【完結】婚約破棄を望む王子様にお飾りの正妃にして欲しいと頼んだはずですが、なぜか溺愛されています!

五月ふう

文字の大きさ
8 / 34

8.二度と帰ってくるな!

しおりを挟む


「お前がオリビアか。」

二人目の婚約者ランドルは40歳の太ったおじさんだった。

(なぜ父は歳上と婚約させたがるのだろう。)

ランドルはハリバート国の大商人で、一人目の妻に先立たれたらしい。おそらく父は、ランドルと血縁関係を結ぶことで金銭的に支援してもらおうとしたのだろう。

この婚約も上手く行かなかった。

「あの、、ランドル様、、晩御飯の間だけでもお香を止めてもらうことはできませんか?」

ランドルは大のお香マニアで、常に家の中にお香を炊いていた。それは個人の趣味であるし、構わないのだが、犬並みに鼻が効く私にとっては、地獄のような環境である。

「なぜだ?!こんなに良い匂いなのだから、すぐに慣れる!」

ランドルは私の頼みを一蹴した。ランドルの家に来て一週間も経つと、私の体は異常をきたしだした。

(頭がふらふらする。上手く前が見えない。)

そして、1ヶ月後、私はついに意識を失って倒れてしまった。

「病気の女を、私に押し付けるな!!」

ランドルはすぐに私を父のもとに追い返し、婚約破棄をすると決めた。元々若い女を嫁に欲しかっただけのランドルは、無気味な私を煙たがっていたのだ。

「オリビア、お前はなぜ役目を果たさない?!なぜいつも、私に迷惑ばかりかけるのだ?!」

「しょうがないじゃないですか!!私の鼻が敏感なのは、父上だって分かっているはずでしょう?!」

なぜ、医療団の人々のように個性を認めてくれないのか。つい、言い返すと父は激高して私を突き飛ばした。

「もう二度と帰ってくるな!!」

私は上着すら与えられず馬車から降ろされ、その場に置いていかれた。ランドルの屋敷からも、ジェームズ家からも遠い山道に私は一人取り残されたのだ。

「お父様!!」

そこからの日々は、地獄だった。食べるものも寝る場所もなく、私は物乞いをして必死に命を食いつなぎ、旅をした。

「オリビア!!何があったんだ?!」

医療団の皆に再会できたのは、父に捨てられてから半年が経った頃だった。げっそりとやせ細り、死にかけの私の姿は皆を大いに驚かせたのだった。

そして、その三年後、父は性懲りもなく私の元にやって来て言った。

「お前に新しい婚約者を見つけてきた。」

医療団の皆は必死で私を止めてくれたけど、私は皆に嘘をついた。父についていくことを決めたのだ。

「あの者たちに迷惑をかけたくないんだろう?」

ジェームズ家はハリバート国の名家であり、大きな力を持っている。父は権力を用いて医療団を潰すと脅してきたのだ。

(皆を守りたい。)

そして、私は"メイド殺し"の皇太子レオの婚約者として、この城にやってきた。

「きっと全部上手くいくわ。」

私は自分に言い聞かせる。いつかレオナにあって、強く生きたと胸を張って言いたい。

そのためには、こんなところでへこたれるわけにはいかないのだ。


   ◇◇◇


オリビアがハリバート城についた頃、大陸移動医療団のメンバーはいなくなったオリビアを探していた。

オリビアは早朝こっそりと抜け出したので、皆気づかなかったのだ。

「オリビアはどこに行ったんだ?!」

医療団のテントから血相を変えて飛び出して来たのは、ルイスという青年である。

ルイスは30歳の青年で、オリビアのことは昔から本当の妹のように可愛がってきた。

「どうやら、父親と共にハリバート城に行ってしまったらしい。儂らに迷惑をかけまいと思ったんだろう。」

医療団のリーダーはオリビアが残した手紙を読み、ためいきをついた。

「そんな?!あの恐ろしい皇太子と、オリビアが婚約するなんてありえない!!」

なぜ、オリビアは自分たちを信じてここに残ってくれなかったのか。

ルイスは荷物を背負い、ハリバート城に向かって走り出した。

「おいっ!ルイス!!」

「オリビアを連れ帰ってくる!」

オリビアはいつも他人の事ばかり大切にして、自分を守ろうとしない。ルイスはそんなオリビアが心配で仕方なかった。

(俺がオリビアを守ってやる。)

ルイスもまた、家族に虐げられ逃げ出してきた孤児であった。似た境遇であるオリビアのことを放ってはおけなかったのだ。

(待ってろ。オリビア。)

   ◇◇◇
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

白い結婚で結構ですわ。殿下より、私の自由のほうが大事ですので

鍛高譚
恋愛
「第二王子との婚約? でも殿下には平民の恋人がいるらしいんですけど? ――なら、私たち“白い結婚”で結構ですわ。お好きになさってくださいな、殿下」 自由気ままに読書とお茶を楽しむのがモットーの侯爵令嬢・ルージュ。 ある日、突然“第二王子リオネルとの政略結婚”を押しつけられてしまう。 ところが当の殿下は平民の恋人に夢中で、 「形式上の夫婦だから干渉しないでほしい」などと言い出す始末。 むしろ好都合とばかりに、ルージュは優雅な“独身気分”を満喫するはずが…… いつしか、リナという愛人と妙に仲良くなり、 彼女を巡る宮廷スキャンダルに巻き込まれ、 しまいには婚約が白紙になってしまって――!? けれどこれは、ルージュが本当の幸せを掴む始まりにすぎなかった。 自分を心から大切にしてくれる“新しい旦那様”候補が現れて、 さあ、思い切り自由に愛されましょう! ……そして、かの王子様の結末は“ざまぁ”なのか“自業自得”なのか? 自由気ままな侯爵令嬢が切り開く、 “白い結婚破談”からの痛快ざまぁ&本当の恋愛譚、はじまります。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました

ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。 ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。 王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。 そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。 「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

次に貴方は、こう言うのでしょう?~婚約破棄を告げられた令嬢は、全て想定済みだった~

キョウキョウ
恋愛
「おまえとの婚約は破棄だ。俺は、彼女と一緒に生きていく」  アンセルム王子から婚約破棄を告げられたが、公爵令嬢のミレイユは微笑んだ。  睨むような視線を向けてくる婚約相手、彼の腕の中で震える子爵令嬢のディアヌ。怒りと軽蔑の視線を向けてくる王子の取り巻き達。  婚約者の座を奪われ、冤罪をかけられようとしているミレイユ。だけど彼女は、全く慌てていなかった。  なぜなら、かつて愛していたアンセルム王子の考えを正しく理解して、こうなることを予測していたから。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

お前を愛することはないと言われたので、愛人を作りましょうか

碧井 汐桜香
恋愛
結婚初夜に“お前を愛することはない”と言われたシャーリー。 いや、おたくの子爵家の負債事業を買い取る契約に基づく結婚なのですが、と言うこともなく、結婚生活についての契約条項を詰めていく。 どんな契約よりも強いという誓約魔法を使って、全てを取り決めた5年後……。

幼馴染に夢中の夫を捨てた貴婦人は、王太子に熱愛される

Narian
恋愛
アイリスの夫ロイは、新婚の頃から金髪の愛らしい幼馴染・フローラに夢中で、妻には見向きもしなかった。 夫からは蔑ろにされ、夫の両親からは罵られ、フローラからは見下される日々。そしてアイリスは、ついに決意する。 「それほど幼馴染が大切なら、どうぞご自由に。私は出て行って差し上げます」 これは、虐げられた主人公が、過去を断ち切り幸せを掴む物語。 ※19話完結。 毎日夜9時ごろに投稿予定です。朝に投稿することも。お気に入り登録していただけたら嬉しいです♪

貴方が望むなら死んであげる。でも、後に何があっても、後悔しないで。

四季
恋愛
私は人の本心を読むことができる。 だから婚約者が私に「死んでほしい」と思っていることも知っている。

処理中です...