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第四章 白鳥雛派遣:救世の聖女編
◆82 しかし、いきなり急展開だと思わないか!?
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東京異世界派遣本社では、星野兄妹、東堂正宗が手に汗握って、事の成り行きを見守っていた。
「どうして、いきなり新手の騎士団が乗り込んできたのよ??」
星野ひかりが文句を言うと、隣の席で正宗がモニター画面を指差す。
「口上と紋章でわかるだろ。
王子派の軍団だよ」
新たに登場してきた緑と黒の騎士たちは、みな鎧の右肩に紋章が入った札を付けていた。
緑と黄色の背景に、剣が一本直立し、その剣に蔦のように蛇が絡みついている。
パールン王家の紋章だ。
ハリエットらに敵対する、王子派の騎士団であった。
「国境にいるのではーー?」
ひかりが首をかしげるのも無理はない。
本来、王子派軍団は国境線で隣国本軍と睨み合っていた。
が、中枢騎士団が馬を駆って急遽、王都に戻って来た。
隣国との講和を取り付け、無傷で〈凱旋〉してきたのである。
王都を攻撃していた隣国の特攻軍も、本国からの連絡を受け、沈黙する。
それを良いことに、王子派騎士団は王都に侵入する。
そのまま、霧が立ち込める中で殺し合う民衆を掃討しつつ、まっすぐ孤児院へとやって来たのだ。
ひかりは手帳を取り出して、まとめに入る。
「つまり、王子派は知っていたというの?
孤児院が、魔族の生物兵器のための生贄を提供してるって」
孤児院を経営するライリー神父が、裏で魔族と繋がっていた。
人間を狂わし、互いに殺させる〈魔の霧〉を発生させる魔族製の卵型生物兵器を、地下に隠していた。
そして数多くの孤児たちを、六年に渡って、生物兵器の糧として提供し続けてきた。
人間が住むパールン王国を滅ぼすためにーー。
正宗は苦笑いを浮かべる。
「ハリエットさんの騎士団の中に、王子派に通じた内通者がいたようだけど……まあ、手回しが良すぎるわな。
あの神父のやってることを、王子はあらかじめ知っていたかもね。
あの王子、見た目は単純そうなヤツなんだがーー」
星野新一も同意する。
「あの王子サマ、ヒナちゃんを連行した騎士団と、連絡を密にしていたのは確かだね。
遥か遠くの国境線で布陣していたはずの自軍勢を、王都に向けて急回頭させた。
そのうえで、〈双頭の龍〉が消えたタイミングを見計らったように、孤児院を包囲させるなんてーー万事、都合が良すぎる」
ひかりは、溜息をついた。
「ピッケとロコ……可哀想だった。
今回はキツすぎるわよ。
ヒナさんも相当、落ち込んでるみたいだし」
正宗は声を荒らげる。
「俺はライリー神父とやらの台詞が気になって仕方がない。
アイツが口走ってた『マダリア様』って誰だ?
あの大きな〈卵〉を神父にくれてやった人物なんだろうか?
神父はあの〈卵〉のことを『マダリア様の子宮』とか言ってたし。
とするとーーマダリア様って魔族なのか?」
「そうだろうね」
と、後ろでうなずく新一に、正宗は椅子を回転させて指を鳴らした。
「しかし、いきなり急展開だと思わないか!?
まさか、魔族がいる世界だったなんて。
ああーーそんな話もあったか。
マオとかいう美少年が『人魔大戦』がどうとか言ってたっけ」
ひかりは手帳を叩きつつ、今後の事態の推移に思いを馳せた。
「あの魔族が造った〈卵〉ーーどうやったら壊せるのかしらね?、
アレがある限り、〈魔の霧〉は消えないんでしょ?」
ヒナが聖魔法で浄化しようとしたけど、できなかった。
正宗が快活に笑った。
「卵なら割っちまえば良い。
聖魔法が効かなくても、投石機もあるんだし、なんとかならねえか?
兎にも角にも、壊してしまうしかないだろう。
でもーーははは。さすがはヒナだ。
まさか、あそこで魅了を使うとは」
明るい正宗とは違って、新一の顔は憂いに沈んでいた。
「あの〈卵〉を物理的に割るなんてこと、結局、ヒナさんには出来ないだろうね」
「なぜ?」
「ピッケとロコが吸い込まれた状態だから」
「割れば出てくるかもよ?」
楽観的な正宗の発言に、ひかりは苦言を呈する。
「わからないじゃない。
死なれてしまうかもでしょ!」
どうやら、星野兄妹は軽口を叩く気分ではなさそうだ。
そう察した正宗は話題を変えた。
「う~~ん。王宮としてはどう出るつもりだろう?
〈卵〉はあのまま放置なのかね?」
ひかりは手帳に記したメモに目を落としながらつぶやく。
「ヒナさんをどう扱うかで、方向性が見えてくるでしょうね」
我慢できず、正宗はやっぱり冗談めいた口を利く。
彼は悲観的な予測しかたたないときほど、戯言を口にする傾向があった。
「おいおい、それじゃ、結果が見えてる。
王宮じゃ、あの〈白い聖女様〉が、いまだに幅を利かせているんだぜ?
悪い未来図しか思い浮かばない」
「「……」」
星野兄妹は、揃って渋い顔をするしかなかった。
「どうして、いきなり新手の騎士団が乗り込んできたのよ??」
星野ひかりが文句を言うと、隣の席で正宗がモニター画面を指差す。
「口上と紋章でわかるだろ。
王子派の軍団だよ」
新たに登場してきた緑と黒の騎士たちは、みな鎧の右肩に紋章が入った札を付けていた。
緑と黄色の背景に、剣が一本直立し、その剣に蔦のように蛇が絡みついている。
パールン王家の紋章だ。
ハリエットらに敵対する、王子派の騎士団であった。
「国境にいるのではーー?」
ひかりが首をかしげるのも無理はない。
本来、王子派軍団は国境線で隣国本軍と睨み合っていた。
が、中枢騎士団が馬を駆って急遽、王都に戻って来た。
隣国との講和を取り付け、無傷で〈凱旋〉してきたのである。
王都を攻撃していた隣国の特攻軍も、本国からの連絡を受け、沈黙する。
それを良いことに、王子派騎士団は王都に侵入する。
そのまま、霧が立ち込める中で殺し合う民衆を掃討しつつ、まっすぐ孤児院へとやって来たのだ。
ひかりは手帳を取り出して、まとめに入る。
「つまり、王子派は知っていたというの?
孤児院が、魔族の生物兵器のための生贄を提供してるって」
孤児院を経営するライリー神父が、裏で魔族と繋がっていた。
人間を狂わし、互いに殺させる〈魔の霧〉を発生させる魔族製の卵型生物兵器を、地下に隠していた。
そして数多くの孤児たちを、六年に渡って、生物兵器の糧として提供し続けてきた。
人間が住むパールン王国を滅ぼすためにーー。
正宗は苦笑いを浮かべる。
「ハリエットさんの騎士団の中に、王子派に通じた内通者がいたようだけど……まあ、手回しが良すぎるわな。
あの神父のやってることを、王子はあらかじめ知っていたかもね。
あの王子、見た目は単純そうなヤツなんだがーー」
星野新一も同意する。
「あの王子サマ、ヒナちゃんを連行した騎士団と、連絡を密にしていたのは確かだね。
遥か遠くの国境線で布陣していたはずの自軍勢を、王都に向けて急回頭させた。
そのうえで、〈双頭の龍〉が消えたタイミングを見計らったように、孤児院を包囲させるなんてーー万事、都合が良すぎる」
ひかりは、溜息をついた。
「ピッケとロコ……可哀想だった。
今回はキツすぎるわよ。
ヒナさんも相当、落ち込んでるみたいだし」
正宗は声を荒らげる。
「俺はライリー神父とやらの台詞が気になって仕方がない。
アイツが口走ってた『マダリア様』って誰だ?
あの大きな〈卵〉を神父にくれてやった人物なんだろうか?
神父はあの〈卵〉のことを『マダリア様の子宮』とか言ってたし。
とするとーーマダリア様って魔族なのか?」
「そうだろうね」
と、後ろでうなずく新一に、正宗は椅子を回転させて指を鳴らした。
「しかし、いきなり急展開だと思わないか!?
まさか、魔族がいる世界だったなんて。
ああーーそんな話もあったか。
マオとかいう美少年が『人魔大戦』がどうとか言ってたっけ」
ひかりは手帳を叩きつつ、今後の事態の推移に思いを馳せた。
「あの魔族が造った〈卵〉ーーどうやったら壊せるのかしらね?、
アレがある限り、〈魔の霧〉は消えないんでしょ?」
ヒナが聖魔法で浄化しようとしたけど、できなかった。
正宗が快活に笑った。
「卵なら割っちまえば良い。
聖魔法が効かなくても、投石機もあるんだし、なんとかならねえか?
兎にも角にも、壊してしまうしかないだろう。
でもーーははは。さすがはヒナだ。
まさか、あそこで魅了を使うとは」
明るい正宗とは違って、新一の顔は憂いに沈んでいた。
「あの〈卵〉を物理的に割るなんてこと、結局、ヒナさんには出来ないだろうね」
「なぜ?」
「ピッケとロコが吸い込まれた状態だから」
「割れば出てくるかもよ?」
楽観的な正宗の発言に、ひかりは苦言を呈する。
「わからないじゃない。
死なれてしまうかもでしょ!」
どうやら、星野兄妹は軽口を叩く気分ではなさそうだ。
そう察した正宗は話題を変えた。
「う~~ん。王宮としてはどう出るつもりだろう?
〈卵〉はあのまま放置なのかね?」
ひかりは手帳に記したメモに目を落としながらつぶやく。
「ヒナさんをどう扱うかで、方向性が見えてくるでしょうね」
我慢できず、正宗はやっぱり冗談めいた口を利く。
彼は悲観的な予測しかたたないときほど、戯言を口にする傾向があった。
「おいおい、それじゃ、結果が見えてる。
王宮じゃ、あの〈白い聖女様〉が、いまだに幅を利かせているんだぜ?
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