【完結】東京異世界派遣 ーー現場はいろんな異世界!依頼を受けて、職業、スキル設定して派遣でGO!

大濠泉

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第二章 白鳥雛派遣:魔法使い編

◆38 指切りげんまん、嘘ついたら針千本の〜ます。指切った!

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 宝石商ロバート・ハンターと称するイケメンが、ワタシ、ヒナの求めに応じて、この国初のシャンパン・タワーを築いてくれた。
 それだけで、ワタシの評価は爆上がり中だ。
 それなのに、さらにワタシにイケメンな顔で迫ってくる。
 ヤバい。どうにかなっちゃいそうだよ、ワタシ。
 ロバートは、ワタシと同じソファ(これもワタシの魔法で生み出された)に並んで座り、身を寄せて耳許でささやいた。

「ところで、ヒナ様。私の頼みも聞いていただけますか?
 実は私、我が王国の至宝ターニャ王女殿下に、宝石をプレゼントしたいんですよ」

「へ? マジかよ。ワタシへの告白じゃねえの? ま、いいけどさ。
 ええっとーーそうね。ワタシ的には、べつに良いと思うんだけどぉ。
 でもさ、あなた、り手の商人とはいえ、平民でしょ?
 たしか身分的に、姫様にじかにお会いするってこと、できないんじゃ?
 たぶん、無理ゲー」

 ロバートが、いきなりお姫様の名前を出してきた。
 正直、ワタシは戸惑った。
 ワタシがターニャ姫へのつなぎになるーーつまりは、ワタシが姫様と身近で接することができる立場だって、ロバートが思ってるってことだよね?
 へ? どうしてわかった?

 あ、そうか。
 ワタシ、いろいろと魔法を使ったから、目立っちゃったのかも。
 この国じゃ、〈魔法使い〉自体が稀有レアだというし。
 ーーでも、王宮内だけでなく、夜の街に繰り出す商人にまで、ワタシという存在が知れ渡ってるとは。
 なんだか、ヤベェ。照れちゃうな。
 歌舞伎町と同じく、プリンス・キラーって呼ばれちゃう? まじ、ハズいんですけど。
 でも、そうか。
 だからロバートさん、ワタシに対して丁寧な物腰だったんだ。
 今もそう。うんうん、仕方ないよね。ココ、身分制社会なんだし。

 脚を組み直して座るワタシに対し、彼はあくまで腰が低かった。

「いえいえ、私ごときが、直接、王女殿下にお目通り願おうとは、思っておりません。
 実は、私、王女殿下の婚約者候補のお一人と深い関係がありまして。
 彼が見事、姫様のお心にかなうよう、少しでも尽力したいと思っておりましてね。
 美しい宝石をいくつか、王女殿下に献上させて頂きたく思っておるのです。
 ほら、私の宝石商としての実績にもなりますし。
 よかったらターニャ王女殿下のご予定スケジュールを、内緒で教えていただけませんか? 驚かせたいんですよ。
 王女殿下のお部屋を、私の宝石で一杯に飾りたいんです。
 私の懇意にしているお方の手によるものだ、という形でね」

 ロバートは片目でウインクしながら身を乗り出し、ワタシの肩を軽く掴む。
 そして、熱い眼差しを向けられた。
 ワタシは両手を合わせ、目を輝かせた。

「ヤバッ! それ、めっちゃ面白そう。
 サプライズってやつ!?
 だったら、侍女のみんなが出払った日取りってやつ、教えてあげちゃう?
 ターニャ姫様、スッゲェ喜ぶよ!」

「ありがたき幸せ。きっとですよ、大魔法使いヒナ様。
 王女殿下は婚約を間近に控えたお年頃でもございますし、王国の臣民として、もっともっと美しくなってほしいですから」

 男が「してやったり!」とばかりに得意げな表情になっているのにまるで気付かず、両手を重ね合わせたまま、ワタシはウットリとした表情で天井を見上げた。
 それからロバートの手を両手で握り締めて、真正面から見据える。

「ああ、ワタシも、もっと美しくなりたい。
 だからさぁ、ワタシにはテイアラちょうだい。
 宝石がいっぱいついてるの。
 ワタシも、マジもんのお姫様になりたい!」

 ワタシがあまりに真剣な表情をするから、男は気圧けおされたようだった。

「ーーお、おう、考えておこう……」

 と言葉をにごして、ロバートは視線をらそうとする。
 が、ワタシは、それを許さない。
 男の顔を両手で掴んで、自分の方に固定させて、懇願した。

「イヤ! マジで、今、約束して。
 指輪とテイアラ。
 プレゼントして!
 はい、指切り!」

 ワタシは小指を差し出す。

「な、なんですか、それ?」

 ロバートが怪訝けげんな顔をする。

「知らないの? 指切りげんまん」

 ワタシは、日本で古くからある風習を説明をした。

「指切りげんまん」とは、重大な契約をする際のおまじないであり、互いに約束を裏切らない、と誓約する儀式だと。

 ロバートは内心、かなりビビっていた。
 彼にとって、ヒナは(バカだけど)魔力豊富な魔法使いである。
 その「指切りげんまん」なる契約儀式をした後に契約不履行となると、いかなる魔法が掛けられるか、わかったものではないーー。

 だが、ワタシ、白鳥雛しらとりひなには、彼の事情などわからない。
 相手の内心に頓着とんちゃくしないで、即座に行動に移す。
 自分の小指とロバートの小指を結び合わせて、

「指切りげんまん、嘘ついたら針千本の~ます。指切った!」

 と、歌うように、高らかに声を張り上げた。

「約束を破ったら、針千本飲んでもらうからね!」

 ハリセンボンーー!?
 実際に、鋭く尖った針が千本も集められた様子を想像して、ロバートは息を呑む。

「ヒナ様、怖いですよ……」

 ロバートが消え入るような声で苦情を言うが、ワタシは自分の小指を見詰めながら、上機嫌に笑う。

「あら。約束守ったら怖くないじゃん?」

 ワタシが気軽な様子を見て、ロバートことアレックは安堵する。
 考えてみれば、自分が約束させられたのは、指輪とテイアラをヒナにプレゼントすることに過ぎない。
 そんなこと、宝石商をかたる自分には、朝飯前のことだ。

「それでは、私の約束も守ってくださいね」

 余裕の表情に戻って、ロバートはグラスをワタシに向ける。
 ワタシも笑みを浮かべ、グラスを重ねて音を立てた。

「わかった。
 ターニャ姫様へのサプライズね。
 任せて! マジで」
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