【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう

文字の大きさ
13 / 59

13. 君を守るのは‥‥‥ Side テオ

しおりを挟む

 【Side テオ】

 ポールとマティアの結婚パーティーは終盤に差し掛かる。

 ダンスが大の苦手であるテオは、大広間から離れて、バルコニーのベンチで一人休憩していた。

 (なんにせよ、サラに結婚式がぶち壊されなくてよかったよ。)

 結婚式の途中、ポールに恐ろしい目で睨まれたが仕方ない。

 (俺じゃ止めれないよ。ポール。)

 テオが大きくあくびをした時、ドントール国王とマティアがこちらに歩いて来るのが見えた。 
  
 (なんで花嫁とドントール国王がここに……?)

 テオはこっそり草むらに隠れ、マティアと彼女の父、ドントール国王を伺った。

「マティア、私の言葉を忘れるな。ドントール王女としての役目を果たすのだ。」

「かしこまりました。」

「お前の役目はなんだ?言うてみろ。」

「皇太子を毒で弱らせ、彼の弱点を見つけることです。」

 マティアは人形のように表情を崩さない。その姿はテオが知る彼女と全く違っていた。

 (嘘だろ……?)

 悪名高いドントール国王の行動に裏があることには、皆勘づいている。だがまさか娘を利用して、皇太子に毒を盛ろうとしているとは。

「何か皇太子についてわかったことはないか?」

「ございません。」

「女の影は?」

「全く。」

「ちっ。つまらんな。」

マティアは嘘をついている。ポールの浮気をドントール国王に知られてはならないのだ。

 (だから、マティアはあんなに焦ってたのか……。)

「なんでもよい。ポールの不貞行為の噂を聞いたらすぐに儂に手紙をよこせ。あの男を血祭りにあげてやる。」

「……はい。」

「なにも無ければ、お前自身であの男の悪評を作り出せ。ただこちらから攻めるのでは………体裁が悪いからな。」

 声をあげて笑う父親をマティアは無表情で眺めている。

 ドントール国がリックストン国を侵略することは、もう既定路線なのだ。そしてそれを、マティアは知っている。
  
「情にだけは流されるでないぞ。あの男は……お前の敵なのだから。」

「ええ。わかっております。お父様。」

 短く言葉をかわしマティアとドントール国王は大広間に戻って行った。
 
 (マティア。お前、なんてものを一人で背負ってんだよ……。)

    ◇◇◇

 草むらから出たテオは急いで大広間に向かう。簡単に体についた草を払った。
 
「マティア。次は俺と、ダンスを踊ってくれないか。」

「テオ……。もちろん喜んで。」

 ダンスに誘うと、強張っていたマティアの顔が少しだけ緩んだ。

「ダンス……苦手なんだ。足踏んだらごめんな。」

「だいじょうぶよ。ゆっくり踊りましょう?私も……のんびりしたい気分なの。」

「だな。」

  幸いにも、次に流れてきた曲はゆったりとした曲調だった。マティアと手を合わせ、それらしく音楽に乗るだけで場は保たれる。
  
「結婚おめでとう。マティア。」
 
「ありがとう。」

「本当に美しい花嫁だよ」

「今日……初めて、言われたわ。」

  マティアは表情を崩した。笑顔を作ろうと思ったのだろうけれど、失敗した、そんな顔だった。

  "結婚おめでとう"

 この言葉がマティアにとってふさわしいのか、分からない。それでも、この美しい花嫁にかける言葉はやはり、"おめでとう"しか思いつかなかった。

「みんなそう思っているよ」

「お世辞ね。」

「ほんとだって。」

 長く美しい黒髪に青い瞳。ドントールの至宝と評されるマティア。テオにとって、マティアは昔から手の届かないところにいる美しいお姫様だった。 
 
「みんな私を見ていないわ。」

「釘付けだって。」

「ううん……見ているのは私の父よ。本当にこの同盟が継続されるのか、父が裏切るんじゃないかってみんな疑ってる。」

 マティアの言葉は……悲しいことに事実だった。誰もがドントール国王の噂をしている。

 "この婚姻には裏があるに違いない"と。

「パーティの途中で、誰かが噂してたわ。マティア王女はリックストンの人質になるために、わざわざ嫁いだのかってね。」

「酷いな……。」

 テオは慎重に背中でマティアを周りから隠した。彼女が涙を流しても、誰にも知られないように。
 
「マティア、もしも……。」

「言わないで。大丈夫よ。私が自分で選んだ道だもの。何としても……守ってみせるわ。」

 マティアの口調は強気だが、瞳は不安そうにゆらゆら揺れている。それが酷くアンバランスで……抱きしめたい衝動に駆られた。

 (一人で……何ができるっていうんだよ。)

 一人国を離れ、父が侵略すると決めた国に嫁いだマティア。彼女はただひたむきに、ポールとリックストンを守りたいと望む。

 その健気さが、酷く危うげに見えた。
 
「辛かったら、いつでも手紙でおくってな。力になるからさ。」

「……あり、がとう。テオ。」

 マティアは一瞬言葉に詰まって、目を閉じた。そして、次の瞬間には小さく微笑んでいる。

(辛かったら逃げておいで。俺が世界のどこにでも連れていってあげるさ。)

 言えなかった"もし"の続き。

 次のダンスに向かうマティアをテオは優しく見つめていた。
 

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

【完結】「義妹に譲れ」と言われたので、公爵家で幸せになります

恋せよ恋
恋愛
「しっかり者の姉なら、婚約者を妹に譲ってあげなさい」 「そうだよ、バネッサ。君なら、わかるだろう」 十五歳の冬。父と婚約者パトリックから放たれた無慈悲な言葉。 再婚相手の連れ子・ナタリアの図々しさに耐えてきたバネッサは、 その瞬間に決意した。 「ええ、喜んで差し上げますわ」 将来性のない男も、私を軽んじる家族も、もういらない。 跡継ぎの重責から解放されたバネッサは、その類まれなる知性を見込まれ、 王国の重鎮・ヴィンセント公爵家へ嫁ぐことに。 「私は、私を一番に愛してくれる場所で幸せになります!」 聡明すぎる令嬢による、自立と逆転のハッピーエンド。 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

夫の告白に衝撃「家を出て行け!」幼馴染と再婚するから子供も置いて出ていけと言われた。

佐藤 美奈
恋愛
伯爵家の長男レオナルド・フォックスと公爵令嬢の長女イリス・ミシュランは結婚した。 三人の子供に恵まれて平穏な生活を送っていた。 だがその日、夫のレオナルドの言葉で幸せな家庭は崩れてしまった。 レオナルドは幼馴染のエレナと再婚すると言い妻のイリスに家を出て行くように言う。 イリスは驚くべき告白に動揺したような表情になる。 「子供の親権も放棄しろ!」と言われてイリスは戸惑うことばかりで、どうすればいいのか分からなくて混乱した。

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ】悪妃は余暇を楽しむ

ごろごろみかん。
恋愛
「こちら、離縁届です。私と、離縁してくださいませ、陛下」 ある日、悪妃と名高いクレメンティーナが夫に渡したのは、離縁届だった。彼女はにっこりと笑って言う。 「先日、あなた方の真実の愛を拝見させていただきまして……有難いことに目が覚めましたわ。ですので、王妃、やめさせていただこうかと」 何せ、あれだけ見せつけてくれたのである。ショックついでに前世の記憶を取り戻して、千年の恋も瞬間冷凍された。 都合のいい女は本日で卒業。 今後は、余暇を楽しむとしましょう。 吹っ切れた悪妃は身辺整理を終えると早々に城を出て行ってしまった。

旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。

アズやっこ
恋愛
私は旦那様を愛していました。 今日は三年目の結婚記念日。帰らない旦那様をそれでも待ち続けました。 私は旦那様を愛していました。それでも旦那様は私を愛してくれないのですね。 これはお別れではありません。役目が終わったので交代するだけです。役立たずの妻で申し訳ありませんでした。

【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?

つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。 彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。 次の婚約者は恋人であるアリス。 アリスはキャサリンの義妹。 愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。 同じ高位貴族。 少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。 八番目の教育係も辞めていく。 王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。 だが、エドワードは知らなかった事がある。 彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。 他サイトにも公開中。

処理中です...