親友に婚約者を奪われ婚約破棄されました。呪われた子と家族に邪険にされ続けた私には帰る場所はありません。

五月ふう

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呪われた奴め!!婚約破棄するのは、当然だろ?

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「さてと、今日はそろそろ閉館かな。」

私は首から図書委員のカードを外した。

私の名前はサナ・ウェンズディ。
時刻は午後6時。

「アキトー!!」

もうひとりの図書委員であるアキトに
声をかけた。

部屋の奥で整理をしていたアキトが
こちらにやってくる。

「今日はもう閉館だよ。」

「了解。」

アキトは無表情で答えた。

「お疲れ様でした。」

(今日も楽しかったなぁ、、。)

無愛想な顔からは考えられない、
弾んだ心の声が聞こえた。

私は笑顔で手をふる。

「また明日ね。」

私は、人の心が聞こえるテレパシー。

聞きたくなくても、
常時人の気持ちが
頭に流れ込んでくる。


------------------------------------


「サナ!
 この呪われた奴め!!」

図書室からの帰り道。
怒声とともに名を呼ばれた。

足を止めて振り返ると
そこにいたのは、

「ハイリ、、、。
 サンディア、、。」

私の婚約者であるハイリと
友人のサンディアだった。

ハイリとは、
学園で仲良くなり一ヶ月ほど前に
正式に婚約をした。

サンディアは私の秘密を知る
数少ない友人である。

「お前!!
 人の心を読み取れるんだろう!!
 僕のことを
 ずっと騙していたんだな!」

ハイリは
そう言って私を睨みつけた。

貴方も、
そう言って私を責めるのね。

この力のせいで、
家族からずっと
気味悪いと邪険にされてきた。

心の声に反応しないで、
ただ静かに、
ひたすらにそれを念じて
これまで生きてきた。 

これまで、
ハイリに心が読めることを
バレずにやってこれていたのに、、。

「サンディア、
 貴方がハイリに
 私の力のことを話したのね。」

サンディアは、薄く笑うと
ハイリの腕を組んだ。

「黙っていたサナが
 悪いんでしょう?」

(これでハイリは、私のものだわ。)

サンディアの言葉とともに、
心の声が聞こえてきた。

「秘密にしてと、
 言ったのに、、。」

私はポツリと呟き、俯いた。

サンディアは、
まだ私が自分の特異さに
気づいていない頃からの
友人だった。

心の声が読める私は、
そんなにも気味が悪いかな?

「ハイリ。」

私はハイリの名を呼ぶ。
粗雑ではあるけれど、
言葉と行動に裏表がないハイリ。

貴方となら、
一緒に生きていけると
思ったのにな。

「俺の名を呼ぶな!!
 気味が悪い!」

(これ以上、
 感情を読み取られてたまるか!)

もう、貴方とはいられないのね。

「婚約破棄しましょうか?」

私はハイリに言う。

私を厄介払い出来ると喜んでいた家族は、
悲しむだろうけど。

「当然だ!!」

(だが、それだけじゃ物足りない!)

何を言う気?

「俺に、慰謝料を払え!!」

「え?」 

何言ってるの、この人、、。

「俺の感情を勝手に読み、
 俺のプライドを傷つけた!!
 その慰謝料を払え!」

私は呆然とハイリを見た。

そんなお金、
私に無いし、
家族も払ってくれるはずないのに。

大体、感情を読んだだけで慰謝料って、
そんな馬鹿な話があるの?

サンディアはにやにやと
私を見ていた。

(いい気味だわ。
 美人だからというだけで
 男にちやほやされてたんだから。
 バチがあたったのよ。)

貴方、私にそんなことを
思っていたのね。

「そんなこと、できないわ!!」

必死で訴えるも、

「払え!」

ハイリは頭が回っていない。

どうしたらいい、、?

途方にくれた、その時。

「慰謝料なら、
 僕が払うよ。」
一人の男がそこに現れ、
ハイリの前に
札束を投げた。

「アキト、、、!
 貴方、どうして、、?」

アキトは私の腕を強く引いた。

「行こう。サナ。
 こんな奴らの相手をすることはないよ。」


------------------------------------


「大変だったね。」

(だいじょうぶ、、?)


アキトが私を連れてきたのは、
図書室。

アキトからの心からの心配が
伝わってくる。

「だめだなぁ、
 今優しくされちゃうと、、。」

私は両手で顔を覆った。

私は
ちらりと
アキトのことを見た。

「ハイリの言ってたこと、
 聞こえてた?」

アキトに、私がテレパスだってこと
知られちゃったのかな。

「君が、
 人の心が分かること?」

そうか、知られちゃったか。

「そう。
 そうかぁ、知っちゃったかぁ。」

知られたく無かったな。

この図書室は
私の聖域だったのに。

「サナ。」

アキトは
まっすぐに私を見た。

「僕は、
 君が人の心がわかることに
 気づいていたよ。」

「え?」

思いがけない一言に
私は目を見開いた。

アキトは優しく微笑んだ。

「僕の母が死んだときのこと、
 覚えてる?」 

アキトのお母様が亡くなったのは
半年ほど前のことだ。

お母様は
何度か図書室に来ていたので、
私も少し話をしたことがある。

アキトに対して、
バレるようなことをしただろうか、、?

「その日、
 僕は誰にも母が
 死んだことを言わなかったし、
それを悟られるような事もしなかった。」

私はあの日のことを思い出す。
心の中以外、
アキトは完全にいつもどおりだった。

私もできるだけ
いつもどおりに振る舞った記憶がある。

「そうね。」

「あの日、
 サナはずっと気遣うように見ていて、
 温かいお茶をくれたよね。
 それから、
 だいじょうぶ?って尋ねた。」

私はうんうんと頷いた。

「でも、それだけじゃ、
 私がテレパスだとわからないでしょう?」

なぜ私が、
人の心が読めるとわかったの?

「君は
 気づかれていないと
 思ってるかもしれないけど、
 あの日、
 君泣いてただろ。」

バレてたか。

「泣きながらさ、
 アキトのお母様、て
 言っていた。」

そっか。

「僕は、
 ずっと君を見てた。
 だからきっと、
 君は人の心がわかるだろうなぁ、
 って思ったんだ。」

「気味が悪いって 思ったでしょう。」

アキトは首を振った。

「いいや、
 僕はそれ以来、
 君への気持ちを
 なんとか封じ込めることに
 必死だった。
 でもそれは、
 君を気味が悪いと
 思っていたからじゃない。」

「なんで?」

「君のことを
 こう思ってたからだよ。」

(大好き。)

「ね、伝わった?」


アキトはいたずらっぽく笑った。


------------------------------------


学園を卒業した私は
アキトと結婚し、
無事実家に出ることができた。

サンディアは
学園を卒業する前に
ハイリの子供を妊娠し、子供を産んだ。

だが、ハイリは
学校のテストを合格できず、
学園を卒業することができなかった。

ハイリはその後、
学校をサボり続け、
結局中退したらしい。

「ま、やつは結局ポンコツだったのさ。」

アキトは
私にはそういった。

アキトは優秀な成績で
学園を卒業し、
政治家としての職を得ていた。

「あいつは
 君には
 釣り合わなかったのさ。
 サナ。」

私はふふ、と笑った。

「君のテレパシーは、
 僕を幸せにしてくれるからね。」

ねぇ、貴女にあえて、
私は本当に幸せよ。アキト。




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