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第四章 白鳥雛派遣:救世の聖女編
◆85 聖女同士の対決
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ワタシ、白鳥雛は、本来、〈救世の聖女様〉として、異世界のパールン王国へ派遣された。
ところが、現地での聖女召喚儀式において、可愛らしい金髪美少女のカレン・ホワイトとバッティングしてしまい、挙句、黄色い肌を気持ち悪がられ、ワタシは王宮外へと追い出されてしまった。
さらに、孤児院から発生した〈魔の霧〉を放つ〈双頭の龍〉を討伐した功績で、晴れて王様から聖女認定を受けたにもかかわらず、今度は新たに王子と〈白い聖女様〉から〈魔女〉呼ばわりされてしまった。
さらには、
「この〈黄色いオンナ〉が孤児院に執着していたのは、地下で〈魔の卵〉を育てていたからですわ!」
と、濡れ衣すらかけられてしまった。
〈白い聖女様〉こと、カレン・ホワイトは、少女の見た目に相応しく、たどたどしい口調ながらも、良く響く声で演説を続けた。
「じつは私、王様から聖女認定を受けましてから、生前のライリー神父様と懇意にさせていただきました。
何度か、お茶を頂きました折に、神父様はよく嘆息しておられました。
『あのヒナなる黄色い女は、私共に迷惑ばかりかける。
痩せ細った孤児を道端で拾って来ては、子供らと戯れるフリをして、地下に潜り込む』とーー」
「嘘よ!」
間髪入れず、ワタシは叫んだ。
完全なる濡れ衣だ。
孤児院の地下に、あれほど広い空間が広がっていたとは、ワタシはまるで知らなかった。
ライリー神父がピッケたちを〈卵〉の生贄にしようとするのを、ナノマシンで観なければ、ワタシにはまったく窺い知ることはできなかった。
金髪の美少女は、明らかに虚偽の証言をしていた。
だが、ワタシは真実を知っている。
「なに、それ? マジ、ウケるんですけど!?
それ、真実と違うから!
ライリー神父こそ、魔族の礼賛者だったんだかんね!」
ワタシは胸を張って、王子派連中の圧を跳ね返す。
だが、今度は別方向から、新たに怒声があがった。
王子とは反対側、王の左隣に立っていた老人が突然、激昂したのだ。
「世迷言を。我がダレイモス教の聖職者を愚弄するかッ!
ライリー司教が、そのような背教者であるはずがない!」
顔を真っ赤にして白い顎鬚を震わせたのは、教会の教皇だった。
老人はワタシを睨み付け、宙に三角形を描き、喉を震わせる。
「王よ。改めて言わせていただきますぞ。
教会としても、このような女を〈聖女様〉とは認められませんわい。
ライリーから耳にしておりました。
この黄色い変態女は、孤児院にいた、マオとかいう白人少年にいたく執心しておったとか。異常ではありますまいか!?」
ざわざわーー。
王子派のみならず、反王子派の騎士や貴族たちですら動揺して後退り、互いに顔を見合わせる。
「孤児院少年というとーー白人のガキか?」
ドビエス王子が怪訝な表情で教皇に尋ね、次いでヒナの方に目を遣った。
ワタシは悪びれることなく、堂々と胸を張る。
「ええ。
ガチで白い肌をした、イケメンの男の子ですが、それがなにか?
彼はマオという名前でね、マジで可愛くーー立派な男の子でした。
大人顔負けの、つよつよメンタルしてたんだから!
ワタシが可愛がって当たり前じゃね!?
それで、なにか、アンタたちに迷惑かけたわけ!?」
そこまで口にすると、ワタシの目から涙がこぼれた。
今日は、泣かないと決めたのに。
決めたことが守れない。
でも、マオのことを絶賛しないではいられなかった。
「彼こそ英雄ーーワタシの王子様でした。
自ら犠牲になり、子供たちの生命を助けて、亡くなったんだから!
見かけはおとなしくて、優しそうな子だったのに。
マジで、どこから、そんな勇気が出てきたのか……」
涙を溢れ出しながらも、ワタシは大声で訴えた。
が、周囲に居並ぶ、緑の肌をした男どもは、誰一人、反応しない。
ただ、カレンと呼ばれる白い金髪美少女だけが、足を踏み鳴らし、金切り声をあげた。
「だ・か・ら、その態度を改めなさい、と申し上げているのです!」
ワタシも負けずに拳を握り締め、語気を荒げた。
「勇敢なマオを侮辱するのは、誰であろうと、マジで許せない!」
白い女の子と、黄色い肌をした女性が、互いに至近距離で睨み合う。
二人とも表面的には笑顔を貼り付けていたが、こめかみにヒクヒクと血管が脈打っていた。
「そもそもだけどさぁ、マジで、アンタ、なんでマオを侮辱するわけ?
アンタも同じ白人じゃね!?
今までも、緑や黒いのに舐められてきたんじゃねえの?
腹を立てる相手、間違ってね!?」
ワタシの問いかけに、白い少女はつんのめる姿勢になった。
「私の肌の色が白いからって、人間と同じと思われたら心外だわ。
カレン・ホワイトという名と同じく、仮初のものよ!」
奇妙な発言だった。
カレンの後に立つドビエス王子も、キョトンとしている。
居並ぶ王子派の貴族や騎士も同様だ。
〈白い聖女様〉である金髪の美少女は、王子相手にすら「カレン・ホワイト」と名乗っていた。
誰もが当然、本名だと思っていた。
ところが、その名前が『仮初のもの』だという。
そもそも、なぜ王子相手に仮名を使っているのか。
それに『人間と同じと思われたら心外だ』というのはーー。
ところが、現地での聖女召喚儀式において、可愛らしい金髪美少女のカレン・ホワイトとバッティングしてしまい、挙句、黄色い肌を気持ち悪がられ、ワタシは王宮外へと追い出されてしまった。
さらに、孤児院から発生した〈魔の霧〉を放つ〈双頭の龍〉を討伐した功績で、晴れて王様から聖女認定を受けたにもかかわらず、今度は新たに王子と〈白い聖女様〉から〈魔女〉呼ばわりされてしまった。
さらには、
「この〈黄色いオンナ〉が孤児院に執着していたのは、地下で〈魔の卵〉を育てていたからですわ!」
と、濡れ衣すらかけられてしまった。
〈白い聖女様〉こと、カレン・ホワイトは、少女の見た目に相応しく、たどたどしい口調ながらも、良く響く声で演説を続けた。
「じつは私、王様から聖女認定を受けましてから、生前のライリー神父様と懇意にさせていただきました。
何度か、お茶を頂きました折に、神父様はよく嘆息しておられました。
『あのヒナなる黄色い女は、私共に迷惑ばかりかける。
痩せ細った孤児を道端で拾って来ては、子供らと戯れるフリをして、地下に潜り込む』とーー」
「嘘よ!」
間髪入れず、ワタシは叫んだ。
完全なる濡れ衣だ。
孤児院の地下に、あれほど広い空間が広がっていたとは、ワタシはまるで知らなかった。
ライリー神父がピッケたちを〈卵〉の生贄にしようとするのを、ナノマシンで観なければ、ワタシにはまったく窺い知ることはできなかった。
金髪の美少女は、明らかに虚偽の証言をしていた。
だが、ワタシは真実を知っている。
「なに、それ? マジ、ウケるんですけど!?
それ、真実と違うから!
ライリー神父こそ、魔族の礼賛者だったんだかんね!」
ワタシは胸を張って、王子派連中の圧を跳ね返す。
だが、今度は別方向から、新たに怒声があがった。
王子とは反対側、王の左隣に立っていた老人が突然、激昂したのだ。
「世迷言を。我がダレイモス教の聖職者を愚弄するかッ!
ライリー司教が、そのような背教者であるはずがない!」
顔を真っ赤にして白い顎鬚を震わせたのは、教会の教皇だった。
老人はワタシを睨み付け、宙に三角形を描き、喉を震わせる。
「王よ。改めて言わせていただきますぞ。
教会としても、このような女を〈聖女様〉とは認められませんわい。
ライリーから耳にしておりました。
この黄色い変態女は、孤児院にいた、マオとかいう白人少年にいたく執心しておったとか。異常ではありますまいか!?」
ざわざわーー。
王子派のみならず、反王子派の騎士や貴族たちですら動揺して後退り、互いに顔を見合わせる。
「孤児院少年というとーー白人のガキか?」
ドビエス王子が怪訝な表情で教皇に尋ね、次いでヒナの方に目を遣った。
ワタシは悪びれることなく、堂々と胸を張る。
「ええ。
ガチで白い肌をした、イケメンの男の子ですが、それがなにか?
彼はマオという名前でね、マジで可愛くーー立派な男の子でした。
大人顔負けの、つよつよメンタルしてたんだから!
ワタシが可愛がって当たり前じゃね!?
それで、なにか、アンタたちに迷惑かけたわけ!?」
そこまで口にすると、ワタシの目から涙がこぼれた。
今日は、泣かないと決めたのに。
決めたことが守れない。
でも、マオのことを絶賛しないではいられなかった。
「彼こそ英雄ーーワタシの王子様でした。
自ら犠牲になり、子供たちの生命を助けて、亡くなったんだから!
見かけはおとなしくて、優しそうな子だったのに。
マジで、どこから、そんな勇気が出てきたのか……」
涙を溢れ出しながらも、ワタシは大声で訴えた。
が、周囲に居並ぶ、緑の肌をした男どもは、誰一人、反応しない。
ただ、カレンと呼ばれる白い金髪美少女だけが、足を踏み鳴らし、金切り声をあげた。
「だ・か・ら、その態度を改めなさい、と申し上げているのです!」
ワタシも負けずに拳を握り締め、語気を荒げた。
「勇敢なマオを侮辱するのは、誰であろうと、マジで許せない!」
白い女の子と、黄色い肌をした女性が、互いに至近距離で睨み合う。
二人とも表面的には笑顔を貼り付けていたが、こめかみにヒクヒクと血管が脈打っていた。
「そもそもだけどさぁ、マジで、アンタ、なんでマオを侮辱するわけ?
アンタも同じ白人じゃね!?
今までも、緑や黒いのに舐められてきたんじゃねえの?
腹を立てる相手、間違ってね!?」
ワタシの問いかけに、白い少女はつんのめる姿勢になった。
「私の肌の色が白いからって、人間と同じと思われたら心外だわ。
カレン・ホワイトという名と同じく、仮初のものよ!」
奇妙な発言だった。
カレンの後に立つドビエス王子も、キョトンとしている。
居並ぶ王子派の貴族や騎士も同様だ。
〈白い聖女様〉である金髪の美少女は、王子相手にすら「カレン・ホワイト」と名乗っていた。
誰もが当然、本名だと思っていた。
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