【完結】東京異世界派遣 ーー現場はいろんな異世界!依頼を受けて、職業、スキル設定して派遣でGO!

大濠泉

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第二章 白鳥雛派遣:魔法使い編

◆46 〈姫〉はあくまで、推しの〈王子〉のために尽くすもの!

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 姫様の寝室で、ワタシ、魔法使いヒナにいきなり抱きつき、挙句、防御魔法で壁にまで吹っ飛ばされた男は、ロバート・ハンターであった。
 ワタシが今現在、絶賛推し活オシカツ中の、イケメン宝石商である。
 ついさっきまで、ナイトクラブでの逢瀬を待ち侘びていた相手である。

 今、ロバートは仮面を付けていない。
 イケメン顔が露わになっていた。
 端正で整った顔が赤くなっていて、すでにかなり酔いが回っているようだ。

 今度は、ワタシが驚く番だった。
 ロバートの顔を認めると、即座に走り寄って抱きついた。

「ヤバッ! 大丈夫?
 もう、ロバートったら、ワタシとの約束、マジ忘れた?
 ヒドくね!?」

 いきなり胸板に顔をうずめる女を見下ろし、男は額に青筋を立てた。

(なんだよ、なんでこのバカ女がここに?
 ……大切な時なのに、邪魔すんじゃねぇよ!)

 そう思ったが、今はそんな口喧嘩をしている場合ではない。
 男は女の身体を突き放し、シラを切った。

「なんだ、貴様は。私はロバート・ハンターではない。
 男爵家の次期当主アレック・フォン・タウンゼントである。
 貴様なぞ、知らぬ。早く出て行け!」

 ロバートは、ワタシに冷たい視線を浴びせる。
 一瞬、呆気に取られた。
 が、すぐに正気を取り戻すと、ワタシは食い下がる。
 ロバートに再度、抱きついた。

「めっちゃ腹立つ。なに嘘ついてんの。
 あなたはロバート! 間違いない。顔も覚えてるし、声でもわかってる。
 それに印貼付マーキングが、あんたがロバートだってこと、示してんだから。
 わかる?
 ワタシ、マジで、あなたに魔法をかけておいたの。言い逃れすんな。ダセェ!」

 目前の男は化粧をして、服装も見慣れぬ貴族服を身につけている。
 が、印貼付マーキングが、目の前の人物が、ロバート・ハンターであることを示していた。
 男は苛立ちの声を上げた。

「なに、勝手なことしてるんだ。このバカ女!」

 男の口調が、夜の店でのものに変わっていた。

 だけど、ワタシの激おこぶりも負けてない。
 さんざん店で待ちぼうけをくらった挙句、知らない扱いにされた。
 これが怒らずにいられようか。

「バカはアンタでしょ!
 マジで、なに言ってんの!?
 ワタシたち、付き合ってるんじゃないの?
 それなのに、ナニ!?
 姫様の寝室でナニしようとしてんのよ!?
 ヤバいじゃないのよ、この野蛮人!
 ワタシを騙したの!?
 マジでウゼェんですけどぉ!」
 

 仁王立ちする女を見て、アレックは非難がましい目付きで叫んだ。

「騙したもなにも、俺は男爵家、お前は異世界の魔法使いだろう!
 はじめから、お前なんか相手にするかよ。
 俺はターニャ王女を狙っているんだ。
 俺様が次期国王になるためにな。
 お前なんか、なんだ!」

 怒鳴り返されて、ようやくワタシの思考回路が動き始めた。
 今頃になって、ロバートこそが男爵家子息のアレックで、ターニャ王女のもう一人の婚約者候補だったんだ、と理解した。

(ヤバッ! そうかーー。
 ワタシに宝石商ロバートと名乗って近づいたのは、こうして姫様を寝室で待ち伏せするためだった!?
 寝室で身をひそめられるように、私から姫様のスケジュールを聞き出してーー。
 それって、まじでキモくね!?)

 顔を真っ赤にして睨みつけてくるロバートを見据えながら、ワタシは胸を手で押さえる。

(ーーでも、ここは深呼吸、深呼吸。
 ヒナ、落ち着くのよ……)

 残念ながら、白鳥雛しらとりひなのような〈ホス狂〉が、マジメに考え出すと、かえって碌なことにならなかったりする。
 でも、ヒナ本人は、そうは思っていない。
 一度、推すと決めたオトコに尽くすことこそ、正義だと信じている。

 現に、落ち着きを取り戻したヒナは、思い直してしまった。
 ワタシは見事に騙されたけど、これって素敵なことじゃないかしらーーと!

 目の前のオトコは、自分がすと決めた〈王子〉だ。
 ホンモノのお姫様をゲットするために、貴族なのに平民と身分を偽ってまで、異世界人であるワタシに接近してツテ求めてきたーー気骨のある〈王子様〉なのだ。

 ワタシったら、頭を撫でてもらうことばかり考えてたけど、ワタシが推してる〈王子様〉は、まだ野望ユメを実現するための階段を登ってる最中なんだーー。

(そうね。気持ちは、めっちゃわかる。
 ワタシには、なにもないものね。
 貴族の世界の話だから……)

 ヒナは考えた。
 推しの男を理解しようと、必死で考えた。
 そして悟った。
〈王子様〉が王様になろうと奮闘するってのは、まったく正しいーーと!
 そのためには、どんな嘘も許されるはずだ、と!

 実際、国のNo.1になるって、スケール大きいことだしぃ。
 ホストクラブでTOPを取ろうって話の規模じゃないーー。

(思い出すのよ。ワタシはどんな世界に行っても、歌舞伎町の姫!
 推しの王子様のために尽くす心意気を、忘れたりはしないわ!)

〈姫〉はあくまで、推しの〈王子〉のために尽くすもの!

 魔法使いヒナは両手の拳を強く握り締め、覚悟を決めた。

「めっちゃ素敵。マジで、応援したい!
 応援するから、ワタシをあなたの心のお姫様にしてッ!」
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