンからのキスなんて、久しぶり。
ワタシは身も心も舞い上がってしまった。
(マジで、オキニだわ。
もう離したくない。ロバートはワタシのもの!
魔法で、いつでも彼の居場所がわかるように、マーキングしなきゃ!)
ワタシはロバートに〈印貼付〉の魔法をかけた。
〈印貼付〉とは、特定の人物や動物が、どこにいても、術者に居場所がわかるようになる力らしい。
(ふふふ……これでロバートは、ワタシのもの。
こんな魔法があったら、歌舞伎町でも使えて、便利なのになぁ)
ロバートは自身に魔法をかけられたとも知らず、上機嫌でグラスを何杯もあおっている。
しかし、彼はただ単に酒を飲みに来たわけではない。
王女付き護衛官たる魔法使いヒナに、伝える要件があった。
やがて、頃合いだとみると、彼は目的のために動き出した。
「貴方なら、ここに揃えたボトル、一気に開けること出来ますわよね?」
店主が息を飲む。
店で消費する一ヶ月分の酒量を、一度に購入することを意味する。
ロバートは頬を引き攣らせながらも、胸に手を当て、うやうやしくお辞儀をする。
「ええ。ヒナ様のご命令とあらば。
いいですよ。
だけど、そんなに沢山のお酒、飲めるんですか?」
「飲めるわよ! みんなでね」
「フッ。異世界から来た魔法使いさんの考えることには、ついていけないな」
「マジで、ヤバいんだから。
騙されたと思って、見てなさいって。
コッチの世界にはグラスがないから、ワタシが創造しないとーーええっと、取っ手の部分が細くて、グラスが円錐形の……そうそう、そういうワイン・グラスを何十個も!」
では。
杖を一振り!
魔法使いヒナの大魔法が展開した。
夥(おびただ)しい数のワイングラスが中空から出現し、次々と折り重なって立てられていく。
グラスを何段も重ねて、シャンパン・タワーが出来上がっていく。
みなが呆然とした表情で見守る中、ワタシは明るい声をあげた。
「ほら、そこのイケメンなウエイターさん」
「い、いけめん……?」
「さあ、店の人!
みなでこのグラスに、こうしてボトルからお酒を注ぐのよ!」
ドボドボ……。
店長の指示で、バーテンや店員が大勢で、ピラミッドのように組み上げられたグラスに、アルコールを注いでいく。
ワタシはロバートの傍らに駆け寄り、彼の手を取った。
「おめでとうございます。
ドミニク=スフォルト王国初のシャンパンタワーを打ち立てたのは、仮面の宝石商ロバート・ハンター様です。
みなさん、拍手!」
ワタシが率先して拍手すると、従者同然の騎士たちのほか、店内にいた多くの客たちが追随して拍手し始める。
シャンパングラスを何段にも重ねた前例など、この国にはもちろんなかった。
でも、どこであろうと、シャンパンタワーを築くには、何本もの高級シャンパン|《お酒》を必要とする。
ワタシはこの仮面の貴公子から、金の匂いを嗅ぎ取っていた。
宝石商を営んでいるという自称を信じ、彼をお金持ちと見越して、誘いかけたのだ。
「ほら、みんな、手を叩いて!」
パン、パン、パン!
拍手から、一定のリズムをとったお囃子へと変貌する。
調子に合わせて、タワー状に積まれたシャンパン・グラスに、お酒がドボドボと注がれていく。
「ああ、お酒が無駄に……」
「そこが良いんじゃない!」
オロオロする店長を、ワタシは一喝する。
ロバートには、お酒の瓶ごと手渡した。
「さあ、あんたも男なら、一気に呑みな!
イッキ、イッキ!」
ロバート・ハンターは一瞬、面喰らった。
が、もとより、酒に酔っていたからだろう。
大きく深呼吸をすると、酒瓶を受け取って仮面を取った。
鋭く光る紅い瞳に、彫りが深く、整った美顔が露出する。
そんな彼の素顔を覗き込んだとたん、自然にワタシの頬が火照ってきた。
(ヤバッ! マジで、これほどとは。
どストライクじゃね!?)
ロバート・ハンターこと、男爵家子息アレック・フォン・タウンゼントは、もろにヒナが好む、渋いオラ系ホスト顔だった。
さらに、彼の振る舞いも、ヒナ好みの〈男らしい〉ものだった。
酒瓶のイッキ飲みだけではなく、彼はタワーのグラスを上から取って、何杯も一気にガンガン呑みまくっている。
そんなこと、ホストだって、やらないよ。
「ヤバい、ヤバい! めっちゃ素敵!
あなた、有名ホストになる素質があるわ!
このまま歌舞伎町に連れて行きたい!」
ワタシ、魔法使いヒナは、彼に思い切り抱きついて、胸を押しつける。
ロバートことアレック男爵家子息は、当惑顔で応える。
「ほすと? ーーなんだかわからないが、ありがとう」
そして、いかにも太っ腹な男らしく、周囲に向けて、声を張り上げる。
「さあ、みなさんもご一緒に!」
「うわー! ヤバいよ、ほんと。
よくわかってるじゃないの!」
ワタシは歓声をあげた。
他の席にいるお客さんにも声をかけて、巻き込んでこそのシャンパン・タワーである。
教えもしないのに、歌舞伎町のマナーを察するとは。
なんて見どころのある男なんだろうーーそう思って、ワタシは歓喜に身を震わせた。
「ええ、どうぞ、どうぞ!
みんなで楽しく盛り上げるってのが、シャンパンタワーの流儀なんだから!
ヒナからロバートへ。愛をこめて、乾杯!」
ワタシは勢いついでに、ロバートの頬にキスをする。
嫌そうな顔一つせず、彼も明るく応じてくれた。
「じゃあ、俺からも!」
ロバートがグラスを飲み干した後に、ワタシの頬にキスをする。
イケメンからのキスなんて、久しぶり。
ワタシは身も心も舞い上がってしまった。
(マジで、オキニだわ。
もう離したくない。ロバートはワタシのもの!
魔法で、いつでも彼の居場所がわかるように、マーキングしなきゃ!)
ワタシはロバートに〈印貼付〉の魔法をかけた。
〈印貼付〉とは、特定の人物や動物が、どこにいても、術者に居場所がわかるようになる力らしい。
(ふふふ……これでロバートは、ワタシのもの。
こんな魔法があったら、歌舞伎町でも使えて、便利なのになぁ)
ロバートは自身に魔法をかけられたとも知らず、上機嫌でグラスを何杯もあおっている。
しかし、彼はただ単に酒を飲みに来たわけではない。
王女付き護衛官たる魔法使いヒナに、伝える要件があった。
やがて、頃合いだとみると、彼は目的のために動き出した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活
仙道
ファンタジー
リメイク先:「視線が合っただけで美少女が俺に溺れる。異世界で最強のハーレムを作って楽に暮らす」
ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。
彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる