【完結】東京異世界派遣 ーー現場はいろんな異世界!依頼を受けて、職業、スキル設定して派遣でGO!

大濠泉

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第四章 白鳥雛派遣:救世の聖女編

◆87 アンタのためになんか、シャンパン・コールはしてあげないんだから!

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 ようやく、ワタシ、〈黄色い聖女様〉こと白鳥雛しらとりひなのターンになった。
 ワタシは、〈白い聖女様〉と称された金髪美少女を指さして指摘した。
 この場にいた緑貴族たちですら、良識ある者は感じていた疑念を、ついに口にしたのだ。

「さすがに、わかったわ。
 アンタ、じつは人間じゃなくね!?
 その反応、おかしいよ!
 アンタこそ、聖女どころか、魔女なんじゃねぇの、マジで!」

 王様をはじめ、居並ぶ王国貴族たちが、身じろぎもせず息を呑む。
 それでも金髪の女の子は、悠然と振る舞う。
 ドビエス王子に視線を送り、顎をワタシの方へとしゃくった。

「このオンナ、今とっても、ひどいこと言ったわ。
 私を侮辱した。
 許せない。
 今すぐ、この黄色いオンナを処刑して。
 王子だったらできるでしょ。早く!」

 ドビエス王子はヨロヨロとよろめきながらも、〈白い聖女様〉の許に身を寄せていた。
 王子は、ワタシに魔力で壁まで吹っ飛ばされたが、力を振り絞って戻って来たのだ。

 だが、もちろん、ワタシは王子が口を出す隙を与えるつもりはない。
 王子と〈白い聖女様〉、二人を指さして糾弾を続けた。

「ヤベェよ、ホント。
 マジでアンタ、可愛らしい天使のような顔して、心は悪魔じみてね!?
 あの〈卵〉とか〈双頭の龍〉とか、みんなアンタのお仲間なんでしょ!?」

 ついで、怒りをたぎらせ、イッパツ、演説をぶちかましてやった。

「ーーハン、あの馬鹿な、頭が二つあるマヌケなドラゴン
 マジで情けねーでやんの。
 図体がでけーのに、ちっちゃい翼しかなくってさぁ。
 なかなか飛べねーでやんの。
 あっさりとワタシの聖魔法でやられちゃって、ざまあみろだ!
 いいよ。何度でもいいからさぁ、復活させればぁ?
 そのたんびに、ワタシが殺してやっから。
 なぁにが〈魔の霧〉だよ、マジで。
 ワタシが吸っても、どーってことなかったしぃ?
 あんな程度で、ホンモノの聖女様であるワタシに立ち向かおうだなんて、魔族もよほどヤキが回ってね!?
 やっぱ、魔族なんて、ホントは人間よりも弱っちいんじゃねーの?」

 ワタシの演説が、功を奏したらしい。
 可愛らしい少女の表情が醜く歪み、白い頬がサッと赤くなった。

「ば、馬鹿をいうな!
 魔族は、か弱い人間どもとは違いーー」

「そうかしらぁ?
 だったら、なんで〈魔の霧〉なんか撒(ま)いて、人間同士を争わせるわけ?
 ホンネいっちゃえば、魔族本人が戦うんじゃ、返り討ちにあっちゃうからなんでしょ?
 だいたい、戦争も人間同士でやってるだけで、魔族はちっとも表に出てこねーじゃん?
 裏でコソコソしてるだけでさぁ。
 ほんと、魔族ってヤツら、ガチの臆病者なんだから。
 そのくせ、人間様を下等呼ばわりって、なに?
 逆に、劣等感ありまくりってヤツじゃね!?
 ふふふ……。ウケるーー!」

 ワタシは甲高い声をあげて、笑い転げた。
 手をたたき、お腹をよじらせて、〈白い聖女様〉を指差して笑った。

 金髪の少女は顔を真っ赤にして、全身を震わせた。

「聖女だからって、図に乗るなよ、人間風情が!」

 憎しみと怒りの形相で、少女はワタシを睨みつける。

「カレン、いったい、どうしたんだ。
 いつもの貴女らしくないよ」

 ドビエス王子が、慌てて〈白い聖女様〉に近寄った。

 この流れはマズイ、と王子は感じていた。
 いくらにぶすぎる彼ですら、さすがに察し始めていた。
 カレン・ホワイトという、自分が〈聖女様〉と認定してしまった女性の正体に。
 それは国王や教皇をはじめ、居並ぶ貴族連中の誰もが、気付かされつつあることだった。

「うるさい! 
 黙ってろ、下等生物が!」

 カレンは、一喝した。
 ドビエス王子は、瞬時におとなしくなる。
 カレンを見詰めると、もう何も言えない。
 息すらできなくなってしまう。

 だから、王子は怒りの矛先を変えた。
 カレンカノジョが不機嫌になった元凶に、怒りを向ける。
 王子は涙目になって、ワタシを睨みつけた。

「おまえのせいだ!
 愛らしくて、天使のようなカレンを変えてしまった。
 おまえが悪いんだ!
 おまえさえいなければ、良かったのに。
〈聖女様〉は、ひとりで十分だったんだ!」

 ドビエス王子は、床に膝をつき、頭を抱えて泣き崩れた。
 彼は、〈いとしのカレン〉が壊れていくことが、耐えられなかった。

 王宮の〈謁見の間〉は、今や混沌とした様相を呈していた。

 その只中にあって、ワタシ、〈黄色い聖女様〉は笑う。

「どうよ、パッキンのお嬢さん。焦ってきた?
 ワタシ、今回の派遣じゃあ〈魅了チャーム〉は使わないって決めてたの。マジで。
 でも、他人が使う〈魅了〉を無効化レジストすることぐらい、簡単に出来るわよ」

 全身から光を放つ。
 あっという間に、〈謁見の間〉の全体が、青白く輝く。
 聖魔法の魔力に満たされたのだ。
 その瞬間、国王や教皇をはじめ、すべての人々の両眼が見開かれ、文字通り「目が覚めた思い」を感じていた。

「ま、まさかーーわれら全員が、魔法をかけられていたというのか?」

「名だたる王国の重鎮が、揃いも揃って……」

 だが、ドビエス王子の眼は、まだ覚めていない。
〈白い聖女〉の傍らにあって、ヒナを睨みつける。

「やめろ、俺様の夢を壊すなーー!」

 王子は手を広げて、自分の魔力を発動させた。
 黒い魔法の波が、ワタシに向けて、押し寄せてくる。

 さすがに王子。
 かなりの魔力を秘めていた。
 ワタシの身体が、ちょっと重くなったように感じた。

 でも、怒りに身を任せた〈黄色い聖女様〉の敵ではなかった。

「ったく、ウザってーオトコね!
 アンタは実際に王子のようだけど、悪いけど、ワタシにとっては〈王子様〉じゃない!」

 ワタシは叫んだ。

「アンタのためになんか、シャンパン・コールはしてあげないんだから!」
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