水晶龍といっしょ ~ダンジョン巡って魔王の種もぎ~(仮題)

眠り草

文字の大きさ
45 / 47
【第一章】一部

【呼び出されし者】41.救急救命医療24時

しおりを挟む


『マスター、既に心肺停止状態が続いてます!
 このままでは脳が低酸素濃度に因るダメージを受けてしまいます!
 至急人工呼吸と心臓マッサージをすることを推奨します』


 ヴィマナが逼迫した声で警告とアドバイスをしてくれる。
しかしまだ横たわる彼女の口からは大量の水を吐き出している最中なので人工呼吸をしても良いのか躊躇してしまう。

「何か方法は・・・」

要は脳に酸素を含んだ血液を送れれば良いんだよな?

『ヴィマナ、脳に酸素が送れたらなんとかなるんだよな?』
『はい、マスター』

既にHPは10を切っている。
一時いっときを争う危険な状態だ。

酒乱が疲れた時に飛び込む職場に設置された高圧酸素カプセルを思い出す。
有名サッカー選手が骨折を短期で治す際に使われたことで有名になったやつだ。

立方体、高気圧1.5気圧、酸素濃度35%をイメージして発動

俺等の周りに高気圧の結界が張られ、耳が気圧の変化でツンとする。
口を大きく開けて耳抜きをしているとアミラドさんも鼻を摘まんで唾を飲み込んだりしている。

でも・・・これだけじゃダメだ。これは自発呼吸をしてなきゃ効果は得られない。
HPのカウントダウンは続く。


血液を循環させられれば・・・心臓で押し出すくらいしか理屈なんかわからない。
でもすべきイメージなら俺にも出来る。

『ヴィマナ、サポートを頼む。これからするイメージのサポートと、それを実現する魔術式を作成出来るか?』

『マスター、・・・やっテミマス。オクタデカマルチプロセッシング起動』

途中から今までの声とはまるで違う機械音というか音声合成のような発音で淡々とした返事が返ってきて驚くが、もうそんなことを気にしている猶予はない。
・・3・・2・

俺は彼女の肺に空気を送り込み膨らませ血液に酸素を溶け込ませ、そして心臓を直接握りしめ、心臓から押し出された血液が全身の血管(ヴィマナ、全身の血管のイメージサポートを頼む!)に廻るイメージを『了解..完了シマシタ』する。

一時的テンポラリ魔術:人工心肺蘇生 を作成しました。発動対象を選択してください】

間に合え!と心で叫ぶ。



発動イグニッション!」




彼女の胸全体が膨らみ、心臓が握られる。1、2、3、4、5回
自然と息が吐き出されるのを確認する。

「ゴボゴボゴボ・・」

音を立てて口から水が出てきたが水もだいたい出切ったようだ。

再度胸全体が膨らみ、心臓が1、2、3、4、5
・・・3セット目
・・・4セット目
・・・5セット目

『ヴィマナ、脳へのダメージは?』
『はい、マスター。残念ながら軽度の後遺症が出る可能性があります』
『そっか・・・』

ヴィマナの声が元に戻っている。

『でも命は取り留められそうですよ』

察したのかヴィマナが慰めの言葉を掛けてくる。


『マスター!心拍が戻りました!魔術のキャンセルをお願いします。

 ただ、自発呼吸はまだなので、キャンセルしたら人工呼吸をお願いします』

『ヴィマナ、了解。ありがと』

既に顔に赤みが射してきているが、呼吸は止まったままだ。

魔術で人工呼吸らしきことが出来てたんだから、俺が人工呼吸しなくても魔術で良いよね。
とさっきの一時的魔術の式から心臓マッサージを省いた人工呼吸魔術を作成して再度実行する。
裸にしてしまっているので地面に敷いたコートで包み保温する。

『マスター、・・・意外です』
『心外です』

即答。そんなDTのようなこと考えませんから。

こちとら看護学校時代の酒乱に人工呼吸の練習台にされ、うちに飲みに来ていたその同級生にも面白がられて実験台にされた中学時代を過ごした俺に隙はない。

お陰で異性にゃ達観してるんだよ。

一番の理由は、魔術作るの楽しーだからですが。

で、効果あるか分からないけど脳への後遺症が治せるかもしれないので、脳全体に修復レストアをかけておく。

『脳細胞が死滅したとか血管が破裂したとかは治せるけど、記憶に関しては修復レストアでも治る保証は出来ないんだよね。

 記憶はニューロンの繋がりの問題で常に変化し続けているからどれが正しい状態かというのが遺伝子からはわからないからね。

 まあやらないよりはやっておいた方が後遺症が少なくて済むはずだよ』

『その辺は意識を取り戻してからの話ですからね。

 問題はあれです』

と、水の精霊ウンディーナの方へ視線を移す。
状況変わらずまだ慟哭の叫びを挙げ続けている。

『マスター、魔力を表示します』
『ん?』

水の精霊ウンディーナに被せて高密度の魔素の渦だか柱だかが見えるその中から青い魔力の糸が目の前に横たわる彼女に繋がっている。

水の精霊ウンディーナと魔力で繋がってる?

 これが感情同調の原因かもしれないね』

気を失ったままの彼女にしてあげられることを考えてみる。
HPは先程の修復レストアでだいたい回復しているが、MPは0のままだ。

MPを少しでも回復させられれば意識を取り戻す?

マナを注入してあげれば回復するんじゃね?
という思い付きから再度魔力感知で観察してみる。

良く見てみると水の精霊ウンディーナから繋がっている魔力の糸は天頂に繋がりそこから細く枝分かれして彼女の体全体に拡がっているのがわかる。

これが体内に流れる魔力の流れってやつなのかな?

『ヴィマナ、この人に俺の魔力を流し込んでMP回復させられないかな?』

『マスター、可能性としてはありえますが、対象の魔力とマスターの魔力を同調させないと反発されてしまうと思われます。

 魔力はその人の性質その物ですから、同調するということがどのような影響を及ぼすかは予想できません』

『物は試しだ、ヴィマナ、魔力の同調サポートをお願いするよ。

 イメージは俺から魔力の糸を伸ばして彼女の頭頂部へ繋げてそこで彼女の魔力の波長に変換して注入する。

これならお互いに影響はしないんじゃないかな』

『了解です。マスター』

『やっぱり君、面白いこと考えるね。

 多分それでいけると思うよ』

盗聴魔リュファーナ女史から大丈夫そうとのお墨付きを頂いたので魔術のイメージを想い描きながら魔術式の生成を始める。

ヴィマナが対象の魔力の波長を読み取り同調させて行く。

物凄い勢いで意識だけが肉体から引き摺り出されるような感覚で脱力感に襲われる。
MPゲージが物凄い勢いで減っていき、あっという間に空になる。

「うわっわっ!ヴィマナ、ストップ!ストップ!」




思わず叫んでしまったが世界が暗転して行く。。。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...