水晶龍といっしょ ~ダンジョン巡って魔王の種もぎ~(仮題)

眠り草

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【第一章】一部

【呼び出されし者】42.悪夢

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鬱展開です

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

・・・・ここは?


視界が暗転したと思うや真っ暗で無音の空間。
足元もふわふわとしており自分が立っているのかもよくわからないため上下もよくわからない。



『ああ、エミティス・・・』


突然女性の声と共に目の前にこちらに手を伸ばし助けを求める薄ぼんやりした輪郭の子供らしき影が現れる。

しかしその子供の影は、俺を掴もうと手をこちらに伸ばしているがどんどん遠退いていく。
まるで落下していくように・・・

腕を伸ばし必死にその子供の手を掴もうと足掻くがどんどん引き離されていき、ついには見えなくなってしまった。
子供を失う喪失感と絶望に胸が張り裂けそうになる。


『嗚呼、誰かあの子を・・・助けて』


はむせび泣き嗚咽を漏らし続ける。

景色が変わり薄暗い小さな家の中で幼いエミティスを見ながら夕餉の仕度をしている。
窓の外は夕闇が広がっている。



『どうして!?(どうして、のエミティスなの?)』


突然の生贄として選ばれ連れ去られる理不尽。

見も知らない男たちが突然押し掛けエミティスを△×〇への捧げ物とすると言われ、訳も分からず混乱しているとあっという間に男の肩にエミティスが担がれてしまう。

幼いエミティスが泣きながら腕を伸ばし叫ぶ「ママ、助けてぇぇぇぇ」

その声に我に返り、飛びつかん勢いで立ち上がりエミティスを担いでいる男に組み付こうとするが他の男に殴られ阻止されてしまう。


のエミティスが捧げらころされてしまう。


『私が身代わりになりますから・・・ううぅ・・・』

乙女でない我が身では聞き入れられるわけもなく、殴られ蹴り飛ばされ打ち捨てられ野に転がる。
自分の非力さを恨む。精霊様どうかエミティスをお助けください。


エミティスの悲鳴が聴こえる・・・
そ、そんな・・・





『・・ター! ・スター! マスター! マスタぁー!!』

はっと我に返るとヴィマナ?からの呼び掛けだった。
そこでいつもの魔道の瞳のGUIが表示されていないことに気づく。
当然ヴィマナの姿も見えない。声だけが聴こえてきているようだ。

『あれ?ヴィマナ?エミティスは?』

まだ頭がぼんやりしている。俺のエミティスは?・・・エミティス?


『やっと再接続できました。マスター、自我をしっかり意識して保ってください!!
 
 精神浸食を受けています。このままでは意識を乗っ取られますよ!!

 マスター周りをよく見てください。浸食してきている存在が見えませんか?』


いわれた通り周囲を見渡すと足元に先ほど泉から引き揚げた彼女が赤ん坊のように両腕と両足を身体に引き寄せ横向きに横たわっている。
目を瞑り涙を流したまま眠っているようだ。

闇の中なのにその姿を確認できるのは、彼女の全身が淡い燐光に包まれて輪郭を浮かび上がらせているからだ。

『さっき泉の底から救い上げた女性が横たわってる』

『マスター、その方以外には何もありませんか?』

辺りを見回しても闇で何も見えない。
足元の彼女をよく見てみるためにかがんでみる。

よく見てみると彼女の頭部分の燐光が一部途切れていることに気づいた。
頭頂部辺りのその途切れている部分を恐る恐る触ってみるとブルンとゼリーのような感触が手に伝わってくる。

「(気持ち悪ぅ)」

そのゼリー、脈動してました。ドクン・・・ドクン・・・・
思わず咄嗟に手を引っ込めてしまったが、特に変化はなさそうでもう一度触ってみる。

「血管・・・かな?」

『マスター、何か見つかりましたか?』

「彼女の頭の天辺から真っ黒な血管?のような物が伸びているよ」

『マスター、その血管が手掛かりかもしれませんね。

 手繰れますか?』

「やってみる。ほんと頼りになる相棒で助かるよ。ありがとヴィマナ」

本音を言えばこんなキモイのを辿りたくない・・・

『どういたしまして』

さてと覚悟を決めて脈動する何かを掴んでみる。

 ぐにゅ~ブリュンブリュン

うえぇ気持ち悪ぅ
柔らかいのに妙なコリコリする弾力が触れる指に伝わってきてその感触がもうね。。。

「(この管の先、SANチェックあるんだろうなぁ・・・)」

しっかし闇の脈動するゼリー状の管とかもろク〇ゥルフだよなぁ
これで吐き気を催す悪臭がすれば完璧だ。

幸い臭いだけは全く感じないので助かってるけど、これを辿った先にあるものを想像してしまって、正直ビクビクしてます。

しかし辿らなければ状況は変わりそうにないから仕方ない。

ブリュン、ブリュン、ブリュン・・・

気持ち悪いが手を放すとこの暗闇の空間では黒い管が見えないため掴み続けるしかない。


唐突に風景が変わる。

「おぎゃあおぎゃあおぎゃあ」
「シェルヤーム、よく頑張ったな。女の子だよ」
「あなた」
「元気な子だ。シェルヤーム、ありがとう」

そこにあるのは幸せな家族の風景だった。
生まれ立てて元気に泣く赤ん坊と笑顔で見つめ合う夫婦の姿。

その風景の真ん中が、画像加工のようにびにょ~~んと伸びて暗闇の中に消えていく。
再び暗闇だけの空間になる。

今の景色、なに?
子供を産んだ母親はさっき助けた女性だよな。
てことは今のは彼女の過去の記憶ってことか?
子供を産んでいるので母親だよな。

「ライト」

試しに魔術を使おうとしてみたけど魔導の瞳の画面が無い今の状態ではやっぱり発動しなかった。

「ヴィマナ、ここの索敵か魔力感知できる?」

・・・

あれ?反応がない。
さっき話せてたのになんでだ?

このままでは仕方ないので再び管を手繰っていく。


また唐突に景色が変わる。

ベッドに横たわる男性に縋り付き泣きじゃくる彼女とその横で右手にぬいぐるみをぶら下げ左手の指を咥えてぼーっとしている3~4歳くらいの幼女がいる。

「どうして・・・」

また景色が伸びて消えて真っ暗になる。



う~ん、これは旦那さんは亡くなったってことだよな。



次に見えた景色は、食事風景だった。

「ほら、あなたも食べないと。あ~ん」

テーブルには3人分の食事。
彼女と子供の前と食事の用意されている誰も座っていない席。
子供はさっきより少し大きくなっているので、旦那さんが亡くなってから時間が経っているのがわかる。

なんとなく嫌な予感がして俺は顔をしかめていたと思う。

誰も座っていない席にバカップルのようにあ~んとスプーンを何もない空間へ持っていく嬉しそうな表情の彼女。
そしてその彼女の後ろに立った半透明の旦那さんが悲痛な表情で彼女を見下ろしている。

あの半透明は旦那さん・・・の幽霊!?
そして奥さんは存在しない旦那を見ている。
幻視だ。これは彼女の精神が壊れている?


再び景色が消え、また管を手繰っていくと次の景色になる。


家の中だが雰囲気が今までと違っている。
どんよりというのか重苦しい感じだ。
室内もゴミなどが散らかったままだ。

全体的にやつれた感じだけど満面の笑みの彼女が丸めて筒状にした掛布団らしきものに男物の服を着せ幸せそうに抱えている。
その傍にいる子供はさっきの風景と違い少し痩せている。
やはり彼女の後ろには半透明で馬の体で顔が旦那さんという姿で悲痛な顔で見下ろしていた。


これ、彼女の精神が完全に壊れちゃったってことだよな。
子供への食事も忘れてしまっているようだし。。。



景色が消えまた手繰っていく。闇の管はだんだん太くなり脈動が大きくなってきていた。そして景色が変わる。


床に倒れた子供を介抱する男性と倒れこんで匍匐前進するような格好で子供に手を伸ばす彼女とそれを宥めている男性。
子供を介抱していた男性が子供を抱えて外へ運び出していくと「ああ、エミティスぅぅぅ」彼女が子供の方に手を必死に伸ばしながら泣き叫んでいる。

彼女の背後には半透明だがぬらぬらと艶のある漆黒の大きな馬がいた。

「ママ・・を、助け・・て」

擦れた声で子供が母親を心配して指差して母親の救助を求めていた。

「嗚呼、誰かあの子を・・・助けて」


あ、このセリフ、さっき聞いた覚えがある。

あの時、彼女は子供が生贄にされると言ってたけど実は違うってことか?

闇の管を辿ってきて見えた景色では彼女は精神を病んでいたようにしか見えなかった。
病んだ彼女には子供が連れ去られるという景色記憶として見えていた?

それとし半透明の旦那さんの姿がだんだんと変わっていっていた。あれはなんだったんだ?


再び闇の中に戻る。



目の前には大きく濡れたような艶のある漆黒の馬が居た。
見上げると大きな長い馬面に金色に輝く瞳で俺を見下ろしていた。



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いつもお読み頂き有難うございます。

本業多忙のため更新が数日おきとなりそうです。
大変申し訳ありません。
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