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1.お飾りの婚約者にしてください!
しおりを挟む「婚約破棄する前に、、、私をお飾りの婚約者にしてください、、、!」
恐怖のあまり尻もちをついたまま、名家ジェームズ家次女オリビアは、皇太子レオに嘆願した。ここはハリバート城王の間。
「お飾りの婚約者?何を言ってるんだ、、、?」
玉座の前に立った皇太子レオは右手に持つ大剣を婚約者オリビアに向けている。
これは、命がけの行為。一歩間違えば、あの世行き。
"メイド殺しの皇太子"
それが皇太子レオの通り名である。かつて穏やかであった皇太子レオは母親の死によって乱心し、残虐な行為を繰り返していると聞く。
もちろん、私だっておそろしい皇太子の元に嫁ぎたくなんか無かった。
『可哀想なオリビア。また、生きて会えるのかしら、、、?』
城に来る前、私を見送った姉のビアンカの言葉である。
『次に帰ってきても、お前に居場所はない。』
父はレオ皇太子の元に嫁ぐ私にそう言った。もちろん父は、レオ皇太子の"メイド殺し"の噂を知っている。
『死んでもいいから、帰ってくるな。』
それが父の考え。
「私は本気です、、、!父に捨てられ、私には帰る場所がないのです、、、!」
かつて二度の婚約破棄された私は名家ジェームズ家の汚点。二度目の婚約破棄の後、私は実家に帰ることができず路上で暮らしていた。
「俺に殺されたとしてもか?」
銀色の髪に褐色の瞳。乱心し、残虐な感情しか残っていないと噂されるレオ皇太子。だが想像よりずっと優しい顔をしていた。その瞳には大きな哀しみがあるように見える。
「本当に、レオ様はメイドを殺したのですか?」
「なんだと?」
窓からの風で、レオ皇太子の前髪がふわりと揺れた。夕日に照らされたレオ皇太子はこの世のものとは思えないほど美しい。その姿は、私の一番大切な友達によく似ていた。
(私はこの人の妻になるんだ。)
レオ皇太子が右手に持つ大剣を振り上げた。ヒュン、と恐ろしい音がなる。だが、逃げるつもりはない。恐ろしい皇太子よりももっと恐ろしいものは沢山あると知っている。
(真実がわかるまで、この人を疑いたくない。)
これまでずっと、噂によって傷ついてきたのは私自身だ。
「わっ、私には、レオ様がそんなに恐ろしい人には見えませんっ!なんでもしますから、私にご飯と寝床をください!!」
地面に頭をこすりつけて、レオ皇太子に頼み込んだ。
「愛してほしい、なんて、絶対に言いませんから!!」
心臓はどくりどくりと、音を立てていた。まるで走馬灯のように、10年前の親友との記憶が頭に蘇っていた。
◇◇◇
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