水晶龍といっしょ ~ダンジョン巡って魔王の種もぎ~(仮題)

眠り草

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【第一章】一部

【呼び出されし者】43.悪夢2

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巨大な濡れたような紫掛かった光沢を放つ漆黒の馬が俺の目の前に鎮座している。



「(え~っと、拳王様の愛馬かな?)」

世紀末覇者が乗ってたお馬さんのようです。主に大きさ縮尺的に

金色こんじきに光る2つの瞳がじっと俺を見据えたまま微動だにしない。


当然見覚えのある馬だ。

「さっきの回想シーンの半透明の旦那さん・・・ですよね?」

俺の問い掛けに、黒馬はゆっくりと立ち上がるとこちらにまっすぐに向き俺を見据えて首肯する。


『妻ヲ・・・・・・苦シミカラ救ッテ殺シテ欲シイ』

「へ?」

まさかの第一声が殺人依頼!!
そりゃ変な声も出ますって

いやいやいや、いくら精神に異常を来たしていたとしても敵対もしていない、しかも精神病んでるとはいえか弱い女性を殺すとか流石に無理無理無理。
敵対している非道と判ってる連中には躊躇したりはしませんけど、こんな同情こそすれあの憐れな境遇の人を手にかけるとか無いわー。

ただメンヘラさんを以後支え続けられるかと言われると、人生経験20年程度の若僧としては厳しいけど・・・
しかも寿命がハーフエルフだし・・・
実際ハーフエルフのどれくらいか知らないけど、ただの人間の俺よりは長いだろうことは想像に難くないしなぁ


『妻ノ精神ハ私ガ先立ッタコトデユックリトダガ崩壊シテイッタ。

 愛スル者ガ変質シテ壊レテイク様ヲ見続ケテイタガ、最早妻ノ心ハモトニハ戻レハシナイダロウ。

 延々ト死ンダ私ノ幻想ヲ追イカケ続ケ、アマツサエ自ラノ子供デアルえみてぃすスラ分カラナクナッテシマッタ』

「だからといって、このままここで彼女が死んだとして心は解放されますかね?」

今までの流れからそこはかとなく漂う嫌なフレイム・ソフトウェア式展開が思い浮かんでしまったのだ。

『・・・ソレハ?』

「あなたは彼女が心残りでここにそんな姿になってまで残念しているわけですよね?

 あなたは元の人の姿を取り戻せるなら、迎えに来たよと出来るかもですが、

 もし今の姿のあなたを彼女が受け入れなかったら?」

『・・・』

「そうなるとここで命を絶ったとしても彼女の心はあなたの幻影を追い続けるあなたのような存在になってしまう気がします。。。

 そうすると、彼女は未来永劫彷徨い続ける存在になってしまうんじゃないかとふと思いついちゃったんですよ」

愛する者を失いそれでも縋り追い続けた彼女がそのまま成仏するとは思えないからなぁ
しかも相当な怨念になりそうだ。

『・・・』


返事が無い。ただの屍のようだ。。。あ、幽霊でしたね。











『シェル、シェル、起きなさい。シェルヤーム』

俺は赤ん坊のように体を丸めて眠るシェルヤームの傍にしゃがみ、起こすために声を掛けながら、左手の薬指を優しく握ってあげる。これが彼ら夫婦だけのお互いの起こす方法お約束なのだそうだ。

薬指を握るとピクッと反応し表情が和らいだような気がする。すると・・・


「ん、・・んん、ん~」

彼女ことシェルヤームさん(129)がゆっくりと瞬きをし始めて長い睫毛を揺らす。

潤んだ目のシェルヤームさんと目線が合う。


「・・・あ、あ、あ、」


唇がわなわなと震え始め、眉を八の字に寄せ、瞼が震え瞳には次から次へとあふれ出してくる涙で頬に川を作っていく。

彼女はガバッと上半身を起こすと、

「あなたぁぁぁぁ」

叫びながら号泣し俺の胸に飛び付いて頭を俺の胸にぐりぐりと擦り付けてくる。抱き付く力はとてもやつれた彼女からは想像も出来ないほど力強かった。

俺は背中と頭に手を回して宥めるためにゆっくりポンポンと軽く叩いたり撫でてやる。

「やっと、やっと、あ、あ、・・・帰ってきてくれた。やっと・・・」

『君を置いて行ってしまい済まなかった。よく頑張ったね。もう無理しなくていいんだ』

悔恨の念旦那さんの想いが俺の胸を締め付ける。

「あ、あ、あ・・・うわあああああああああああああん・・・・・」

胸にしがみついたまま嗚咽がいつまでも続いていた。




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