【完結】東京異世界派遣 ーー現場はいろんな異世界!依頼を受けて、職業、スキル設定して派遣でGO!

大濠泉

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第二章 白鳥雛派遣:魔法使い編

◆39 女が、騙されていく過程ってヤツを見ちゃったよ。嫌だねぇ。

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 一方、東京異世界派遣会社本部ではーー。

 モニターでヒナの言動を眺めていた誰もが呆れ果てていた。

「あいつ、守秘義務の意味すら知らないのかね? 安請け合いしてさ」

 東堂正宗とうどうまさむねはポテチを頬張りながら、ジュースをゴクゴクと飲んだ。
 正直、最近ではヒナの〈活躍〉をモニターで見学するのが彼の楽しみになっていた(密かにスマホで録画してネットにアップ出来ないかと試みてもいた。もっともモニター画像がボヤけてうまくいかなかったが)。
 ヒナの言動にツッコミを入れるのが日課になっている。
 そんな彼が言う。

「問題なのは、あの仮面のイケメンさんが、どちらの婚約候補と昵懇じっこんにしてるかすら、ヒナが確認していないことだ」

 ごもっともな指摘である。
 私、星野ひかりはハッとした。

(コイツーーたしかに、細かいところまで、よく気がつく男よね。
 頭の回転はいい。気に食わないけど……)

 正宗は基本、自分にしか興味がないゲス野郎だけど、頭は切れる。
 ふざけた調子ながらも、時折、鋭いツッコミをする。

「ーー既成事実がどうとか言ってたな、あの仮面男。
 アイツ、馬鹿ヒナから空いてる日程を聞き出して、姫様の寝込みを襲うつもりなんじゃねえの?」

 彼の予測を受けて、兄の新一が悲しそうな表情をした。

「恋に落ちると、女はもろいっていうけど、ほんと、色香に惑う恐ろしさとバカバカしさを、肌で感じさせられるね」

「ほんと、ほんと。
 女が、だまされていく過程ってヤツを見ちゃったよ。
 嫌だねぇ」

 正宗が呆れ声で乗っかると、さらに兄も言い募る。

「そうだね……僕も正直、見たくなかったな。
 ヒナちゃんの、あんな顔。
 嬉しそうなんだよね。哀しいことに。
『恋の山は孔子くじの倒れ』っていうことわざ通りだ。
 ほんと、恋に落ちると、孔子のような聖人までが、誤りを犯すってことだ。
 まして、ヒナちゃんは惚れっぽい女の子なんだから……l

 男ども二人の評論ぶった発言に、私は口をとがらせた。

「べつに、女がどうこうって話じゃないでしょ。
 ちょっと、ヒナさんが惚れっぽいだけよ。
〈女性〉だからって、一括ひとくくりにしないで欲しいわ。
 ーーでも、困ったわね。
 通信しようとしても、ヒナさん、もう切断してるから。
 デートの邪魔はされたくないんですって」

 兄が溜息混じりに言った。

「正宗くんのいう通り、あの仮面の男、絶対、何かたくらんでるよ。
 なんでヒナちゃんには、わからないのかな?」

「私も、あの男性と二人きりで会うと聞いたとき、大丈夫なのかと心配したら、
『私の男を見る目に狂いはない』と言われたものだから……」

 私が言い訳がましく言うと、カップ片手に正宗が笑い飛ばす。

「なに押し切られてんの。
 俺様が派遣された時とは違って、随分とおとなしいな、ひかりさん。
 あんなオンナの言うこと、真に受けるなんてさ。
 そもそもアイツは、ホスト狂いホス狂なんだから……」

 仮面越しだろうと、なんだろうと、あのロバートからただよあやしさと強引さは、十分、みなに伝わっている。
 彼が持つ魅力は、まさにホストのそれである。
 私は苛立ちの声を上げた。

「もう、やめて!
 本当に、ただ見守るしかないの。今は」

「でも、絶えず通信はしていこう。
 少しでも、ヒナちゃんと話せれば……」

 兄の新一は妹を安心させるように、笑顔を作った。

「大丈夫だよ。きっと」

 新一は、ひかりの肩をポンポンとたたいた。
 これで、一件落着。
 場がなごむ流れになる。
 ーーと思ったら、その流れを東堂正宗が粉砕した。

「無理、無理。
 ヒナのヤツ、完全にオトコに狂って、任務なんか上の空だ。
 実際、護衛らしい仕事なんか、一回もしてないじゃないか。
 よくもまあ、お姫様も、ヒナの自由行動を許すもんだ。
 高貴なお姫様の度量ってヤツだろうけど、寛容も度が過ぎると甘えを生むぞ。
 ヒナのヤツ、このまま、あのオトコのいいなりだぞ!」

 彼は頭の後ろで腕を組みながら、椅子に深くもたれかかる。

 私も両手に顎を乗せて、ポツリとつぶやいた。

「たしかに彼女なら、仕事よりオトコを優先する可能性が高いかも……」

 私が正宗くんの意見に同調するのは珍しいことだけど、今回ばかりは、彼の見方が正しいような気がする。
 でも、だったら、大事だ。
 王女殿下にとっては、護衛役が敵方の内通者スパイになってしまったことになる。
 護衛役の派遣依頼を受けた会社ウチにも、責任がかかってくる事態だ。

 現に、兄の新一は、いつもよりしきりにティースプーンを回して、紅茶を掻き混ぜている。笑顔が張り付いているが、あれは内心の動揺を隠しているにすぎない。

 その一方で、私は正宗くんの横顔を盗み見たが、端正な顔立ちにまるで歪みがなかった。口の端をほころばせているだけで、本気で楽しんでいるだけのようだった。

(ほんとに、ブレないヤツね、マサムネは……)

 私は額に手を当て、深い溜息をついた。
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