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9.馬小屋で働かせてもらいます!
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その頃、私はレオに連れられて馬小屋の隣の家にいた。連れてきたレオは馬小屋の管理人さんに何かを伝え、すぐに立ち去っていった。
「いいんじゃないかな。」
私は、ドレスから作業着に着替える。3年間医療団で働いていたので、作業着のほうが着心地が良い。
コンコン
「着替えはできたかい?」
部屋の外から男の人の声がする。おそらく、馬小屋に済むお爺さんだろう。
「はい。」
部屋に入ってきたのは、小柄でふっくらとした白髪のお爺さんだった。お爺さんは優しい笑顔で私に声をかけた。
「話には聞いとるよ!レオ様の婚約者のオリビアちゃんじゃろ?」
「はじめまして!今日からここで、馬の世話を手伝うことになったオリビア・ジェームズです!よろしくお願いします!」
私が勢いよく頭を下げると、お爺さんは大口を開けて笑った。
「はっはっはっ。ずいぶん元気なお嬢ちゃんだな。わしゃあアダムズ・スクリンプ。30年間、ハリバート城の馬の管理をしておる。」
それからアダムズは、私を馬小屋に案内してくれた。木の匂いと、馬の糞の匂い。綺麗に掃除された馬小屋の匂いは苦手な匂いでは無くてほっとした。
「おーい!ジョシュア!エレリア!」
アダムズに呼ばれて、馬小屋の奥からアダムズに顔立ちが似た一人の青年が現れた。
「はじめまして。オリビア様。僕はジョシュア・スプリクト。普段は騎士をしているのですが、時々父の仕事を手伝っています。」
柔和な笑顔を浮かべて、ジョシュアは優雅に挨拶をした。黒髪に黒目で、背が私の頭を3つ分くらい大きい。
「オリビア様、だなんて、、。オリィと読んでください。私はこれから指導していただく身ですから。」
畏まった私を見てジョシュアはアダムズと同じように豪快に笑った。
「それじゃあオリィと呼ばせてもらうよ。皇太子から事情は聞いてる。なにかあったら遠慮なく俺を頼ってくれ。」
ジョシュアが差し出した右手をおずおずと握る。ずいぶんフレンドリーな人だ。
「おーい!エレリアー!」
ジョシュアは馬小屋に向かって声をかけるも、誰も姿を現さない。
「エレリアは俺の妹。父さんの仕事を手伝ってて、今も馬小屋にいるんだけど、、、。」
ジョシュアは申し訳無さそうな顔で私に言う。
「ごめんな。エレリアは人見知りなんだ。気にしないでくれ。」
「気にしません。」
ジョシュアは声を落として続けた。
「それから、エレリアは貴族嫌いでな。もしかしたら、冷たく接してくるかもしれないが悪く思わないでくれ。」
何か事情があるのだろう。私は深く頷いた。
「エレリアさんを傷つけないよう、十分に注意します。」
ジョシュアは大きく目を見開いた。
「オリィは、優しいんだな。エレリアと友達になれるといいんだが。」
ジョシュアの言葉に驚くのは私の方だった。
(馬小屋に送られた皇太子の婚約者に、妹の友達になって欲しいと頼むなんて。)
視線に気づいたのか、ジョシュアはぽりぽりと頭をかいて笑った。
「流石に、馴れ馴れしかったな。」
私は大きく首を振った。
「むしろ、、嬉しいです。」
そうして、私の馬小屋での生活が始まった。
◇◇◇
「いいんじゃないかな。」
私は、ドレスから作業着に着替える。3年間医療団で働いていたので、作業着のほうが着心地が良い。
コンコン
「着替えはできたかい?」
部屋の外から男の人の声がする。おそらく、馬小屋に済むお爺さんだろう。
「はい。」
部屋に入ってきたのは、小柄でふっくらとした白髪のお爺さんだった。お爺さんは優しい笑顔で私に声をかけた。
「話には聞いとるよ!レオ様の婚約者のオリビアちゃんじゃろ?」
「はじめまして!今日からここで、馬の世話を手伝うことになったオリビア・ジェームズです!よろしくお願いします!」
私が勢いよく頭を下げると、お爺さんは大口を開けて笑った。
「はっはっはっ。ずいぶん元気なお嬢ちゃんだな。わしゃあアダムズ・スクリンプ。30年間、ハリバート城の馬の管理をしておる。」
それからアダムズは、私を馬小屋に案内してくれた。木の匂いと、馬の糞の匂い。綺麗に掃除された馬小屋の匂いは苦手な匂いでは無くてほっとした。
「おーい!ジョシュア!エレリア!」
アダムズに呼ばれて、馬小屋の奥からアダムズに顔立ちが似た一人の青年が現れた。
「はじめまして。オリビア様。僕はジョシュア・スプリクト。普段は騎士をしているのですが、時々父の仕事を手伝っています。」
柔和な笑顔を浮かべて、ジョシュアは優雅に挨拶をした。黒髪に黒目で、背が私の頭を3つ分くらい大きい。
「オリビア様、だなんて、、。オリィと読んでください。私はこれから指導していただく身ですから。」
畏まった私を見てジョシュアはアダムズと同じように豪快に笑った。
「それじゃあオリィと呼ばせてもらうよ。皇太子から事情は聞いてる。なにかあったら遠慮なく俺を頼ってくれ。」
ジョシュアが差し出した右手をおずおずと握る。ずいぶんフレンドリーな人だ。
「おーい!エレリアー!」
ジョシュアは馬小屋に向かって声をかけるも、誰も姿を現さない。
「エレリアは俺の妹。父さんの仕事を手伝ってて、今も馬小屋にいるんだけど、、、。」
ジョシュアは申し訳無さそうな顔で私に言う。
「ごめんな。エレリアは人見知りなんだ。気にしないでくれ。」
「気にしません。」
ジョシュアは声を落として続けた。
「それから、エレリアは貴族嫌いでな。もしかしたら、冷たく接してくるかもしれないが悪く思わないでくれ。」
何か事情があるのだろう。私は深く頷いた。
「エレリアさんを傷つけないよう、十分に注意します。」
ジョシュアは大きく目を見開いた。
「オリィは、優しいんだな。エレリアと友達になれるといいんだが。」
ジョシュアの言葉に驚くのは私の方だった。
(馬小屋に送られた皇太子の婚約者に、妹の友達になって欲しいと頼むなんて。)
視線に気づいたのか、ジョシュアはぽりぽりと頭をかいて笑った。
「流石に、馴れ馴れしかったな。」
私は大きく首を振った。
「むしろ、、嬉しいです。」
そうして、私の馬小屋での生活が始まった。
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