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20.本気で好きになったんだろ?
しおりを挟む「レオ!」
国王の部屋を出る途中の道で、ジョシュアがレオの肩を掴んだ。
「どうなっているんだ?!」
ジョシュアの顔は真っ青である。昨晩、レオはだれにも伝えずに、オリビアを馬小屋から連れ去ったのだ。
「ここで話しては、フローレンスに伝わる。馬小屋に行くぞ。」
◇◇◇
「オリビアはどうなったんだ!?なぁ、レオ!!」
馬小屋に行くと、アダムズとエレリアがレオを待ち構えていた。
「おい!レオ兄!オリビアは生きてるよな?殺されてなんかいないよな?!」
エレリアがレオの胸ぐらを揺さぶった。
「ああ。生きている。だが、少し声を落としてくれ。お前たち以外に知られるわけにはいかないんだ。」
「生きてるなら、いい。」
エレリアは手を離し、レオを睨みつけた。
「傷つけてないだろうな?」
「ああ。怪我は負ってないはずだ。」
レオの言葉にエレリアは大きく息を吐き、よかった、と呟いた。
「ずいぶん、仲良くなったんだな。」
エレリアは貴族嫌いで、ジョシュアにはオリビアが傷つかないようフォローを頼んでいた。だが、その心配はいらなかったようだ。
「そりゃあ、最初は気に食わなかったさ。だが、レオ兄が本気で好きになった人なんだろ?」
エレリアが当たり前のように言う。
「は?!なぜそう思う?!」
レオは驚きのあまり、大声を出した。
「父さんもジョシュアも、そう言っていたぞ。」
レオはアダムズとジョシュアを振り返り睨みつけた。
(嘘を言いやがって!)
罵倒したいところであるが、エレリアの前では難しい。妹のように可愛がっているエレリアの前では、兄としての威厳を保ちたい。
「よく聞け。エレリア。俺はオリビアに対してそういう感情は抱いていない。ただの婚約者だ。」
エレリアは顔を顰めた。
「ほんとか?」
「ああ。間違いなく、あいつらが嘘をついている。」
アダムズがレオの言葉を聞いて、大口を開けて笑っている。
(能天気な爺め。)
「そんなことより、お前らに大事な話があるんだ。」
「オリビアが妊娠したとか?」
軽口を叩くジョシュアをレオは睨みつける。
「馬鹿言うな。これは、オリビアに関係なく、前から言おうと思っていたんだ。」
レオは大きく息を吸った。
「この城を逃げてくれ。アダムズ。ジョシュア。エレリア。」
本当はもっと前に三人を逃がすべきだったが、唯一の居場所を失いたくなかった。馬小屋に戻るたびに、レオは心を回復することができていた。
(だが、もう限界だ。)
「もうすぐ父が死ぬ。そうなれば"メイド殺し"の俺は、すぐにでもフローレンスによって処刑されてしまうだろう。」
これまでは、父カルクがレオの命だけは必死で守ってくれていた。だが、唯一の後ろ盾が無くなったあと、レオにはフローレンスへの対抗手段がないのだ。
レオは言葉を続けた。
「そうなれば、この馬小屋を守っていけるか分からないんだ。そうなる前に、この城から逃げ出してくれ。逃亡先での資金は持たせる。だから、、」
「儂は逃げん。」
アダムズは腕を組んで言った。
「アダムズ、頼むよ。」
「儂は絶対に、この馬小屋を離れん。」
アダムズはそう繰り返した。
(どいつもこいつも、、、なんでそうも頑固なんだ?)
「フローレンスが支配するハリバート城にいたら、どんな目に遭うかわからない。なぁ、アダムズ。逃げて、幸せに暮らしてくれよ。」
アダムズは首を振って、レオに尋ねる。
「じゃあレオも逃げるのか?」
「俺は、、この国の皇太子だ。逃げれるわけ無いだろ。」
(俺が逃げたら、また争いは続いてしまう。俺がフローレンスによって、命を落とすことで、争いは納まるはずなんだ。)
「レオが逃げないと言うに、儂が城を離れるわけにはいかんじゃろう。」
アダムズはにっこりと笑った。
「なんでだよ、、、?」
レオは頭を抱えてしゃがみこんだ。
「お前を守りたいからに決まっとるだろ。レオがこの城を誰よりも早く逃げ出すための馬を用意するために、儂は馬を世話しておるのだから。」
レオはジョシュアを見上げた。
「この頑固爺をなんとか説得してくれ。ジョシュア。」
「残念だが、俺もレオの側を離れる気はないぞ?」
ジョシュアはレオの肩を叩いた。
「馬鹿が、、、。」
「俺はレオの騎士だ。そうだろ?最後までレオを守るさ。」
レオは大きくため息をつく。
「エレリア。とにかくお前だけでも、逃げる準備をしてくれ。」
エレリアは肩を竦めた。
「嫌だね。」
「おい、、、。」
「なんにも悪いことしてないのに、なんで逃げなきゃなんないんだよ。全部フローレンスとか言う女が悪いんだろ?」
エレリアはレオの胸を叩いた。
「絶対、ここを離れないからな。説得したって無駄だぞ。」
◇◇◇
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