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7.幸せな日々
しおりを挟むウォリアがフローラを捕まえる数週間前。
「また来てしまった。入っていいか?」
「いらっしゃい。」
ウォリアが毎日、私、リリーの家に来るようになっていた。
『フローラとリリーのどっちが嘘をついているのか、俺にはわからないけれどリリーに会いたかった。』
フローラの家から私の家にやってきたウォリアの言葉だ。
なぜウォリアが私に会いたいと言ってくれるのか。全く理由はわからないけれど、ウォリアとの時間が幸せなことは確かだった。
「今日は何食べたい?」
「肉!!」
「わかったわ。」
そう言うと、ウォリアはいそいそとカバンから本を取り出した。
ウォリアは夕方頃毎日私の家にくる。
彼が美味しそうに料理を食べてくれるのが嬉しくてしかたない。
材料費や手間賃として、材料費の十倍以上のお金をウォリアがくれているんだけども、むしろ私がお礼を言いたいくらいだ。
別に二人でいても、とくに何をするわけでもなくのんびり本を読んでいる。
この時間が何より心地いい。
「楽しい?」
と、尋ねると
「すごく楽しい。リリーの家にいると、幸せになれるんだ。」
「あら。」
緩んだウォリアの笑顔。
彼の笑顔は荒んだ私の心を癒やす。
「だめよ。そんなことを言ったら。」
「なぜ?」
「・・だって嬉しくなっちゃう。」
「嬉しくなったらだめなの?」
だって、このままだと私はウォリアのことを好きになってしまう。だけど・・・私が誰を好きになったってどうせフローラがに台無しにされてしまうわ。
「だめじゃないけれど・・・、ウォリアはチョコレートみたいなの。」
「ええ?どういうこと?」
「チョコレートって、一粒食べるとまたどんどん食べたくなってしまうでしょう?ウォリアに褒められると、また嬉しくなって褒めて欲しくなっちゃうの。」
欲深くなってしまうでしょう?
「俺がチョコレート、か。そしたら、リリーはクッキーだね。」
「・・・ん?」
「相性抜群だろ?」
そんな嬉しいことを言うんだ・・・!
ああ、もうだめだ。
ウォリアは存在しているだけで私を惹きつけてしまう。
「そんな見つめないでくれ、リリー・・・。」
ウォリアが私の頬にそっと触れた。
「え?」
「キスしたくなるから。」
「・・・え!!」
私が後ずさると、ウォリアが首を傾げた。
「そんなに驚く事?なぜ俺がリリーの家に毎日通っていると思ってるんだい?」
「えっと・・・料理が美味しくて読書をするのに最適な場所だから・・・?」
大きくため息を吐いたウォリアは、私の頬に軽くキスした。
「そんなわけないだろ?」
「うぉ、ウォリア!」
「確かにリリーの料理が美味しくて、このソファーは読書をするのに最適な場所だけど・・・俺が食べたいものはもっと別のものだよ。」
ウォリアの唇が触れた場所が、熱い。
「な、なによ?」
「リリーだよ。毎日食べたいのを我慢してるんだ。」
「ーーーー食べ物じゃない!!!」
だめだ、だめだだめだだめだ。
7歳も歳下の青年に翻弄されている。
「と、とにかくわたしを誘惑するのはやめてちょうだい!」
「いやだ。」
子供のようにウォリアは首をふる。
もう嫌なのに。誰かに期待するのも、好きになるのも。
「だいじょうぶ。俺が君を守るよ。リリー。」
「・・・ありがとう。」
ウォリアの言葉は心から嬉しい。
だけど・・・幸せはいつだってフローラによって踏みにじられる。
幸せになれるなんて、期待するだけ無駄だーー。
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